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3/3

(3/3)できれば静かに暮らしたい

一騒動あった説明会の翌日、中森トオルはいつものように家の外、畦道の脇でタブレットを操作していた。

今日も良い天気だ。悪い事は起きそうにない。


と、スマフォが鳴る。宝田徹也からだ。

「トオル。良くない知らせだ。そっちのデータセンター建設計画には裏がある。たぶん土地の大規模買収をしたあと計画が頓挫した体で土地を外資に売る」

「外資に売ってどうなるんだ?」

「そこは見えていないが」

「放射能汚染土の保管場とか、産業廃棄物の捨て場とか?」

「まだ、わからん」

「ありがとう。こっちでも調べてみるよ」

「今、そっちに向かっている。大人しくしてろよ」

宝田の通話が切れる。う~~ん、悪い事が起きるのか?


その時、ブレーキの音がして大きな黒い車が中森トオルの家の近くで止まる。車から降りてきたのは2名。

1人は説明会の司会をしていた鬼塚健二。もう1人は初めて見る男だが、明らかに堅気でない雰囲気をまとっている。中森トオルのところに近付いてくる2人。


「こんにちは。昨夜はお世話になりましたね。今日は御礼に来ました」ブキミに笑う鬼塚。

「中森トオルさん。なぜうちの人間があなたを見て逃げ出したのか分かりませんが、今度はあなたに退場してもらいます」


さてどうしたものか。畦道は1本。向こうから怪しい2人が来て、背後は山。かなりまずい状況だ。右手の畑を走って逃げるべきか。中森トオルは最善の策を求めて素早く思考する。


鬼塚と一緒に来ていた凶暴そうな男が前に出る。手に木刀のような物を持っている。

中森トオルは立ち上がり、その男と向かい合う。

凶悪そうな男が口を開く。

「素人にしては落ち着いてるな。あんた何者?ま、俺には関係ないが」


後ろに立つ鬼塚も言う。

「中森さん、私はこういう事が苦手なので助っ人を呼ばせて頂きました。龍崎さんです。プロの方ですよ」


中森トオルが肩をすくめて2人に言う。

「僕も助っ人を呼んでいるという発想はできませんでしたか?」


「ハッタリは止めとけよ」龍崎が木刀を手に凄む。


中森トオルは振り返って後の茂みに向かって叫ぶ。

「小太郎!!」

ガサガサっと音がする。

驚いた顔をして身構える鬼塚と龍崎。


後の茂みから小太郎でなく、大型の熊が飛び出して来る。

「うそっ!!」と中森トオルは叫んで横に飛ぶ。


龍崎は木刀を構えて熊と対峙する。熊も龍崎を敵と認識し向かって行く。

龍崎は怯まず熊の顔に向かい突きを出す。龍崎は相当な腕前で、木刀の切っ先で熊の左目を潰す。

熊が大きな悲鳴を上げるが、勢いは全く衰えず龍崎に突進し右手で龍崎をなぎ倒す。手負いになって明らかに荒れ狂っている。

恐怖のあまり転び、四つん這いで逃げ出そうとしていた鬼塚の背中を爪で裂く。

動けなくなる二人。


熊はゆっくりと笹崎の方に向く。

武器も無いがどうにか出来ないものか、いや、ここまでかと中森トオルが半ば諦めかけた時、さっき熊が出て来た茂みから小太郎が飛び出して来る。

小太郎は熊に向かって大声で吠え、熊と睨み合う。

さらに、その時パトカーがサイレンを無らしながらやってくる。その他の車も2台一緒だ。

熊は小太郎に追われ山へ戻って行った。


怪我人の様子をみて警官は応援と救急車を呼ぶ。別の車から宝田徹也が駆けてくる。

「トオル、大丈夫か?」

「ああ、なんとかね。小太郎に助けられた。命の恩人だ」

小太郎の頭を撫でる中森トオル。


「小太郎はマタギ犬の血をひいてるんじゃよ」と小雪の祖父もやってくる。

小太郎は無邪気に中森トオルの顔を舐めている。

「小太郎。本当にありがとうな」

中森トオルと小太郎がじゃれている。


---------------------


数日後、中森トオルは小雪の父親と畑の横で会話していた。少し離れたところで小雪と小太郎が遊んでいる。

「何か村の開発を邪魔したみたいですみません」

「いえ、中森さんには感謝しています。あの人たちは色々と余罪があったようです」

「人口が減っていく地方でどう経済を保つかは永遠の課題ですよね」

「はい、小雪やその下の世代が幸せに暮すには、どうしたら良いのか。そこを考えるのが私たちの役目です」

しばらく無言で目の前の畑と山々を見る2人。


中森トオルのスマフォがなる。画面を見て通話を受ける。

「あー、捕まった捕まった。トオルちゃん今どこ。ちょっと来てほしいんだけど」

「リリーさんですか。行こうと思えば明日にでもいけますよ」

「じゃぁ、明日午後一でよろしく」

慌ただしく切れる通話。


小雪の父親が笑いながら言う。

「あちこちから呼ばれて大変ですね。でもそういう風に頼られるってのは羨ましいです」

「できれば静かに暮らしたいんですけど」

静かに笑う二人。

小太郎が無邪気に尻尾を振りながら中森トオルを見ている。


ー 終わり ー




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