第五話 ライバル
昼休憩 護が疲れた表情で明と話している
「昨日は大変だった…ほんとに命を危機を感じたよ…」
「まぁ無事に勝ててよかったじゃん?」
「いや…全然良くないよ!」
護が昨日の出来事を思い返す 超難問英語テストが終わり護と明は教室から出ようとする
「あの!」
上那が護に声をかけると護が振り返る
「ん…?」
上那がもじもじしながら口を開く
「もしよかったら勉強教えてくれませんか?」
上那の言葉に護は被害妄想が膨らむ
「べ、勉強を教えてほしい?なんで僕なんかに…?」
「まさか、僕が勉強できるからってあの先輩絶対自分のこと頭良いと思ってるよとかガリ勉陰キャでキモイとかクラス中に広める気?!」
護は慌てて明を見つめる 明は発音せずただ口を開いて動かす
「だ、大丈夫って言ってるのかな?ほんとかな…」
「まぁ明が言うんだし信じていいよね」
護は下を向きながら口を開く
「い、いいよ」
上那は輝くような笑顔を見せる
「ありがとうございます!有田先輩!」
「じゃあ…僕はこれで…」
護が教室から出ようと後ろを向く その時上那はとてつもない殺意を肌で感じる
「な、なに…?この違和感…全身が恐怖に怯えてる」
明は心の中で暴走している
「まもくんに勉強を教えてもらうとか何考えてるの??絶対に二人きりにさせないんだから!」
「勉強ができるからってまもくんに近づけると思ったら大間違いよ!」
「てか私だけでしょ!まもくんに勉強教えてもらえる逸材は!ギャルといい清楚といいなんで邪魔が増えてるの?」
「まぁいいわ!何人来ようとまもくんを絶対守ってみせる」
上那はふと明の方を向く 明はものすごい形相で上那を睨みつけている
「えっ…」
明は上那に気づきすぐ笑顔になる
「い、今…般若がいたような…」
護が思い返すのをやめて頭を抱える
「ほんとにどうしよう…」
明が慰めるように護の肩に手を置く
「大丈夫だって 元々上那さん頭良いし聞くことなんか滅多にないでしょ?」
「まぁたしかに…」
教室中がざわめき始める
「ん?」
護が教室の外の方を向く
「えっ…」
教室の外には上那が立っている 上那は辺りを見渡し護を探している
「なんでいるの?!や、やばい…」
護は慌てて机に伏せようとするがその直前上那と目が合ってしまう
「あっ!有田先輩」
護は名前を呼ばれた瞬間泣きそうな顔で明の方を向く 明は困った顔をしているように見えるが心の中では興奮している
「ついていってあげるからそんな顔するなよ…」
「か、可愛い!そんな表情されてついていかない人いる?!もしついていかないとか捨てられたつぶらな瞳の子猫を見て見ぬふりする無慈悲な人間と一緒だよ!」
護は立ち上がり明の後ろに隠れながら教室から出る
「な、なにかな?」
上那は張り切った表情で問題用紙を見せる
「ここが分からなくて…ぜひ教えてほしいです!」
護は問題を見るなり口が止まらなくなる
「え、えっとここは…だから…こうなって…それで…これがこうなって…」
護は咄嗟に慌てる
「ご、ごめん…つい口走しちゃって…」
上那は笑顔で答える
「いえ!とてもわかりやすいですし面白いです!」
「ここの問題も教えてもらえませんか?」
「ここはまず…」
護と上那が話している中、廊下にいる男子全員が一人の女子に視線を向ける
「うお、可愛い」
「誰かに会いに来たのかな?」
護と上那が話しているのを遮るように声をかける
「まもるっち!なにしてるの?」
護は声の方を向く
「ら、蘭崎さん…?」
蘭崎は笑いながら護を見つめる
「いやぁ、ずっとまもるっち教室にいるから話しかけるタイミングわかんなくてさもう今でいっかって思っちゃって」
蘭崎は上那の方を向く
「てかこの子だれぇ?めっちゃ可愛いんだけど彼女?」
護と上那は慌てて首を横に振る
「ち、違いますよ!私はただ勉強を教えてもらってる後輩です!」
蘭崎は上那をじーっと見つめる
「ふーん?うち蘭崎愛花蝶!呼び方はなんでもおっけー!よろー!」
「よ、よろしく 蘭崎さん 私は上那真愛」
「そんなに堅苦しくならないでよー 愛花蝶とかでいいんだよ?まおっち!」
「ま、まおっち?!」
蘭崎は上那の手首を掴んで護と明から少し離れる
「どうしたの?あ、あげはさん」
「まおっちはまもるっちのこと好き?」
上那は顔が赤くなり慌てる
「急になに言って…!」
「ただ聞いただけだよ〜」
「べ、別に好きじゃないよ…良い先輩だとは思うけど」
