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物語の小説化の技法  作者: 種田和孝
第三章 小説の構成
23/41

【中級】リアリティーとリアリティーレベル

 小説は虚構つまり嘘の塊です。読者には法螺話にのめり込んでもらわなければなりません。そのためには、話を出来る限りもっともらしく仕立て上げなければなりません。ただしもちろん、全てを現実的に描写せよと強調している訳ではありません。魔法や超能力や超科学があっても構いませんし、神や魔王や宇宙人がいても良いのです。

 悪い実例を挙げ始めると切りがありませんし、おそらく物議をかもします。そのため、ここでは実例の列挙などはせず、次の三点を指摘しておきます。

 その一。作品のリアリティーに関して問題になることが多いのは、物語の舞台設定よりも登場人物の思考や振る舞いです。つまり、人の為すことは、いかにも人の為すことらしくあるべき。それが読者の一般的な要望であり要求です。

 その二。現実性の高い舞台設定がなされている場合、物語世界に関する説明はそれほど必要ありません。作品にリアリティーを持たせるためには、登場人物の思考や振る舞いだけでなく、事態の推移がもっともらしくなければいけません。読者は身をもって現実世界を知っているのですから、辻褄が合っていないと、読者はすぐにそこに気付いてしまいます。

 その三。架空性の高い舞台設定がなされている場合、もちろん物語世界に関する説明が必要になります。しかし、作品にリアリティーを持たせるためには、世界を過度に説明してはいけません。世界を根本まで説明し尽くそうとすると、いずれ舞台設定は破綻してしまいます。嘘の世界、本質的には非論理的で意味不明な世界なのですから、上辺を繕う以上のことが出来るはずはないのです。

 次にリアリティーレベルについて解説します。これはリアリティーとは異なる概念であり、物語世界が現実からどれだけ懸け離れているかを意味します。例えば、物語が現実世界で進行する場合、リアリティーレベルは高いとされます。その典型例は現代ドラマです。逆に、物語世界が現実世界から懸け離れている場合、リアリティーレベルは低いとされます。典型例はハイファンタジーなどです。

 一般的に、リアリティーレベルは物語の冒頭で明示されなければいけません。また、リアリティーレベルは物語全体を通して一定に保たれなければいけません。

 一般的に、リアリティーレベルの明示は描写によって行ないます。ここは魔法の世界であるなどと直接的に述べるのではありません。例えば、魔法使用の場面を記述したり、会話や回想内で魔法に関して触れたりするだけで読者には通じます。

 作品の途中でリアリティーレベルを変更すると、作品の評価が下がることはあっても、上がることはほとんどありません。読者が馴染んできた世界像、読者の中で構築された世界観が壊れてしまうからです。

 例えば、現実世界を舞台として、楽しい学校生活の描写がずっと続いていたのに、なぜか突然大人の深刻な事情が舞い込んでくる。何と興醒めな物語。何で突然リアリティーレベルを上げるのか。それが大方の読者の感想となるでしょう。

 例えば、現実世界を舞台として、コメディーだったはずのものが、なぜか突然シリアスものになってしまう。何と残念な物語。何で突然リアリティーレベルを上げるのか。それが大方の読者の感想となるでしょう。

 例えば、現実世界を舞台として、論理を尽くして推理合戦を行なっていたはずだったのに、最後になって主人公だけは超能力や魔法を用いて正解を知っていたことが明かされる。何とでたらめな物語。何で突然リアリティーレベルを下げるのか。それが大方の読者の感想となるでしょう。

 例えば、路上で二人の男が喧嘩をしている。そこに突然、一方に加勢するために地球連邦軍が駆け付ける。しばらくするともう一方に加勢するために太陽系同盟軍がやって来る。最後には仲裁のために銀河系連合艦隊が現れる。何と安直な物語。何で次々にリアリティーレベルを下げるのか。それが大方の読者の感想となるでしょう。

 リアリティーレベルに関しては「一般的に」と繰り返しています。つまり例外があります。その件に関しては伏線の節の後半部分を参照してください。

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