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貴族か。そうかこいつ貴族って言ったのか。
「その歳で中二病にかかってしまったんですね。可哀想ですから今すぐ治してあげます。」
そうして僕は勢いよく本で頭をひっぱたいた。
「何をするんだ。たった今、俺は貴族だと言ったよな。」
「嘘だ。お前が貴族なんて偉い存在に見えるか。むしろどこからみたら貴族なんて偉い存在に見えるんだ。」
あ、雰囲気が変わった。なんか、一つ一つの動作に気品みたいなものがある気がする。
もしかして、本当に貴族だったのか。
「なにおーーー、貴族の中で清山家といえば名門中の名門だろうが。」
「それじゃあ、お前を貴族と証明するものは。」
「このブローチだ。」
へーーー、そうなんですか。本当だ。こいつは本当に貴族だ。普通の人間は金で作られたブローチなんて持っているはずがないからな。
「すまないが、僕は田舎者でね、そのブローチが本当に貴族の物なのか僕にはわからない。」
が、謝る気はさらさら無い。なぜなら僕はストレスを抱えたくはないからだ。
理由など聞かなくたってわかるだろう。
僕は自由に生きたい。空を自由に飛ぶ鳥のごとく何にも縛られず何にも従わずただひたすら自由に生きたい。
長年の夢は前居た世界では叶うことがなかった。ならばこの世では。
そう思っていた矢先の侵入者だ。
「ここでは僕がルールだ。そして僕のルールはただ一つ。自分のことは自分でやれだ。」
ついつい冷たい言葉で言ってしまった。はぁー、どうしょっかな。難癖をつけられて、捕らえられて、牢獄に入れられるのは嫌だな。
「お前は変な奴だな。」
「変な奴はお前だろう。いきなり貴族だって言いやがって。」
「いや、お前の方が断然変なやつだろ。平民の癖に貴族に対等な口をきいてるし。普通はあり得ないからな。」
「知るか。」
突き放してさっさと寝る準備をするために寝室に行こうとすると、今度はチワワのように目をうるうるさせて足にすがりついてきた。
さっきまでの貴族っぽい気品はどこに行ったんだよ。
「さっさと離れろ。」
「嫌だ。お前のルールはわかったが、俺は料理が作れない。作れるのなら作ってはくれないか。 」
ほぅ、まだ言うのか。なんか、もうこいつのこと説得させるのも疲れてきた。
仕方がない。いつも通り僕が諦めるか。
「わかった。だが味に自信はないからそこのところ理解してくれよ。」
「多少不味くても食ってやる。」
「なら、まずは材料を取ってきてもらおうか。」
「き、き、貴族に畑仕事をさせようと言うのか。」
「だって働かない者食うべからずだから。とっとと、取ってこないとご飯は絶対に作ってやらねぇからな。
ひもじい思いをしたくなかったらすぐに取ってこい。」
働かない者食うべからず、なんて良い響きなんだろうか。
「俺の妹になにか変なことをしたら、ボコボコにしてやるからな。」
キッと睨らんでから走り出していった。しかしおかしな走り方だ。右足をかばうようにして走ってらぁ。
...............、忘れてた。
「戻ってこーい。」
すると若干顔を青くしたあいつがフラフラしながら戻ってきた。
「なんだよ。今取りに行こうとしたところだろ。」
「俺がやっぱり取りに行く。おまえは特別に俺のベットを貸してやる。さっさと寝てろ。」
さすがの俺も怪我人に対して野菜を取って来いなんてこというほど鬼畜じゃないよ。
ただ、忘れてただけだからね。そこのところは忘れるなよ。
ここまで読んで下さりありがとうございました。
次話も微力ですが頑張ります。