大変
「ちょっと落ち着いて」
悲鳴をあげた好乃々を落ち着かせるために誄は声をかける。ようやく落ち着いたのか、まだ荒い息を深呼吸して整える。
「人の顔を見て悲鳴をあげるなんて失礼ではないのかしら? 好乃々」
この世で一番の楽しみを味わっている時のような良い笑顔で非迎は好乃々に言った。
「病人にどっきりは良くないと思うのよね。寿命が縮むわ。それが狙いなのかもしれないけど」
嫌み半分と諦め半分の好乃々は話しを投げやりに返す。
「そういえば、最近この辺りが物騒なことは知ってるかい?」
好乃々の返答など無かったかのように非迎は話題を変え、ベッドから離れ保健医が座る席に腰掛けた。 誄と昨日の不良の一件を聞いてる阿奏は心当たりがあるため、お互い顔を見合わせた。
くすくすと楽しそうに非迎は笑いながら、見つめ合ってラブラブだなと冷やかす。誄と阿奏は慌て否定する間もなく、非迎は話を続ける。
「近頃、保健室に多くの人が運び込まれている。理由が事故とか不注意なら問題ないのだが、多くの原因は喧嘩だ。呆れることに喧嘩の理由は実に下らないものばかりなんだから本当に困る。どうやら学校中にストレスが溜まっているらしい。学校だけならまだいいのだが、現状ではこの町全体がストレスが溜まっているようでな。飲酒事故やら暴力事件が立て続けに起きている」
理由が事故でも困るがなと付け加えて言った。
「なんで、そんなこと」
阿奏は不思議そうに言った。なんの脈略もない非迎の発言に阿奏は困惑していた。
「それはどういう意味かな? どっちにしろ、答えは変わらないがな。内緒よ。この情報をどうするかはあなた達次第よ」
ちらりと保健室の時計を見た非迎は、昼食早く食べてないのでしょ。好乃々は大丈夫だから、食べに行きなさいと言って阿奏と誄を保健室から追い出す。
追い出された二人はお互い顔を見合わせて、無言のまま教室に戻り昼食を取った。二人には全く非迎の話が見えなかったのだ。
「なんだったのかな」
昼食を食べ終えた阿奏はそれだけぽつりと言って、誄はさぁと答えた時、授業開始のチャイムは鳴った。
放課後に誄は教室にいた。阿奏は用事があるからと先に帰ったため、教室には誄しかいない。
誄は窓の外を眺める。部活の練習に励む生徒たちが見えた。門には誰も立っていなかった。
「帰るかなぁ」
そう呟いて立ち上がると遠くから音が近付いてくる、その音が教室の前で止まると、教室のドアが勢い良く開いた。そこには肩を激しく上下させ、息も切れ切れな好乃々がいた。
「ねぇ……ラブラブなの?」
息を整えながら好乃々はそう言った。
好乃々に説明するのにかなり時間を要した。誄は焦りながらも、元気そうで良かったと心の中で思った。
頑張って書いたものの大変なことに
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