第六話 狂気
数年前…
護は女性恐怖症に目覚めると同時、強い悔しさにも目覚めていた それがきっかけであらゆる格闘技を習い始めることに しかしこれがのちに伝説を作ることになる
初めはボクシングを習うことになるが一日でコツをつかみそのままコーチの意見によりスパーリングをすることなる スパーリング相手はインターハイを制した猛者 周りの人は本気で焦っておりコーチと口論
「コーチ、ほんとに大丈夫なんですか?!死んじゃうかもですよ!」
コーチは口角を上げる
「黙って見てろ、俺の目に狂いはない」
ピピーッと音が鳴りスパーリングが始まる
インターハイを制した猛者が様子見で軽くジャブを出す
「すげぇ動き良かったけど、どういう戦い方するかな?まずはジャブで…」
見えない打撃が猛者を襲う
「はっ…?」
護は猛者がジャブを打った瞬間とんでもないスピードでアッパーを打ち見事に直撃 猛者は失神する
周りの人達が大声をあげる
「ええええええ?!」
「な、なにが起こったんだよ…?」
「み、見えなかった」
コーチが笑い始める
「ははっ!やっぱり俺の目に狂いはなかった!どうだ、君なら世界を目指せ…」
「結構です、あと今日限りで退会させていただきます」
「うっそーん?!」
こうしてボクシングジムを去り次はキックボクシングジムへしかしここでも伝説を残してしまう
コーチが護に蹴り方を指導している
「じゃあ、さっき言った通りにサンドバッグ打ってみようか」
「はい!」
護は右足でサンドバッグを軽く蹴る 蹴った瞬間すごい音ともにサンドバッグが破壊され中に入っていた砂が地面を覆う 周りの人達が大声を荒らげる
「うそだろ?!」
「おいおい、サンドバッグだぞ…?」
その後、サンドバッグの砂の掃除が終わりスパーリングへ 相手は怪我の配慮もありプロが相手をすることに
「たまたまサンドバッグがボロくなってただけだろ…」
ゴングが鳴りスパーリングが始まる 相手は軽くローキックを打とうと右足を出す
「素人だからローで…」
だがローキックを蹴ると同時護はミドルキックを放とうとする
「ミドル…!しかも速い、これはガードを…」
相手が両腕で護のミドルキックを防御しようとするが相手は恐怖を覚える
「な、なんだ?!この圧は!これ…死ぬ…?」
護のミドルキックが相手に当たる直前相手が声を上げる
「ま、待て!」
護の右足が寸前で止まる
「お、俺の負けだ!」
周りの人達がざわつき始める
「ど、どうしたんだ?」
「さ、さぁ?」
「にしても一瞬空間が歪んだような気がしたんだけど…」
コーチがリングに上がり護を見つめる
「ざ、残念だが…俺はもうこれ以上君に教えれることはない…」
「そ、そうですか…」
そして護はキックボクシングジムを去り次々と他の格闘技を習うのだが全て一日でマスターし退会し続けるのであった… 今まで護が習ってきたのはボクシング、キックボクシング、ムエタイ、極真空手、テコンドー、カポエイラ、ジークンドー、総合格闘技、レスリング、柔道、ブラジリアン柔術、合気道、躰道、剣道、少林寺拳法、空道、なぎなた、銃剣道などなど数え切れない ついたあだ名は天賦の神鬼
そんな最強な男だとも知らずにガタイの良い男性は拳を大振りに振り上げる
「なにかっこつけてんだよ!この野郎!!」
だが護はボクシングのステップで一気に距離を詰めガタイの良い男性の腹にコツンと人差し指を置く
「てめぇ!なめてんじゃねぇよ!」
「な、なめてないよ…これかなり痛いよ…?」
人差し指が拳に変わりジークンドーのワンインチパンチが放たれる ガタイの良い男性は吹き飛び後ろに立っているいじめていた女性も体が直撃し二人とも壁にめり込む
