古代2~群雄割拠國取り合戦
近隣にある國同士は友好な同盟関係を保っているはずである。
小さな國でもひとつふたつと集合体となれば一大勢力となる。互いに敵対視をせずに済めば無用な争いは避けることができる。
一兵卒から隣國を鎮圧した知らせを受ける村長。この程度の軽微な戦で犠牲者が少なく良かったとひとまずは安堵する。
「村長さま。國王の首検分が済みました」
敵将をハネたのだから今から我が國の領地であった。村長から指令を出して完全なる統治権を酷使する。
戦勝は多大な勝利品を手にするが敗軍の将は…
「あみちゃん申し訳ないけど」
謀叛を企てたのはあみが姫という國である。あみは反旗を翻した裏切り者の娘である。
「手荒なことはしないつもりだけど」
あみに縄を打てと命じる。
「古代の掟やぶりは重罪に当たるんだ」
國王は兵士に処刑され領地没収の憂き目に遭っている。娘のあみがのほほんとかの地にいては統治する村長としては具合が悪いのである。
古代人のルールで國王一族皆殺しである。民や兵士に統治者としての権威を見せしめる意味合いが充分にあった。
囚われの身になるあみは公開私刑が常套であり宮殿前の広場でバッサリ斬られるところである。
縄でからだを縛られたあみ。命を受けた兵士はわざと弛やかに縄を打ち基本的に縛りはしない。
「あみちゃん。ほとぼりが冷めるまで牢屋にいてもらう」
村長は牢に連れていけ!と兵士に命じる。意に反した言動。
直接にあみに涙を見せたくはないと急いで宮殿の中に入ってしまう。
あみは縄を受け入れると牢屋に連れていかれる。
「私は。これからどうなるんでしょうか」
腰縄を握る兵士に心配顔のあみ。
古代人の例では姫ぎみであろうが単なる女であろうが広場で磔刑になるのである。
兵士は当然に死刑ですっと答えることは出来ず。押し黙っていた。
宮殿に引きこもる村長。統治者として謀叛をした國のあみは生かしてはおけない。
臣下や軍隊長に磔刑を申しつけねばならない。前例に倣い槍や鋭い石器で一命を絶たせるのである。
「あみちゃんを…」
小学校の同級生を磔にすることなどできるはずがない。
何らかの理由を見つけねば。
あみの命を救わねば。
トントン
村長の部屋をノック。いかつい軍隊長がやってきた。
「入ります。村長殿。あの謀叛國の姫はいかがいたしますか。明日中に軍隊主導にて磔刑にいたします。それでよろしいでしょうな」
明日に磔を
あみを槍の先で
「ちっちょっと待ってくれ」
村長は國の最終司令を握る立場である。この場で承諾を出すとあみの命はないのである。
「はっ!いかがいたしますか。謀叛の娘ゆえ槍で収拾をつけましょう」
問答無用にバッサリと私刑にしてしまいたい。グダグタして若い兵士の指揮に影響がでかねない。
「村長どの。(磔刑の)即決を願います。敵対にある南の國に早く攻め込みたいと思います」
さっさと裏切り者あみを私刑し若い兵士らを南方に引き連れて行きたい。
「この南方の國との戦は大切です」
近隣國との交戦とは多少なりとも難易度が違う。
「我が軍隊の最大なる軍備力を持ち得ても危ないかもしれません」
南方の國は強敵であり次々と近隣の國を征服していると噂がある。
「なんでも見たこともない最新鋭の武器を使うらしいですぞ。我が軍団も優秀なんですが新しい武器ともなると」
軍隊長は顔が曇る。敵と出たとこ勝負となる要素がたぶんにある。
「我が軍隊は優秀でございます。必ずや南方國を制圧し勝ち戦にて生還します」
軍隊長はイラつきを隠さない。
もしかしたら負けるかもしれぬ。
そのためにも処刑を華やかにおこない兵士の意識を高めたい。
村長の弱腰な態度に業を煮やす隊長。
「さっそく軍隊を進めますぞ」
明日は無法者の娘あみを処し強敵なる南方の國へ向かうぞ。
隊長はこの瞬間から上官たる村長を無視してしまう。
「待て!処刑は急がなくてよいだろう」
南方遠征で勝ち戦を収めてからでもよいではないか。
なっなにぃ~
我は軍隊の長たる身分であるぞ。兵士のなんたるかも知らぬ(政治の長なる)村長の身分で私に文句を言うのか。
イライラから怒りの導火線に点火をしてしまう!
