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魔王の日常  作者: 茨城
9/10

9話目

クルスとルークが扉の前まで歩いて行くとシアが身体強化の魔法をかけ、準備万端で待っていた。どうやらシアだけがクルスと一緒に扉を開けるらしい。



「さて、クリスちゃん私と一緒にこの扉を開けましょう?」


「うん!」


クルスはやけに自信満々だなと思いながら扉に両手を添えた。同じようにして扉を開ける準備をしたシアを見て、クルスはシアがかけている身体強化が普通の人間が作るものとは少し複雑になっている事に気付く。


A級のグレイトウルフに迷いなく突っ込んでいったから腕に自信があるんだろうとクルスは心の中で納得する。


「「3、2、1」」


シアとクルスが力一杯分厚そうな扉を押すと、少し扉についている紋章が紫色に光って



ぎぃぃぃぃぃぃぃぃっっっ



っと、耳が痛くなるほどの音が鳴り響く中、扉があっけないほど簡単に開き扉の向こうにたくさんの人間が歓声をあげているのをクルスは見た。


その中、シアが 「……いつもより簡単に開いたわね?」 と呟いていたのクルスとニコル以外は知らない。



▫️◼️▫️



その後クルスはとてもはしゃいでいる子供のように演技をしたが心の中では扉が簡単に開きすぎてつまらなかったの〜なんて思っていたぐらいだ。


そのままシア達が歩き出すと、さっきからつづいている歓声がもっと大きくなったがシア達はおかまいなしに歩いて行く。


今は数分人混みの中を歩き、随分と立派な建物の前に立っている。クルスがジロジロと目の前の建物を見ていると フィリンがこれは《ギルド》だと教えてくれた。


ギルドの中を見るとそこにはテーブルに座って酒を飲んでいる冒険者らしき人間が沢山いて奥の方のカウンターに数人受付らしき獣人と呼ばれる種族の奴らが立っている。彼女達の右側にでっかい板が壁に貼ってありそこには何十枚も紙が貼ってあった。


人間達はシア達がギルドに入ると今まで騒いでいたのを忘れたようにしんと静まり返ってこちらを見つめてきた。5人はその視線に慣れていないようで少しそわそわしていたが反対にクルスとニコルは別に気にししていなく、なんで静かになったんだとしか思っていなかった。


ケイトがカウンターまで歩いて行って受付に何か喋るとクルスの城にある会議室に似た部屋に案内された。



「…勇者…だったんですね」


ニコルが小さく呟いた。


--そう、クルスも気付いていたがあの歓声の中に


「勇者様のお帰りだぞー!」


「かっけー!あれ?魔術師のルーク様じゃねーか!?」


とか


「シア様!結婚して下さい!」


などと意味の分からない事を叫んでいた人間がいたのだ。


人間の叫んでいた事が正しければあの5人は勇者という事になる、となると一番の問題はクルスが魔王である事がばれたら危険な状況になってしまうということだ。

クルスは姿を変えているし、もともとあまり人間の前に姿を現さないのであまり心配しなくて良いが ニコルはそのままの姿、もしも鑑定とか前に目撃されているとかりしたらニコルはすぐに魔族だとバレるだろう。


なのでニコルは警戒心マックス、一方クルスは勇者に会えたことに喜んでいた。


会議室?には丸くてでかいテーブルがあり どの椅子も結構豪華だった。丸いテーブルを囲むようにして周りには椅子が何十個も置いてある。


それぞれが丸いテーブルの席に着くと最初にフィリンが話し始めた。



「びっくりした?……あの、ニコル君顔……怖いよ?」



「なんでもないです」



ニコルがいつもより声を低くしてフィリンに答える。



「ニコルお兄ちゃんは勇者様が嫌いなんだよ」



クルスが小さく呟くとさっきからずっとクルスを睨んでいたアルトはもっと目を細くする。

普段無表情なニコルも珍しく顔をしかめた。


この場にいる全員が黙りここってニコルとクルスが何か喋るのを待った。


こうでも言っておかないと、もしフィリンが人間嫌いのニコルを質問攻めなんてしたらブチ切れてフィリンに死の呪いとかかけるかもしれない……それは絶対にダメだ、せっかく勇者に会えたならちょっと戦ってから城に帰る。だがこの状況をどうするか、とっさにフィリンを黙らせる方法を考えたらあれになったがなんて言おう?



( クルス様。何余計なことを言ってるんですか)


頭をフル回転させて考えていたら頭の中でニコルの声が響いた。


(ニコル、勇者を嫌っているように演じろ。あっ、でもニコル勇者大嫌いなんだっけな。

お前の部下がそ--)


(うるさいです)


クルスは顔を上げてシアを見た。


「あの勇者を嫌っているって、どうして?あと気付いていると思うけど私達は勇者よ。魔王クルス=ディルメキアを倒すために修行中なの」


もしあの歓声がなかったら驚いて隠してる魔力がばれちゃうところだったな。

というか妾はあんまり人間に危害を加えていないのに悪者扱いされるなんて酷いぞ、まぁ時々人間の国ぶっ飛ばしたり、新しい技の開発の為に人間を誘拐することもあるんじゃが



「ニコルお兄ちゃんは昔 勇者様に憧れてたんだけど、今は嫌いなんだったって」


これもまた真実だ。昔はよく「魔王様!」って可愛く言ってたんだがな、最近扱いがひどいのじゃ…。クルスは164歳でニコルが159歳だから一応年下だけど仕事サボってると突然S級の闇魔法をかけてきたりする。



「そうですよ、僕はあなたたちが嫌いです。クルーークリスが勇者様と行動しているから一緒にいますが本当は会話をするのも吐き気がしますね」


明らかに態度が違うニコルに勇者を達が驚いていると会議室のドアがノックされて受付の獣人が入ってきた。



「失礼します。お嬢さんの知り合いの方が会いたいとこちらにいらっしゃっています」


「クリスちゃん、お家の人じゃない?」


「うん。多分」


「ではお連れしますね」


受付の女性が出て行って少し経った後 白髪頭のいかにも執事といった格好の老人がノックをして入ってくる。

. . .

「クリス様、ニコル様、お迎えにあがりました」


白髪頭の老人がバロスだということはすぐに分かった。クルスとニコルは無言でバロスに歩いて行き振り返ってシア達にお辞儀した。


「シアさん、フィリンお姉ちゃん、ルークさん、ケイトさん そしてアルトさん、さようなら」


「またどっかで会おうな!」


ケイトの大きな声を聞いてからクルスは会議室を去った。


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