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結婚三日目で離縁?

私の優先順位はハッキリしている。

一番目は家族、二番目に領民。


幼くして母を亡くした私に、父と兄は愛情をかけて大切に育ててくれた。

その二人の優先順位は領民だ。


ならば私のすべきことはハッキリしている。

家族への恩返し。

事故物件だろうが公爵令息だ。

公爵家へ嫁ぐのは名誉なことだし、何よりお金が入る。


そう割り切って、望んだこの結婚。

クラレンス様は婚約後も無愛想だった。


しかし相手が無愛想まるだしだからといって、こちらも同じようにしては、同レベルになってしまう。

こちらはあくまでもにこやかに、礼儀作法正しくクラレンス様に接した。


そうすればそうするほど、クラレンス様は意固地に不機嫌さを貫くのだった。


嫁入りに際しては、実家からお付きのメイドを連れて来ることは可能で、メイド本人からの希望もあったが、丁寧に別れを告げた。


実家の負担を考えてのことでもあったし、付いてきてくれたメイドが嫁ぎ先で嫌な思いをするのは不憫だ。

実家に報告が行き、家族に心配をかけるおそれもあった。


やはり連れて来なくて正解だったと、公爵家の使用人たちの態度を目の当たりにして思った。


この者たちは使用人でありながら、私のことを見下している。

屋敷の主人であるクラレンス様がそうだから、同じように振る舞ってよいと思っている。


クラレンス様は注意しない。

見て見ぬふり、無関心。

それどころか、私の見えないところで彼らを煽っている可能性まである。


と思っていたけれど。


結婚初夜以来、三日ぶりに顔を合わせたクラレンス様が言った。


「君の好きにしていい。実家に帰るのも自由だ」


「どういう意味ですか……離縁なさりたいと?」


クラレンス様が自己中心的なのは学習済みだ。

しかし結婚して三日で別れたいとは、勝手すぎる。

意に介さない相手とはいえ、公爵家の面子を立てて娶ることにしたのだろうに。


そちらにはそちらの都合があるように、こちらにもこちらの都合がある。


「とても受け入れられません。私に何か落ち度があるのなら、おっしゃってください」


「いや、君には何の落ち度も……よくこんな男と結婚してくれたと思う。原因は私にある。慰謝料として、子爵家への毎月の援助金は変わらず送る」


びっくりして思わず絶句した。


「離縁しても、うちへ毎月の支援金を? 変わらない額を送ってくださると?」


「ああ、そのつもりだ。これは私の一存だが、これまでの浪費を抑えれば十分可能だ。財産を売っぱらってもいいしね」


へらっとニヒルな笑みを見せたクラレンス様は、まるで別人のようだ。


初夜のときも、書斎に引きこもっていた二日間も、ただの気まぐれかと思ったが、本気で心配したほうが良さそうだ。


「どうされたんです? 頭を打たれたとか、雷に打たれたとか……?」


いや、ここのところ天候は良かったはずだ。


ハハッとクラレンス様は乾いた笑い声を立てた。


「よっぽど、だな。このクラレンス・ヒドルストンがこんなことを言うのは、よほどおかしいかな。気にするな、金がほしいならやる。借金してでも払ってやるよ。ここを出て行って、好きなように生きるといい。どうせ先はないんだ」


それだけ言い放つと、クラレンス様はきびすを返して部屋を出て行った。


いったい何なの?



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