「わけのわからぬ村長・ムラオサなど要らぬ!」
勢い腰の剣を抜き去る。
おっお~
村長にかしずく臣下はしばし茫然とするばかり。
高く掲げるは國で一番の剣の達人であり軍隊長である。2~3人で逆らっても勝ち目はない。
「村長を縛りあげよ!融通きかぬ長など炒らぬわい」
軍隊長は南方征伐が無事終わるまで村長も牢屋に閉じ込めてしまえと宮殿仕えの臣下に厳命した。
臣下は恐る恐る村長に縄を掛けてその場しのぎに牢屋へ連行をする。
軍隊長は怒りまくりその勢いで連隊に戻っていく。
「明朝一番に(あみの)処刑を見届け」
全兵士に磔刑を敢行してから南方征伐だぁ~
牢屋に村長は強行に連れていかれはする。だがそこはそこ親しき臣下である。
「村長さま縄は痛くございませんでしたか。隊長がいなくなればすぐにほどきます」
臣下はあみも同様に縄をほどく。牢屋にはあみの代わりに見知らぬ村娘が形だけ入っていた。
「村長さま。軍隊長をどういたしますか。國王さまに伝えておきます」
村長はあみが無事と知るとこっくり頷いた。
"臣下たる貴君の命に従うぞよ"
臣下はあみを揺り動かし耳打ちをした。
「ハイッわかりました」
翌朝の宮殿広場は一面に勇猛果敢な軍隊である。
宮殿前にふんぞり返るのは勢いのある軍隊長の指令閣下である。
「なっなんだとぉ~小娘がいなくなっただと」
腰の剣に手を掛けようかと隊長は震えていた。
「さようでございます。牢にあるのは見知らぬ女でございました」
女は知らぬ男らに牢屋に入っておれと命じられた。
「あみはどこに消えたのだ。アイツは謀叛をした國王の小娘だぞ。次に何をしでかすかわからぬ。臣下ども探してまいれ」
軍隊は今から南方征伐に行かねばならない。あみ探しなどしている暇はない。
宮殿から國王と女王が現れるとセレモニーは最大の盛り上がっりを迎える。
拝殿前に軍隊長が歩み寄りかしずく。
「國王さま女王さま。南方征服は必ずや勝ち戦をして参ります」
朗報をお待ちください。
國王は期待していますと優しく答える。
宮殿前の広場に村長とあみはいた。ふたりとも村民のみのむし姿をし軍隊にバレぬように変装であった。
「あみちゃん。申し訳ないが今の軍隊には逆らうことができないんだ」
國王も女王も変装した村民は知っている。
「軍隊の圧力が収まった頃を見計らって宮殿に戻るつもりなんだ」
村民も村長も南方の國はかなりの強敵と人伝に知っている。武運のある隊長は気性こそは荒いがそのぶん戦略家で負ける戦いはまずしないのである。
「軍隊の機嫌を損ねないのが得策なんだ」
拝殿では國王と隊長ががっちりと握手をしていた。
ワァオ~
ワァオ
國王万歳~
女王陛下万歳
直ちに隊長は指揮をくだし南方遠征に進軍である。
乱暴者の軍隊がいなくなると國にしばしの平和が訪れてくる。
村長とあみの許には宮殿からの臣下が食べ物を運び國王との連絡の役目をしてくれていた。
「村民という庶民生活も悪くはないね」
主食は稗や粟であり白く炊かれたご飯はなかなか口に入らなかった。