「や、やりすぎちゃった…まぁいっか…」
いじめられていた女性は一瞬の出来事すぎてなにが起こったのか理解が追いついていない
「へ…へぇ…?」
護は下を向きながら女性に話しかける
「あの…大丈夫ですか…?」
女性はきょとんしているがそっと口を開く
「は、はい 大丈夫です…」
「それはよかった… それでは僕はこれで!」
護は振り返り走って帰る
「あ、あの…ってもう聞こえてないか…」
「あの人…よく見たら私と同じ学校の制服だったなぁ…」
女性は頬を赤らめる
「名前なんなんだろう…かっこよかったなぁ…」
のちにこの女性、最中 萌甘 は地獄の追走者として護から恐れられることになる
翌日…
「昨日のニュース見たか?」
「あぁ!あれは交通事故並だろ!」
「でもひき逃げではないらしいぜ」
護がワンインチパンチを打ち込んだ男性は全身骨折、巻き込まれた女性は全身複雑骨折で即入院することになりニュースでは未解決事件として取り上げれている
「怖いよなぁ〜、今のところ手がかりが一切なくて難航してるみたい」
「まぁ人間の仕業じゃないだろうな!」
「ははっ!そりゃそうだろ!熊にでも襲われたんじゃね?」
護が机にうつ伏せになって落ち込んでいる
「やっぱやりすぎた…僕はなんて馬鹿なことを…」
明が苦笑いで護を慰めようとする
「まぁまぁ…わざとじゃないんだしなんなら助けたんだから大丈夫だって…」
「で、でも…」
明が護の頭にポンと手を置く
「正しいことをしただけだよ、護は」
「だからもう忘れろ なんなら誇りに持てよ」
「あ、あきら…!」
護が明に泣きつく
「大丈夫だから心配すんなって」
明が護の背中を優しく撫でる 明は暴走しておらずむしろ冷静になっている
「ホントは犯罪になりえるけど…まもくんのお父さんもお母さんも国を動かせるほどの力を持ってるから犯罪にならないんだよね…」
「一番逆らってはいけない人に逆らちゃったから相手の人の方が心配なんだけど…」
昼休憩となり明と護は弁当を食べている
「な、なんかさ…視線を感じるんだけど…」
「そうか〜?」
明が廊下の方に視線を向ける
「誰もいないけど?」
教室の中からでは見えない死角に二人が話している
「まおっちも来てたんだね!やっぱ好きだから〜?」
上那の頬が少し赤くなる
「わ、私はただ勉強を教えてもらいに来ただけだよ!」
「ふーん?」
「そ、そういうあげはさんこそ何しに来たの…?」
蘭崎は胸を張って誇らしい表情になる
「うちはまもるっちの頭を撫でるためにきたの!」
上那が困った表情をみせる
「なんなのそれ…?なんで頭撫でるの…?」
「まぁとにかく!」
「あ、また逸らした」
「まもるっちに話しかけるタイミングを見計ろ!」
「まぁ、たしかに…今は昼食中で失礼だと思うし」
二人が教室の前に立っている一人の女子を見つめる
「そうえばあの子なにしてんだろ?」
「うん…?メモ帳…?」
一人の女子が教室の前でメモを書いている
「なるほど…フムフム…この時間に…ほうほう…」
蘭崎が上那の方を向く
「まっ!気にしないでおこ!」
「そうだね…?」
10分後
「そろそろ食べ終わったかな?まもるっち」
「たぶん、食べ終わったとおもう」
「見てみようか、てかまだあの子いるね?」
一人の女子は10分経ってもまだその場で立っておりメモを書いている 護はメモを書いている女子に恐怖を感じる
「さっきからあの人ずっと何してるんだろう…?こっち見てないよね…気のせいだよね…」
護はメモを書いている女子が下を向いている隙を狙ってその女子を凝視する
