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愛された勇者  作者: 山口 颯
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プロローグ「愛してる」


俺は、なんと愚かなのだろうか。

なんと許し難いのだろうか。


横たわる女性の前で、幼い体の(わらべ)は膝を地につき唖然としていた。

自分への苛立ちや失望、相手への言葉にならない謝罪、そして心からの感謝。いくつもの心情がぐちゃぐちゃに掻き混ぜられて今の体が作られているかのような。


童からこぼれ落ちる様々な心情で作られた雫が、横たわる女性の手の甲に落ちた。彼女はその雫の意味を、複雑さをちゃんと理解していた。

彼女はこの世界に限りなく少ない彼の理解者であった。



そうだ、彼に伝えなければ。他の誰でもない私が。

彼女はそう決意し、重い口を開ける。



………ほら……泣かないで……私の愛しいライ……


………ごめん……ごめん‥‥許して……俺は……



僕は何度もチャンスがありながら

結局あなたを助けられなかった

どうにでも出来たのではないか

避けられる道は必ずあったはずだ

それなのに自分の選択が、あなたを



……ライ……泣かないで……自分を責めないで……


……そうだぞ……ダメじゃないか……を困らせたら…


ふと、童の横から男の声が聞こえた。

何度も何度も聞き慣れている声だ。


……おまえは立派なことをやっている……

……胸を張りなさい……


……そうよ…私はライを誇りに思ってる……



頼む。優しく語りかけるのはやめてくれ。

誰のせいでこうなったと思っているんだ。

もう…全てどうでもいいことなのかもしれない。

授かった使命も

長い年月の想いも

全てどうでもいいのではないか。


僕は、僕はもう…



……彼女のこと、頼んだわね……



ハッと、意識を戻される。

そうだ。僕は何を言っている。

彼女だけは、彼女だけはなんとしても“奴”から守らねば。

それだけは忘れてはならない。奴だけは。


だが

彼女さえ守れたならもう自分など、どうなろうと…



……ねぇ、ライ……



何だい?



……これだけは覚えておいて欲しい……



うん



……例え…どんなことが起こっても



……例え…どんな結末になろうとも



……これだけは忘れないで



童の前で横たわる女と、横に座る男が目を合わせ微笑みながらこちらを向いた。



……私はあなた達を……俺はおまえ達を……





「「 ◯◯◯◯ 」」 




その言葉を残し、目の前の愛しい女性は永遠の眠りについた。


その時、童は思う。


あぁこれで、楽になれた。


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