第四話 成績
一年のクラスで英語の小テストが行われている だが一人だけ暇そうに前を向いている
「はぁ、簡単すぎて困るわ」
綺麗な黒髪のロングに青色の瞳 化粧には一切興味がなくすっぴん最強でさらには成績優秀中学校では学年一を常に維持 付いたあだ名はイザナミの天才 清楚派に大人気 彼女の名前は上那真愛
一年の英語の担任が上那の様子を見ている
「さすが、上那だな 中学校常時学年一位だっただけのことはあるな」
小テストの時間が終わる
「そこまで、後ろからテストを集めろ」
授業が終わり休憩時間に入る 英語の担任が上那を呼ぶ
「おーい、上那 ちょっとこい」
「はい?」
上那が英語の担任の前まで駆け寄る
「どうしたんですか?」
英語の担任が深刻そうな表情をする
「今回の小テスト、正直どうだった?」
上那が困惑した表情で答える
「私からすればとても簡単でした」
英語の担任がニヤリと笑いながら上那が解いた小テストを見つめる
「確かに、全問正解だ」
「そこでな、上那 俺が作った超難問英語テスト解いてみないか?」
「超難問…?」
英語の担任はすました顔で語る
「いやぁ、去年もお前みたいな天才がいたんだよ」
「そいつは一年のテストで満点以外は取ったことがなく俺はそれが悔しくてそいつに挑戦状を送り込んだんだ」
「その挑戦状っていうのが超難問英語テスト 偏差値70を優に超える難易度だ」
「これならさすがに解けないだろって思ったよ」
英語の担任は当時のことを思い出すような絶望した表情になる
「だがやつは放課後に解き始めて1時間は必要な問題をたった10分で解いて帰ったんだ しかも全問正解」
「さすがに俺も脱帽したよ、あいつを超える天才はいないと」
英語の担任が真っ直ぐ上那を見つめる
「でもお前を見て思った こいつなら超えれるんじゃないかって」
英語の担任が情けない声で上那に自分の気持ちを訴える
「頼む…やつを倒してくれぇ…」
上那がニヤリと笑う
「ぜひそのテスト受けさせてください」
「私はとても退屈なので」
英語の担任が笑顔になる
「上那…!じゃあこれをお前に渡す!」
英語の担任が上那に10ページもない薄い手作り感のある冊子を渡す
上那が疑問を抱く
「放課後じゃないのですか?」
英語の担任が手を頭の後ろにやりながら申し訳なさそうな表情をする
「実は今日、昼からいなくてさ明日採点する形になるんだ 申し訳ない」
「なるほど」
「じゃあ、頑張れよ!」
英語の担任が教室を出る 上那は冊子を見つめる
「こんなのすぐ解いてやるわ、にしても去年ってことは今の2年生ってこと?」
「一体どんな人なんだろう?」
護と明が教室で話している
「なぁ、護?」
「ん?どうしたの?」
明が困ったような顔をする
「護ってさ満点しか取ったことないよな…」
護が笑顔で答える
「うん、そうだね」
明が慌てた表情で護に近づく
「いや!おかしいだろ!なんで満点一年連続で取れんだよ?!」
護が困惑する
「えぇ?なんでかな…いっぱい勉強したからかな 小さい頃から勉強が好きでさ気づいたら朝になってることもあったし」
「勉強が楽しく思えたからだと思うよ」
明が微笑む
「ホントにいい息子を持ったものだなぁ…お母様」
「そ、そうかなぁ?」
「そうえばあの一年の時の英語の担任ボコボコにしたの面白かったよな!」
護が苦笑いする
「ボコボコって…渡されたテストをただ解いただけだよ…」
「解いただけってあのテスト偏差値70はあるんだぜ?」
「うん!あのレベルのテストは面白くてつい早く解いちゃうんだよね」
明が呆然とし小声でつぶやく
「天然な天才だな まぁそういうところも可愛いんだけど」
「なんか言った?」
「なんでもない」
一年の教室の外の廊下で蘭崎がギャル仲間と3人で話している
「護っちって可愛くない?」
ギャルの仲間の一人が口を開く
「たしかにぃ、あーいう弟ほしいかも 可愛がりたい」
もう一人のギャル仲間も口を開く
「それな、身長も小さいしマジ可愛い」
蘭崎が二人を見ながら嬉しそうに話す
