第1話:現在
これはストーリには一部私自身が体験した話が加わっています。
キレイなヴァイオリンの音色。
新鮮なお花の香り。
透明感溢れる教会。
そして…真っ白なドレス。
私はある教会の一室で、鏡の中の自分をジッと見つめた。白いフワフワしたレースが私を優しく包んでいる。頭の上にはキラキラ輝くティアラがある。
そう…私は今日…結婚する。
今頃だけど…はっきり言って今だに自分でも信じられない。自分でも緊張してるってわかるくらいに私の手は震えている。
なんでだろう、昨日の夜までは全然平気だったし、この日が来るのを待ちに待ってたはずなのに…
そんな事を考えていると急にドアが勢い良く開いた。せっかくヘアスタイリストさんにセットしてもらった髪型を崩さないようにゆっくりとドアの方を見ると白いタキシードを着た男が一人立っていた。
「スズカ…キレイ…」
そして私に近づき、ギューッと抱きついて来た。そう、この人が私の今日結婚する人、松葉トモヒロ。
「照れるよぉ…トモもすっごいカッコイイよ?」
私が自分でも分かるくらいに顔を真っ赤にしてそう言うともっとキツク抱きしめられた。するとまたドアが開いた、今度はゆっくり。そして黒いスーツをピッシっと着て、ちょっと縁が太めのメガネを着けた一人の男、江川正人が入って来た。
「いいなぁ〜お前ら仲良しそうで。結婚前に抱きあっちゃたりしてさー」
私達はそれを聞いて急いでお互いを離した。
「まぁいいや、それより俺スズカに用があるんだよ。だからトモヒロは出て行ってくれる?って言うかスズカのお父さんが呼んでたゼ?」
「マジで!?どうしよう!もしお父さんにいきなり、家の娘はお前にはやらん!、とか言われたら〜!!!」
いつもの用にふざけているトモヒロを見て思わず笑ってしまった。
「ふふっ…もう、ふざけてないで早く行ったら?お父さん怒っちゃうんじゃない?」
私がそう言うとトモヒロは、わかった〜、と言って部屋を出て行った。そして私は正人と部屋に二人っきりになった。
「で?正人、用事って何なの?」
すると正人はさっきからずっと持っていた茶色い紙袋を私に渡した。
「え?何これ?」
「なんかお前の母さんから預かったんだけど…正直俺も何かわからないんだよねぇ〜って言うか俺急いでるんだった!!!じゃあな!」
正人はそれだけ言い残して勢い良く部屋から出て行った。そして私は一人部屋に取り残されてしまった。しょうがないので私は正人が残して行った紙袋の中を覗いてみた。そこには小さな懐かしい字で書かれたメモが残されていた。
スズカへ
結婚おめでとう。
これはあなたがトモヒロ君の家に引っ越す時に家に忘れて行った物です。全てベットに下にあった物なので多分相当古い物か、あなたが大切に隠し持っていた物だと思います。
お母さんより
「ベットの下…」
私は必死になって考えてみた。私ベットに下に何か隠してたっけ?いくら考えても分からないので、私は茶色い紙袋の中身を隣にあったパイプイスにバラ撒いた。イスに上を見てみるとそこには沢山の懐かしい品々があった。
もう錆びてしまった小さなリング。これは私がアメリカに引っ越して初めて出来た友達にもらった物。あの頃は毎日中指にこのリングを着けていたのに…今じゃ小指にやっと入るぐらいだった。
下手くそなクマのヌイグルミ。私が始めて作ったヌイグルミ。お婆ちゃんと必死になって作った。あの頃はとっても上手に出来たと思っていたのに…。そして寝る時は必ずこのヌイグルミと一緒だった。
他にも色々懐かしい物が沢山あった。けれど私がそれ全部を見る前に、一つの古ぼけたちょっと太めのノートを見つけた。そしてそのカバーには大きく『スズカ』と書いてあった。そのノートには全く見覚えが無いのに何故かそのノートを見ると懐かしい気持ちになった。
そして私はそのノートをソッと開いた。




