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第二話

歩き続けて数時間程経っただろうか。体感的にはそんな感じではあるが、多分実際には一時間程度だろう。ようやく見慣れない景色に変わった。


見渡す限り一面凍った木々の森。と言うより、木の形をした氷が森のような見た目をしている。葉の一枚ですら薄い氷の板である。さふさふとしか鳴らない雪の上よりも、パリパリと音を立てるだけで楽しくなるものだ。


「こんな綺麗なところもあるんだなぁ」


雪景色も綺麗ではあるが、数日程ずっと見て歩いていれば流石に飽きてくる。突然襲ってきた人達のお陰でこの綺麗な森に辿り着けたのだから感謝しないといけない。せめて天国に行けている事を願おう。


さて、ゆったり森林散歩でもと歩みを進める。が、直ぐに行く手を阻まれる。前には二匹の狼のような動物。雪原でもたまに襲ってきたから覚えている。倒さないとずっと追いかけてくる面倒な奴だ。


低い唸り声を発しながら近付いてくる二匹。綺麗な景色で盛り上がった気分が台無しになったので、八つ当たりついでに両断しておいた。邪魔でしか無いし鬱陶しいから、出来れば二度と会いたくない。


なんて思っていると、そういう時に限って頻繁に出会うものである。現れては両断され、ちょっと数が多い時は面倒なので魔法で焼き払った。焼いたら森の一部が溶けてしまった。景観を損ねてしまったようだ。この森では炎は使わないようにしよう。


そうこうしている内に、気が付けばすっかり暗くなっていた。灯り一つ無いからか、夜空は満天の星空が美しく映える。今夜は凍った森にいるからか、更に綺麗に見えた。


昼間の溶けるような暑さも、夜になれば一変して涼しくなっていた。雪で出来ているからか、これくらいの冷気がとても心地よく感じる。夜の散歩気分で、いつもより歩みが軽く感じた。


少し歩くと、嫌な匂いが漂ってきた。鼻は無いから実際に嗅いだ訳じゃないが、本能的に嫌になる感じだ。良い気分がまた壊されたのでムカついて進んでみると、テントが張られていた。中に人がいるらしく、灯りが隙間から漏れている。


それにしても嫌な匂いだ。近所に落ちていた腐った缶詰を開けた時みたいな、極めて不快な匂いがする。


…缶詰…?缶詰って何だ?


そう言えば、僕は何でここを歩いているんだろうか。確か雪原に居たのは覚えている。それで、えっと?


確か、歩いて、歩いて、歩き続けて…それでこの森を見つけて…誰かに教えて貰ったんだっけ?いや、何か違う気がする。


「…僕は…?」


呟いた時、不快な匂いを間近で感じた。顔を上げると、目の前にはテントが張られている。灯りが点いていると言うことは、中に誰かいるみたいだ。


嫌な匂いだ。文句を言ってやる。匂いが酷いだけで苦情にもなり得ると教えてやる。そう意気込んでテントを覗き込む。


中では三人の女の人と、一人の男の人がはだけた服装で身を寄せあっていた。外の涼しさは気にならないのか、やたらお熱い様子だ。


この不快な匂いと言い、いきなり変なもの見せてくる事と言い、この人達は非常識の極みだ。そう思っていると、女の人が一人、僕の方を見て叫んだ。


「も、モンスター!?」


その声を聞いた他の三人も慌てて僕の方を見る。


「な、モンスター避けのお香は焚いてる筈だろう!」

「確かに効いている筈です!」


モンスター避け?もしかして、こんな変なことするためにこの不快な匂いを撒いたとでも言いたいのか?もしそうだとしたら、あまりにも身勝手極まりない。


「待って下さい…あのモンスター…首に赤いマント…」

「赤いマントがどうしたんだ?」

「忘れたのですか!?ほら、あり得ない金額の報酬が出る依頼がありましたよね!」


夜なのに大声で何か言ってる四人を見て、騒音まで起こす大馬鹿者だと呆れた。すると、微かに漂う気配。


敵意。あぁ、成る程。コイツらも敵か。


敵と解ったので、魔法で氷の剣を造って中に乗り込む。はだけた服装の四人だ。武器なんて当然持ってないから、全員の頭をかち割って、お腹の中身を一纏まりになるように一人のお腹の中に他の人の中身を詰め込んだ。これくらいはしないと。悪い人達なんだから。


嫌な匂いのお香も壊して、ようやく気分が晴れた。匂いも消えたし、不快なことしてる人達も居なくなった。ついでに、この人達の荷物から地図みたいなのを手に入れた。とりあえず、近くにある街にでも向かってみよう。


街…どんなところだろうか。優しい人達が沢山居ると嬉しいんだけど…出会った人達皆、突然襲ってきたり悪い人達だったりしてるから、あんまり期待はしていない。

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