寝言
貴重な自由時間。
かよ子にそれが訪れるのは子供たちが眠りに就いた後。
いわば睡眠のゴールデンタイムに突入する頃、やっと一人の人間としての自由時間が始まる。
とはいえ、結局自分のための時間というわけにはいかないのが悲しい現実だ。
テレビを見たり本を読んだりできれば上々。
大抵は、小学校や保育園に提出する”書き物系”を処理したり、小学校の図工で使う材料を集めたり、それからやり残した家事を片付けているとあっという間に自分の就寝時間になってしまう。
そんなかよ子の一人時間中に、寝室からまさきの寝言が聞こえてくることがある。
「はははははははは!!」
大抵はこんな風にけたたましい笑い声。
楽しい夢を見てるんだろうな、と思うのに、朝起きるとげっそりとして「怖い夢見た……」と訴えてくることも少なくない。
どんな夢だったのか怖くて聞けない。
ゲームの夢もよく見ている。
「ジャンプだよ! だめだって、そこ昇ってからジャンプしないと! あーあ、落っこちちゃった」
何のゲームをしているかは大体わかる。
「あー、暇だなー」
本当に寝てるのか? と思わず顔を覗き込んでしまう。
そうして大抵ははっきりとした寝言をいっているまさきなのだが。
「じ……な、ふ……が……め……ん~なじま……すげ……た」
こういう寝言は気になる。
いつもとは違って一般的な寝言であるのだが、何を言っているのかわからなすぎてフラストレーションが溜まる。
もっとわかるようにはきはき喋ってほしいと思ってしまう。
寝言なのに。
そして。
「んー……、うるさい」
おまえがな!!
とツッコミたくなっても寝言だ。
このようにバリエーション豊かに夜中挟まれる寝言に、かよ子の自由時間は彩られているのである。