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遊び

 授業から解放された生徒たちは地獄の三日間を生き残る準備のために行動を始めていた。在る者は図書館に、在る者は友達の家に、そして、全く行動を起こさない者。

 夕暮れ時の教室には三人だけ、誄と阿奏、それと好乃々がいた。

「誄。今から何する? テスト一週間前だから部活休みで暇」

 阿奏は教卓の上に肘を付き、退屈そうに窓の外を眺めながら言った。誄は自分の席に座りながら、勉強でもしたらと阿奏と同じように退屈そうに窓の外を眺めながら言った。

 そして、好乃々は誄の少し後ろに立って微笑みながら誄と阿奏のやりとりを眺める。数分前に誄が好乃々に気を使って適当にどこかに座ったらと言ったがお気にせずと笑顔で断れている。

 帰宅部の誄にとってやることがないという状況は珍しくないのだが、好乃々と阿奏という二人がいるという状況をどうすればいいのか悩んでいた。

 阿奏がこの状況を早く打開しろと誄に視線を送るが目が泳いでる。阿奏は誄に送っていた視線をまた外に向ける。快晴である。

 このまま待っていても良い結果になりそうにないと判断した阿奏はどこか遊びに行くことでも提案しようかなと思惑する。

「帰るか」

 誄が阿奏が提案する前にとても残念な判断を下した。ジト目で阿奏が誄に抗議するがまだ目が泳いでいる誄は全く気付かない。

 その時、教室のドアが勢い良く開き、幹菜が満面の笑みで佇み言い放った。

「遊びに行きましょう」

 誄達が住んでいる街は誄達が通っている高校を挟んで、繁華街と住宅街に分かれている。

 繁華街には大抵の娯楽は集まっており、この前行ったゲームセンターは繁華街にあるものだった。遊ぶということで必然的に誄たちは繁華街に電車で向かっていた。

 しばらく電車に揺られながら誄と阿奏、幹銘が雑談をしている、相変わらず好乃々はその様子をニコニコと眺めている。雑談の話題が今日のプランにシフトする。

「私の完璧なプランを聞いて驚きなさい。ショッピングよ」

 自信満々に言い終わった後に目的地を告げるアナウンスと共に電車のドアが開いた。

 とても楽しそうに会話する幹菜と阿奏、それを楽しそうに笑って相槌を打っている好乃々の後方の方で両手に大量の袋を持たされた誄がいた。

 簡単に言うとていよく遊ぶという口実で誄は荷物持ちされていた。

 誄の悲劇は駅の改札を出た瞬間から始まった。あれ可愛いと幹菜が指差した数十メートル先には小さな雑貨屋があった、みんなの意見など聞かず一目散に駆け寄ると店先にいた店員と会話を始めた。

 残された誄逹は幹菜の後を追って歩いて向かう。幹菜は店員が大袈裟に両手を使って円を作ったり、驚いたり、手を合わせた。

 幹菜の元に着いた時、よしわかったと満足顔で店員は店の奥に消えて行った。

 数分もしない内に店員は白い大きな袋を一つ抱えて出てくると目を輝かせた幹菜は財布を取り出し、会計を済ませて袋を受けとるとそのまま誄にパスした。

 不意に渡されたパスによって、思わず受け取ってしまったが直ぐに我に返って文句の一つでも言おうとするが既に誄の前には誰も居ず、次の店に向かって走っていく後ろ姿が誄の目に映った。

 幹菜のことを電車だと誄は例えたことがある。とにかく後ろなど振り返らず、猪突猛進に進み続ける様子を見てそう思ったそうだ。そして、もうひとつ決定的な理由がある。

 幹銘の本質は周りを巻き込み、一緒に行動させることだ。動力のない車両を連結して、引っ張っていく。

 幹菜には例外は無く、今回も全員をレールに乗せた。初めに乗ったのは阿奏だ。キョトンとしていたのは最初だけで、次の店からは一緒に楽しそうに談笑しながら買い物に参加し、買い終わった袋をご丁寧にも誄に渡して、他の店に駆けて行った。

 誄が驚いたことは、全員をレールに乗せたということだろう。要するに好乃々も巻き込んだのだ。三軒目の店に入ったと同時に好乃々にも話を振る、最初少し戸惑っていたが楽しそうに会話に参加して小さい熊の置物を購入していた。

 流石に買った物を誄にパスすることは無かったが、彼氏としての意地で荷物を無理やり受け取っていた。

 しかし、人間は二本しか腕は無い。次から次へと店を渡り歩く幹菜に誄は限界だった。

「幹菜……。俺も少しは遊びたいんだが」

 もう限界なことをやんわりと幹菜に訴えかけると、確かにと言った表情で少し思考した後携帯を取り出し、どこかにかける。

 要件が終わったのか携帯をしまって幹菜は言い放つ。

「それじゃあ、勝負しましょう」

 言い終わった後に、幹菜の後ろに黒いリムジンが止まった。

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