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その声は今にも泣きそうでとても悲しげな、誰かにすがるような声になっていった。
「なにを助けてもらいたいんだ。」
そしてそんな声は僕が一番嫌いな声だった。
誰かに泣いてすがるぐらいなら自分でなんとかすれば良いのだ。
そして自分でなにをしても上手くいかなかった場合は大人しく諦めればいい。
「こんなことをしている私が嫌いなのは理解しています。
ですが私は助けたいのです、あの町の者達を。それに町を救ったとなれば無償で料理を食べさせて貰えることでしょう。」
「お前は誰だ。」
僕を理解しているという言葉に僕は若干背中を震わせながら叫んだ。
「私はあなたが持っている杖です。」
「杖が喋るはずあるか。」
「よく触れて。」
杖は震えていた。そして確かによく聞けば杖から声がしている。
「あの村の者達を助けてくれるというのならば、私はいつでも力を貸しましょう。
そうすればあなたは何者にも逃げることの無い力を手に入れることができますよ。」
「うわー、すごーい。」
なんてことを言ってくれるんだ。間抜けな棒読みをしてしまったじゃないか。
そんなの答えはもう決まっている。僕のことを理解しているんだろ。
「クッククククク。」
そんなんでよくもまぁ、僕のことを理解しているなんて大口を叩けたものだ。
「アハハハハハハハ、ヒーー、笑いすぎてお腹が痛いよ。」
「笑わないで下さい。力を手に入れたくはないのですか。」
「いらない。だって町の人間を助けたら注目を浴びちゃうじゃん。」
「町の人たちを助けてください。そうしなければ夜中大声でわめきます。」
「脅しか。」
声色的に優しそうな奴を想像していたのに、まさかの脅迫かよ。
「脅しです。しかし町を助けてくれた場合は料理を一週間つくってあげますから。」
「それは素晴らしい案だな。よし、やってやる。」
正直、静かなのは良いがご飯が不味くて仕方がなかったのだ。なんてラッキーなんだよ僕は。
「力は貸してくれるんだろ。」
「はい。出来ればすぐに急いでください。あと五分もありません。」
おぉ、話し合いに夢中になってしまっていたんだな。
「やっぱりお前は、僕のこと理解しているんだね。嬉しいよ僕は。ついでに一番始めにはふあふあオムレツを作ってね。」
「ふあふあオムレツですか。わかりました。でしたら契約として私に名を授けてください。」
「わかったよ。葵で良いね。」
「名前を考えるのが少し早くないですか。もう少し捻ってくれても。」
「お前を見ていたら、思いついたんだ。」
あと、変に考えて変な名前をつけたら嫌だしな。これでも僕はちゃんとお前のことを考えているんだぞ。
少しだけだがな。
「葵って呼んでください。」
「悪かったな。ついでに俺の名前は赤木だ。」
「それは苗字ですよね。名前を教えてください。」
「嫌だよ。」
名前なんてこんな奴に明かせるかよ。
それにそろそろ時間だろ。
「さて、やるだけやるか。」
「帰ってきたら、絶対に名前を教えてくださいね。」
肩を叩かれている。なんだ、ここは僕のベットじゃないか。確かここのベットはあいつに譲ったはずだ。
「いきなり倒れて驚いたぞ。」
嫌な感じだ。なんなんだよさっきのは。夢と言って割り切ってしまうにはあまりに現実味があった。
「僕は寝言でなにか言ってなかったか。」
「ものすごい勢いで笑ってたな。」
「インコ町に行ってくる。」
今は何時なんだ。早く行かないと全て終わったあとでは話しにならない。
とにかく早く行くことだけが今は大事だ。
玄関の外に出て鍵穴に急いで銀色の鍵を入れ回す。
「インコ町。」
ここまで読んでいただきありがとうございました。