「な、なんかどっかで見たことあるような…」
不意にメモを書いている女子が正面を向く 護は一瞬目が合ってしまうが即座に視線を逸らす
「どうしよう…目が合っちゃった でもわかったぞ 昨日助けた人だ!」
「いやなんでいるの?!しかも死角から二人隠れてるなぁ…」
蘭崎と上那が教室の前に立ち護を呼ぶ
「まもるっち〜!」
「有田先輩…」
護は泣きそうな顔で明を見つめようとするが明の表情にまたもや般若が宿る
「ほら、やっぱり…あ、あきらぁ…ヒィ〜!」
「あの…メスガキども…また来やがったぁ…!」
「あ、あきら…?」
明はふと我に返る
「はっ!安心しろってついていってあげるから」
護は明を盾にするように教室から出る
「な、なにかな…?」
蘭崎と上那が護を見つめる
「私は勉強を教えてもらいに」
「うちはまもるっちの頭を撫でに〜!」
蘭崎の言葉に明が暴走する
「はぁ?上那はまだ分かるけどこのメスガキは何を言ってるんだ??まもくんの頭を撫でていいのは私だけなの!ふわふわで触り心地は天国そしていい匂いで癒される!正に一度触れてしまったらもう中毒になってしまう!」
「そんだけ良い頭をこのメスガキを触っていいとも?」
護が口を開く
「か、上那さんはいいとしてら、蘭崎さんはなんでなの…?」
蘭崎が少し近づく
「え〜?忘れちゃったの?前の続きしようよ」
上那の頬が赤くなる
「前の続きとは?!」
護は困った表情になる
「わ、わかった でも撫でさせたらもうここに来ないでくれるかな…?」
「うん、いいよ〜?頭撫でるためにここ来てるし!」
「じゃあ…いいよ…」
明が止めようとする
「だ、ダメだよ!一回でも撫でさせたらもう後戻りができなくなるのに!」
明の手より蘭崎の手の方が先に護の頭に届く 護は自分の頭に手が乗っかってくるのが伝わる
「あ…終わった 帰って即シャンプーしよう…」
蘭崎は一瞬視界が天国に染まる
「な、なにこれ…ふわふわすぎて気絶しそう…犬とか猫とかの毛の触り心地の良さの次元じゃない…」
「やばすぎ…ずっと撫でたい いい匂いするし」
「あ、あの…蘭崎さん?も、もういいかな?」
蘭崎は慌てて手を離す
「あ!!うん!」
明は額に手を乗せ絶望をする
「あの頭を触ったらもうやめれないのに…」
上那は羨ましそうに蘭崎を見つめる
「わ、私も触ってみたいな…って何考えてるんだろ私?!」
「あ、有田先輩!ここを教えてください!」
上那が問題用紙を護に見せる その間に蘭崎は自分の手のひらを見つめる
「こ、こんなの…い、1回だけじゃ足りない…もっと…もっと…触ってたい…!」
明は蘭崎の様子を見てため息をつく
「はぁ…私だけだと思ったのに…あの味を知ってしまうとは…」
ふと廊下を歩く女子の後ろ姿を明が見つめる
「ん…?な、なんでだろう?」
「あ、あの子…私と同じ臭いがする…」
学校が終わり下校時間となる
「はぁ…帰ってシャンプー」
「そんなに嫌だったか?」
「まぁそうだよね!私以外に撫でられるとか嫌に決まってるよね!」
「うん…全然嬉しくない…」
その後も護と明は今日起こったことを話すのであった
護と明が別れる
「じゃあな〜」
「うん!」
護は違和感を感じる
「や、やっぱ誰かついてきてるような…」
護が後ろを振り返る
「本当に気のせいかな…?まぁいっか…」
護は前を向き家へと帰る 電柱の後ろからひとつの影が姿をあらわす
「なるほど…ここで別れるんだ 有田護先輩」
「私…あなたに恋したみたいです だから死んでも離しませんね」
最中の口角が上がる
「私の未来の旦那さん うふふっ」