「あいりんもりなるんも分かってるね!うちあともうちょっとで護っちの頭なでなでできたのに!」
「マジ萎えるんですけど!」
ギャル仲間二人が笑いながら蘭崎の肩に手をやる
「大丈夫だって、まだまだチャンスあるし」
「そうだよ、うちらも応援してる」
3人が盛り上がっているなか少し離れた距離にいる神崎が3人の会話を耳にする
「護っち?もしかして有田くんのこと?」
「どういう関係なんだろう、蘭崎さんと」
「まぁ有田くんは私に惚れてるみたいだからどんなことしても無駄よ」
神崎が口角を上げる
「早めに有田くんをメロメロにさせなきゃ」
護に悪寒が走る
「うぅん?なんかゾワッとするなぁ」
明が心配そうな表情をする
「どうしたの?護」
「いや、なんでもないけどなんか嫌な感じがした」
時間が過ぎ下校時間となり上那は家に帰って早速勉強机に冊子を広げる
上那は気合いの入った表情で問題を見つめる
「よし、やってやるわよ こんなの10分どころか5分で解いてみせるわ!」
5分後 上那は少し顔を濁す
「なるほどね、結構手強い相手になりそうだわ」
10分後
「えーと、この単語の意味は」
1時間後 上那の顔が怪しくなってきている
「な、なによこれ どういうことなの?」
3時間後 上那は机にうつ伏せになっている
「全然分からないわ…10問中3問しか解けなかった」
上那はベッドを叩きながら叫ぶ
「こんなの誰が解けるのよー!先輩はズルをしたのに違いない!きっとそうだわ!」
翌日
1時間目の英語の授業が終わり英語の担任と上那が話している
英語の担任は笑いながら採点する
「10問中3問正解だな さすがの上那でもこれは難しかったか!」
上那が少し不機嫌そうな表情を浮かべる
「難しかったですけどホントに2年の先輩はこれを解いたんですか?」
英語の担任はなぜかドヤ顔になる
「あぁ!解いた 不正行為は一切してない なぜなら俺が目の前で見てたからな」
上那の表情が曇る
「不正行為なしで?嘘でしょ…」
「その先輩の名前教えてくださいよ」
「2年A組の有田護だ」
「有田先輩?」
「まぁもし分からないことがあれば先生ではなく有田に聞いた方がいいかもな」
英語の担任が教室を出ていく
その後の授業中上那は護のことが気になり全く頭に入らなかった そして昼休憩上那はいても立ってもいられず2年A組の教室の目の前に立つ
「あの、」
上那が来たことで2年A組は騒い始める
「か、上那さん?!」
「清楚系最強の美少女だ!」
「誰に用があんのかな?」
上那が辺りを見渡す
「有田先輩っていますか?」
上那の言葉に全員が護の方を向きざわつき始める 護は困惑しながら絶望する
「え…?」
明が護に声をかける
「護、俺もついていくから話聞こうぜ 喋れないなら俺が代弁してやるからさ」
「うん…」
明と護が教室を出て上那に視線を向ける 護は明の後ろに少し隠れる
「有田はこいつなんだけどなんか用かな?」
上那が護を見つめる
「勝手ながら一つお願いがあって」
護が口を開く
「な、なにかな?」
上那の眼光が鋭くなる
「私と超難問テストで対決してくれませんか!」
護が驚く
「えぇ?!」
上那の口が止まらなくなる
「あなたは天才だと聞きました、ですが私も天才であった人間!申し訳ありませんが私のプライドというものがあなたを許さないのです!だからどうか私と対決して私のプライドをへし折ってください!」
明が上那を呆れた表情で見つめる
「えぇ…素直すぎでしょ…」
明が護に視線を向ける
「護?どうする?」
護が慌てて頷く 明は護の反応を見て上那に視線を向ける
「いいってさ」
上那は輝くような笑顔を見せる
「ありがとうございます! では明日の放課後に会いましょう!」
上那は後ろを向き立ち去ろうとする その時蘭崎が廊下を歩いている
「護っちと二人きりになりたいけどタイミングわかんないから護っちが教室出た時狙おっと!」
蘭崎が護を見つける
「あ!護っちだ! ってあれ?あの清楚系の可愛い子誰なんだろう?」
「さっきまで話してた系? も、もしかして彼女とかじゃないよね?」
