授業
「いい度胸だな。私の授業で寝るなんて」
白衣を着た女性が寝ている誄を持っていた出席簿で叩いて起こした。
叩き起こされた誄は目の前に佇む顔を引きつらせている女性と目線が交じり合う。
「誰?」
夢から目を覚ました誄にとって見覚えの無い顔をした女性がいた。
誄の突然の言葉に白衣の女性は少し驚いた表情をし、手に持っていた出席簿に目を通して言う。
「ふーん。あなたが須藤 誄か。私は非迎よ。
少しの間だけ、数学を教えることになったの。よろしくね。じゃあ、授業始めるわよ、寝たらあの世行きだから気をつけてね」
誄に自己紹介を終えた非迎は教卓まで戻ると、何事も無かったのように授業を始めた。
「本当に覚えてないの?」
授業が終わり授業の静けさから喧騒の戻った教室で、眠そうにしている誄の机の上に座って飽きれた声で同じクラスの華々出 幹菜が言った。
「非迎っていつからいたんだ? 今まで見たことすら無かったよ」
幹菜は少し考え込む。
「一週間前ぐらいに北極圏に自転車で旅に出るって行って、車で旅に出て行った先生の変わりに代理で数学を担当することになった人よ。そういえば、紹介された時に誄は学校さぼってたわね。だから知らなかったのか」
「あぁ、通りで。とりあえず、寝るから机から降りてくれ」
幹菜は少し複雑な表情をして考える素振りをしながら机から降りて言った。
「おやすみ、誄。てぇい」
幹菜は誄の首に手刀を落とした。