1話
時は遡ること数ヶ月前、私の婚約者であるルークは突然姿を消した、いつも学園へは一緒に行っていたため、迎えがなかったことを不審に思い手紙を出したことがきっかけだった。
「ルークが失踪した」そう聞いたのは手紙を出してから二日後の朝のことだった。もちろん動揺した、困惑や気まずさから学園に行けない日々が続いた。そんな私たちを不審に思った学園ではとある噂が流れた。
“ルーク・アンドリューは婚約者を捨てて市民の女と駆け落ちした”
駆け落ちしたという証拠はない。しかし、考えられる動機が他に思いつかなかった。火のないところに煙は立たぬというし、貴族の噂話の広がる速度は尋常じゃない。私は、駆け落ちされて捨てられた哀れな令嬢というレッテルを貼られた。
それからは捜索だの婚約破棄だの公爵家の跡取り問題だのとにかく色々あった。が、ルークは意外とすぐ見つかった。捜索期間は一ヶ月くらいだったろう。婚約破棄の話もなくなり、全てが元通りとなるはずだった。今まで通りの生活がまた始まると思ってた。
彼の、ルークの、私への対応が猫可愛がりしている恋人のように、激激激甘になったということを除けば。