蘭崎が明の方に視線を向ける
「しかも護っちの友達いるじゃん、これは出直そうかなぁ」
蘭崎は立ち去り教室に戻っていき明と護も教室に戻る
「ど、どうしよう…テストなんか解けないよ、女性が隣にいるのに」
「あ、そっちなんだ…テストが難しくて解けないとかじゃないんだ」
護が不思議そうに明を見つめる
「勉強したら解けるよ?」
明が呆れた表情になる
「はぁ、それ護だけだよ」
「え?」
その日の夜 上那は徹夜で勉強をしていた
「前やった超難問テストの問題を利用してネットを使って解き方を学んでいって」
「よし、この調子で明日は絶対勝つ!」
「それにしてもあのあと英語の田中先生に超難問英語テストの制作を急にお願いしたけどすぐ承諾してびっくりだったなぁ 私以上にもえてたし…」
翌日 上那は休憩時間さえも勉強時間として消費し放課後を迎えた そして誰も使わない教室で護と明と上那と英語の担任が集合する
「それでは二人とも準備はいいか?制限時間は1時間」
「護頑張れー」
「はじめ!」
超難問英語テストは前回と同じように10ページぐらいの薄い冊子 お互い1ページ開いて問題を見つめる 上那は早速困っている様子だが護はなぜか笑顔
「1問目から強敵…これはいい戦いになりそうだわ」
「おー、この問題面白いなぁ 次の問題いこうっと」
10分後 お互い頭を抱えている
「やばい、面白くてもう全問解いちゃった…」
「なんなのこれ!初の4問目までいったのに!」
30分後 お互いがなにかをひらめいたような良い表情をしている
「暇だなぁ、そうだ!この問題韓国語に翻訳してみよ」
「いいわ!5問目までいってる かなりいい調子だわ」
1時間後 一人は笑顔で一人は絶望した顔をしている
「そこまで!」
「やったわ、6問まで解けた これなら勝てるかも」
「えぇ、もう終わりになったの?もう少しでフランス語もいけそうだったのに」
「採点するから回収するぞー」
英語の担任がテストを回収しその場で採点をする
「採点し終わった、結果を発表する」
上那がドキドキしながら耳を研ぎ澄ます
「上那、10問中6問正解」
上那が笑顔になる
「やったわ!私のかち…」
「有田、全問正解 よって有田の勝利」
上那が呆然とする
「え?」
「今回も全問正解とはな、先生は頭が上がらないよ有田」
護が苦笑いをする
「あはは、でも面白かったですよ」
上那が頭を抱えて深刻そうな表情をする
「うそでしょ…この私が完敗…プライドをへし折ってとは言ったけどいざへし折れるとこんなに悔しいなんて…」
上那が自分の過去を思い出す
「私は勉強が好きだからそれが理由で人とはあまり関わってこなかった」
「そのせいで私は避けられるようになりガリ勉とか勉強の変態とか同級生の女子に陰口を言われる毎日 そんな中私が見返す方法はただ一つ勉強 勉強だけを頑張ってきて誰も私を馬鹿にしないようなところまでいったのに」
「なのに、こんな簡単に負けるなんて…私から勉強をとったら何が残るの…」
明が護に問いかける
「なんで護ってそんなに勉強が好きで続けられるんだ?」
「うーん、前も言ったと思うけどやっぱ楽しいからだよ」
上那が護を見つめる
「はっ…!」
護が笑顔で明に話す
「自分の好きなことだったんだ ただそれだけだよ」
「勝負も馬鹿にされても関係ない、僕は勉強が好きなんだ 好きなことは続けた方が絶対人生楽しいからね」
上那は護の言葉に感心する
「そうだ、私は好きなことを勝つためのことに変えてしまってたんだ…好きなことのままで良かったのに…」
護と明が上那に近づく
「た、対戦ありがとう ぼ、僕楽しかったよ」
上那が笑顔で答える
「こちらこそ急なお願い本当にありがとうございます!」
「私も楽しかったです!」
その後日 上那は…
「今日も勉強のんびりしていこうかなぁ」
上那のクラスメイトが上那に話しかける
「あの、上那さん もし良かったら勉強教えてくれないかな?どうしてもわかんなくて」
上那が笑顔になる
「いいよ!勉強は楽しいからね!」