「そうなんだ、うちは好きだよ まもるっちのこと」
上那は少し驚く
「えっ…」
「うちにはまもるっちの頭を撫でるっていうミッションがあるの!絶対成功してみせるもん」
「頭を撫でる…?」
蘭崎は上那を見つめ握手を求める
「まぁとにかく!まもるっちを知る者同士仲良くしよ!」
上那は困惑しながらも蘭崎の手を握る
「う、うん?」
「じゃあ邪魔してごめんね!うち次の授業早めにいかないといけないからバイバイ!」
蘭崎は護の方を向く
「まもるっち!また今度はなそー!」
上那は複雑な気持ちになり護に話しかける
「有田先輩…私もまた今度勉強教えてください では」
護は去っていく二人を見て喜ぶ
「よかったぁ…さすがに二人は無理だよ」
「てかあの二人なに話してたんだろうな?」
護は不安そうな表情で明を見つめる
「も、もしかして…僕の悪いところ言い合ってたとか…?」
明が呆れた表情をする
「それはない…」
「まもくんに悪いところとかあるの…?」
上那は廊下を歩きながら蘭崎の言葉について考え込んでいる
「すき…か って私何考えてんだろ! でも…」
上那は勉強を楽しんでいる護の姿を思い出す
「あー!もう!わかんないよ!」
蘭崎は友達二人と合流しており落ち込んでいる
「あげはー?大丈夫?」
「そうだよ、なんかあったの?」
蘭崎が落ち込んでる表情で顔を上げる
「うち…ライバルできるかもしれない」
友達二人は驚く
「え?!」
「そ、それマジ?!」
蘭崎がゆっくり話し始める
「うん…しかもうちと真逆の清楚系女子」
「えー、最悪じゃん」
「それな、あげはと真逆とか好み分かれるかもね」
蘭崎が慌てる
「まもるっちって清楚派かな?ギャル派かな?」
友達二人は蘭崎の肩に手を置く
「あげは?かな?とかじゃなくてまもるっちをギャル派にするんでしょ!」
「そうそう、ギャルの魅力を気づかせるんだよ!」
蘭崎の目に光が戻る
「そうだよね!二人ともありがと!」
下校時間となり明と護が一緒に帰っている
「なんか今日は疲れたなぁ…」
「護ってだんだんモテてね?」
護が明の言葉を信じられないとばかりに首を横に振る
「絶対それはないよ!なんなら裏でやばいことになってるんじゃ…」
明が護の額に軽くデコピンをする
「そんな訳ないだろ?護は良い奴なのに」
明が護に顔を近づける
「考えすぎなんだよ、大丈夫だって 俺がもし女だったら絶対護に惚れてるし」
「そ、そうなの?」
「おう!護には惚れ惚れするぜ」
「まぁ実際惚れてるんだけどね…」
護が少し笑顔になる
「ありがとう明 ちょっと気が楽になったよ」
「いいってことよ」
護と明は途中で別れる
「じゃあ僕、今日このまま皮膚科行くからここでお別れするね」
「わかった、また明日な!」
「うん!バイバイ」
護はいつもは通らない皮膚科への道を歩いてゆく
「かゆいなぁ、アレルギーかなんかなのかな?」
「早く治るといいんだけど… ん…?」
誰も通らないような目立たない建物と建物の間に誰かいるのをたまたま見かけ護は目を細める
「なにやってるんだろう?」
護は少し近づき何をやっているのか自分の目で確かめてみる
「え…!」
護の視線の先には膝をついている女性とその女性の髪を掴んでいる女性とガタイの良い男性が立っている
「あんたさ!いい加減やめたら?」
膝を付いている女性が恐怖で震えながら口を開く
「や、やめてください…わ、私はただ真面目にしてただけなのに」
「はぁ、それがムカつくって言ってんの!いい子ぶるのやめたら?キモイよ」
膝をついている女性が目を見開く
「わ、私はいい子ぶってなんか!」
髪を掴んでいる女性が膝をついている女性の頬をビンタする
「うるさい!もうあんた、二度とそんな口聞けないようにしてあげるわ」
ビンタした女性がガタイの良い男性の方を向く
「やっちゃって」
ガタイの良い男性が一歩前に出て膝をついている女性を見下ろす
「ごめんな、こっちは彼女からのお願いなんだわ 恨むんなら自分を恨んでくれ」
ガタイの良い男性が膝をついている女性に向かって拳を振り下ろす 膝をついている女性は目をつぶる
「いやっ…!」
拳が膝をついている女性に当たる直前で止まる
膝をついている女性が違和感を感じて目を開けるとガタイの良い男性の腕を掴んで止めている護の姿が視界に広がる
「え…?」
ガタイの良い男性が護を睨みつける
「は?誰だてめぇ…」
護がガタイの良い男性を見つめる
「女性は苦手だけどさすがにこれは見過ごせない」




