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(2/3)素人の質問で恐縮ですが、よろしいでしょうか

北池山村の役場大広間でデータセンター建設計画の説明会があっていた。前の長机には3名すわっており、説明は真ん中の男が行っている。

「以上で私、開発公団代表の鬼塚健二からのご説明を終わります。引き続き質疑応答を行います」

会場の参加者からパラパラと手が上がる。主に畑の買収金額や支払い方法に関する質問だ。上がる手がほぼ無くなった時に小雪の父親、水樹聡が手を上げる。

「データセンターの完成に疑問があるという噂を聞いたのですがその真偽を説明して頂けますか」

それに対して鬼塚が爽やかに答える。

「どこの噂か存じませんが、私たちのグループには海外の大手資本も付いているので資金面でも技術面でも問題ありません」

「あまりにも山奥に作るため通信路に問題があるのでは、という懸案を聞きましたが」

鬼塚がかすかに笑ったように見えた。淀みなくそれに答える。

「そこは今までに無い新技術を使います。全く新しい通信技術でTCP4といいます」

会場が少しざわつくのを見て鬼塚が続ける。

「通信容量、速度、セキュリティー。全てにおいて画期的な新技術です。それと通信衛星を使います。今日はその道のプロを連れて来てますので説明してもらいますね。大久保君お願いします」

大久保と呼ばれた男がスクリーンに資料を映し出し難解そうな図を英語を交えて説明する。

わかっているのか、いないのか、会場の前方に座っている高齢者が大袈裟に頷いている。


ある程度説明したところで大久保が会場を見て伝える。

「という感じなのです。何かご質問ありますか?」


あの~、というのんびりした声がして会場の最後列にいた背の高い男が手を上げる。

「素人の質問で恐縮ですが、よろしいでしょうか」

大久保が怪訝な表情をするので、鬼塚が応える。

「はい、どんな事でもいいですよ」

では、と最後列の男、中森トオルが口を開く。

「確かTCP4はセキュリティー確保のためハードトークンを使うと思うのですが衛星の場合、非常時の入れ替えはどうやって行うのでしょう」

鬼塚が今日初めて冷静さを無くす。ハードトークンって何の話だ。聞いてないぞ。素人の知識自慢か?と説明役の大久保を見た時、彼が明らかに動揺しているのに気が付いた。口と目が震えている。


「大久保君。回答をお願いします」と無理やり笑顔を作って鬼塚は言う。しかし、大久保は尋常でない動揺を見せている。

「んな、な、なぜ、あなたがここにいるんですか?!」

そう言われた中森トオルは、僕の事?というかのように自分を指差して困った顔をする。


口をパクパクさせていた大久保は絞り出すように鬼塚に言う。

「鬼塚さん、私は相手が田舎の素人だから大丈夫だと言われて来たんですよ。なぜ、あの人がここにいるんですか?」

「あの人と言われても、、、」と鬼塚も困窮して会場後方を見る。

背の高い男は頭をかきながら隣の女の子に何やら話している。


「鬼塚さん、私は降ります。金もいりません!!」

そう言うや、大久保は資料を手に取って会場から走って出て行った。騒然とする会場。

鬼塚がマイクで大声を上げる。

「申し訳ありませんが説明会はここで終了とさせて下さい。後日改めて仕切り直しを開催します」



最後がグダグダになった説明会場を後に、中森トオルと水樹親子が帰路につく。

リードを付けた小太郎も一緒だ。

「お兄ちゃん、ハードトークンって何?」

「うーーん、家の鍵みたいなものかな」

「あの、前に立っていた人たちは悪人なの?」

「どうだろう。ただ、難しい言葉を並べて話す人はあんまり信用できないかもね。本当に皆んなのことを考えている人は、誰にでも分かり易い説明ができると思うんだ」

小太郎がそうだそうだ、と言っているかのように頷く。


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その日の深夜、山道に止めた車の中で鬼塚がスマフォで会話をしている。

「大至急、龍崎の若頭に来て頂くよう連絡しろ。ちょっと力関係を示す必要がありそうだ」

山奥の夜はあくまで真っ暗で何一つ、音がしない。

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