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ブックマークありがとうございます。
「あなたに神の何がわかるのですか。」
本当にこの使者は神のことが好きなんだな。感心、感心。
「すまなかったな。神に助けてもらったのにこんなことを言うのは流石に無礼だったな。」
必殺、女子にうっかり強く言ってしまったときの謝り作戦。
「そうです。神は偉大です。分かっていただけたのならそれで私は充分です。
もう二度と会う事など無いと思いますが頑張ってこの世では生きてください。」
スポンと泡のようにあっさりと使者は消えた。
「あ、名前聞いてなかったな。」
まぁ、いいや。名前を聞けば情が移り別れる時に悲しくなってしまう。
まずは忘れない内に水を畑にやらないとな。
「今日の晩御飯は何にしようかな。」
料理か。............仕方がない。サラダとか作って食べるか。
畑に水をやると畑が生き生きとした緑の畑になった。
「おぉ。」
あまりに劇的な変化に言葉も出ずに見守っていた。美しい。緑の畑はやがて鬼灯の実がなった。
鬼灯の中はうっすらと青や赤に光っている。
「この世界に来て本当に良かった。」
しかも美味しそうなのだ。鬼灯の皮を破って中を早く食べたい。俺はふらふらと誘われるようにして鬼灯を手に取り皮を破って中を食べた。
中の形は丸く、食感はまるで...............なにも味付けしていない餅を食べている気分だ。正直全く美味しくない。
しかもいくら噛んでも味がしないのだ。なのにお腹にたまる。
不思議な気分だ。
それから4日間は鬼灯の実を食べ、ついでに鬼灯を使った薬が載った本があったので気まぐれに薬を作り、万が一のために保管をした。
そして5日後。
「助けてくれください。魔物に追われているんです。中に入れてくれてください。。」
「うるさい。」
窓を開けると深手の人間が二人ほど玄関に立っていた。目線を先に向けると、庭の外で大きな狼が沢山の群れでこちらを睨んでいた。
「あの狼に何かしたのか。」
「お願いします。妹を助けてください。」
こんな小さな子供に何を頼んでいるのか。しかしお兄さんの真剣な姿がとても気に入ったので玄関の扉を開けた。
「今回だけ特別だ。中に入れ。」
「ありがとう。助かります。」
確か傷口の血を止めるための薬はここにあったはず。それと井戸から水を取っておこう。
井戸から水を汲み幼い女の子を寝かせたところまで行き、水で消毒をしてから傷薬を塗り包帯を巻いた。
「ほら、これ。あなたも塗りな。」
「すまないな。」
まんべんなく体に薬を塗りつけ空になった薬瓶をこちらによこしてきた。
「しかしどうしてあんなに沢山の狼に狙われていたんだ。」
「実は俺たちは逃げてきたんですが、うっかり魔物の領域に入ってしまってこんなことになってしまいました。」
ふーん、そろそろお腹が減ってきたな。
さっき水を汲むときに取ってきた鬼灯の実を腹ごしらえに一個食べておけばよかった。
「あ、あなたはもしかして、あの悪食で有名なイート族なのか。」
「知らん。そんなことはどうでもいいが、妹の怪我が治ったらすぐに出ていけ。」
いつかれて情が移るのは真っ平ごめんだ。
まぁ、悪食と言うのもなんか悪意があったように感じるし今度からは誰かの前で鬼灯の実を食べないようにしよう。
「妹に変なことはしてないよな。」
「してないしやる気もない。」
バッサリ言うとさっきまで青かった顔をとたんに真っ赤にして怒りだした。
「そこまでバッサリ言うことはないだろう。むしろあのキレイな寝顔に、さりげなくさわってずっと眺めていたいだろう。」
なに言ってんだこいつは。もしかして妹のことが女の子として好きなのか。ま、まさかな。ハッハハハ。
「妹の怪我も直ってないし外では魔物がうろついているから今日は泊まる。」
こ、これが生きてきた経験値の違いってやつなのか。今、こいつあっさり泊まるって言いやがったぞ。ありえねぇ。
「何を驚いたような顔をしているんだ。妹がこの怪我なんだから当たり前だろう。
それに妹の怪我が治ったらすぐにでもこんな小さい家出てってやるから安心しろ。」
「そうか、ならご飯は自分で作れよ。」
「な、なんだと、」
「んっ。」
驚いたように口をポカンと開けてからすごい勢いで俺に詰め寄ってきた。な、なんだよ。おかしいこと言ったか俺。
「いくら子供だって、貴族に対してご飯を作れとはなんたる口のききかた。」
「は?」
ここまで読んでいただきありがとうございました。