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中身より缶。そして居座り続ける去年の神様

作者: 花守ぽん
掲載日:2026/03/05

すごい久しぶりに行ったデパ地下―――。

美味しいものを探しに来たはずなのに、

私の視線はショーケースの隅っこにある

「缶」とガッチリ目が合ってしまった。


アンティーク調の深い青に、

繊細な金の刺繍のようなエンボス加工。

中身のクッキーなんて、もはや二の次。

私はこの「箱」そのものが欲しくなった。


手に取った瞬間、私の脳内会議では

「中身をどうするか」ではなく

「食べた後、何を入れるか」という議題が

秒速で可決された。


「これには、とびきり大切なものを入れよう」

私はこの瞬間、中身の糖分ではなく

「入れ物」という名の夢を買ったのである。


それから数ヶ月。

私の部屋の特等席には、あの時の一目惚れの

君が鎮座している。

しかし、現実は非情である。

蓋を開けてみれば、そこには神聖なオーラを

放つ宝物……ではなく、

今年返し忘れた「御守り」が、バチ当たりな

ほど居心地良さそうに居座り続けている。


本来ならとっくに神社にお返しして、

焚き上げられているはずの存在だ。

それをあろうことか、デパ地下出身の洒落た

缶の中に、角の丸まったミニタオルハンカチと

一緒に押し込めている。


スカスカである。そして、カオスである。

ミニタオルは「私、神様と相部屋でいいん

ですか?」とゴワついた肌触りで震え、

御守りは御守りで「早く神社に連れてけよ」

と無言の圧をかけてくる。


本当はわかっているのだ。

私には、この美しい缶に見合うほどの

「丁寧な暮らし」なんて、そうそう持ち合

わせていないということを。


でも、いいじゃないか。ふとした瞬間に

蓋を開け、居座り続ける神様と目が合い、

「ああ、近いうち行かなきゃ(たぶん行かない)」

と反省する。

その数秒間のスリルとテキトーさこそが、

今の私の生活のリアルなのだから。



今度またデパ地下で運命の缶を見つけたら、

私はきっと迷わずレジへ運ぶだろう。

その時は、期限切れのポイントカードを

さらなる相部屋候補として放り込んで、

自分のズボラさを「秘密のコレクション」

として正当化してやるつもりだ。


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