2話
「おはようございます、オリビアは今日も可愛いですね。その制服もとても似合ってます。そのままだと全人類が惚れる危うさがありますね、そうですね学校辞めましょうか!」
「辞めません!!!!」
これは今朝のやりとりだ。戻ってきてから毎日こんな感じで、正直調子が狂う。
——全く、一体何があってこうなったのかしら?
……なんて、公爵家すら分からないのに私が考えても答えなんて出るはずがない。それに、ルークのこの態度の変わりようは私にとってものすごく、ものすっごく、不都合があった。
実を言うと、私はルークと婚約破棄をする算段を立てていた。
元々険悪、最低限のエスコートのみの相手を誰が好きになれるだろうか?政略結婚というのに納得はしているが、やはり乙女。恋愛婚に憧れるのだ。
なのに、なのに、相手があたかも私のことを好きみたいに接されると非常に困る。
……ドキドキして意識してしまうからだ!!!
貴族の令嬢ならほとんどが恋愛経験値0。それに加え恋愛に憧れを抱いてる私は非常にチョロい。
このまま結婚して幸せになれるのだろうか?でも記憶が戻ったら?そう考えると、どうしてもルークと円満な仲を築きこれから一生付き合っていくと決断するには踏み切れない。
もちろん選択肢なんてないことは重々承知の上。記憶が戻る前のルークならば協力してくれると思っていたのにこれでは夢も希望もない。
ぐるぐるとする胸中で、私はこれから学園に行く。ルークが復帰してからは初登校だ。
……何も、起こらないといいけどな。
そんな思いで、私は馬車に揺られていた。