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はて、ここはどこでしょう

 はて、と。

 男は己の身体を見下ろした。


 見慣れた真っ白なボサボサの長い髪、しばらく研究室に籠もっていたせいでよれてしまった白衣、そして、片手に持った冷めたコーヒー。


「………?」


 はて、と。

 男は周りを見回した。


 辺り一面の緑。いや違う、森だ。

 足元は踏み固められていないフワフワの土、周りに生い茂る多種多様な植物、背の高い木々から射し込む木漏れ日が男の血色の悪い真っ白な顔を柔らかに照らす。どこからか甲高い鳥の鳴き声がして、随分と久方ぶりの長閑な光景だとふわりと欠伸をこぼしながら思った。男は常に仕事と研究に追われていたので、このような目に優しい光景など数百年ぶりなのである。いや、冗談でなく。


「コーヒー」


 欠伸ついでに凝り固まった背筋を伸ばそうとして、まだ片手にコーヒーを持っていたことに気がつく。冷めてはいるが溢してしまうのはもったいないと、くるりと手首を回して空間魔法で作っておいた己の領域内へ飛ばす。もちろん一滴たりとも溢してなどいない。


 さて、コーヒーも仕舞ったしと、両腕を上へと伸ばした。


「んっ…」


 バキボキ、ゴキッと、明らかに人体から出てはいけない音が出ているが、男は気持ちよさそうに首をコキコキと傾げる。仕事気分が抜けたついでだと、もう一度クルリと手首を回した。男の白衣がきらりと一瞬煌めいてふわりと消える。

 特異な状況ではあるが問題なく魔法は使えるようだと男は安心した。半端な敵に負ける気はしないが、気を失っていた間に何か体に細工でもされていたらと思っていただけに、その心配もなさそうだとひとまず胸を撫で下ろす。


 一通り身体をほぐし終え、男はもう一度周囲にくまなく視線を送った。

 自分は確かに研究室にいたはずだ。コーヒーに白衣といういで立ちがそれを証拠付けている。


 前後左右、どこまで続いているのか分からない雄大な森林。植物は青々と枝葉を伸ばし、虫や小動物たちはその生態系の中で生き生きと己の生を享受している。一歩足を踏み出して、目の前に生えていた適当な植物に手を伸ばしてみた。カサリと乾いた音をたてた葉は、大きく瑞々しい。雨の少ない地域ではこうはいかない。


「大きく水分を多量に含む葉は、ここがそれなりに湿潤な気候だということを示している。この隣の植物は僕が知っているものとは少し形が違いますが、色形や周辺の植物が似ていることから類似した植物だといえますね。そうすると、植物に、いやこのあたりのものに魔力がほとんど含まれないことが気になります」


 研究者独特の早口で一人ごちる男は、癖のように自身の少し尖った耳を触った。チリと、細長いピアスが揺れた。んー、と唸って考え込む。普通の人間より細い瞳孔を収める眼球が、思考に合わせるようにキュルりと動く。長い前髪の隙間から木漏れ日に照らされ露わになった男の瞳は、空よりも深く海よりも明るい、目にも鮮やかな紺碧であった。


「さて、ここが温暖な気候で自然が豊かだという解は出ましたが、未だ疑問も多い。肝心の答えが無ければ…」


 この様子だと恐らく他の動植物も似て異なるのだろう。ならば動きつつどこか話を聞ける人物がいた方がいいと判断し腰を上げる。どっこいしょと声が出たが他に人はいないし問題ない。

 さてまずはどこに向かうかと顔を上げ、目が覚めたときからほぼ反射で張り巡らせていた魔力索敵の範囲を意図的に広げる。数多の情報がひしめき合う男の脳内に、周辺地図のようなものが浮かび上がった。もちろん周りから男を見たところでそこには何もない。視界に入るよう浮かび上がらせることも可能だが、特に誰かに見せるわけでも無いので脳内でのみ展開する。


「それにしても魔力濃度が薄い。範囲指定では厳しいですね。濃度指定に変更したほうがいいかな」


 男の索敵は主に周囲の魔力を持つものをポイントして地図を作る。それは盲目の生物が超音波を障害物に当ててマッピングする行為に似ており、しかし対象の含む魔力があまりにも低ければそれはほぼ透明で記されてしまい、そこには”何もない”と判断されてしまう。ならばより広くより狭く、より目を凝らすように索敵魔法の術式を変換していく。


「周りはほぼ森。この先に開けた場所はありますが、魔力を示すものはない…と」


 それが示すのはそこに生き物はいないということ。であれば他の場所を探すしかないが…男は木々に覆われた空を見上げた。体感的にはあまり感じないが、どうやら黄昏が近づいているらしい。木々の隙間からチラリと見えた空はうっすらと赤焼けていた。


「土地勘のない場所で下手に動き回っても仕方ありません」


 ため息を一つ吐いた男は取り合えず地図の開けた場所へ向かうことにした。野宿をするとしても遮蔽物がある場所よりはとの判断だ。

 歩き出す前に軽く腕を振り、手の平を上にしてほうっと息を吹きかける。ボッと、拳くらいの青白い火の玉が手の平に現れた。


 それは”冥界の業火”と呼ばれる、男や男と似たような者たちのみが顕現させることができる特別な炎だ。様々な効力を持っており、最も顕著な効果としては”命あるものが近づくことはできない”である。

 特筆して脅威となる者が周囲にいるわけではないが、常に何かを警戒するのも疲れるというもの。本来ならば別のもっとそれらしい使い方もあるものの、男はそれを便利だからと虫よけと同じように使っていた。その炎の貴重さを知る者からすればあまりに贅沢な使い方だと言えよう。まあ、それに突っ込む者も今はいないのだが。


 しばらく迷いのない歩みで歩き続けて、男はついに開けた場所へ出た。乱れた息を吐き、がさりと少々乱暴に眼前の枝葉を手で避け足を踏み出す。青白い炎は消した。

 道中、長い髪が何処かに引っ掛かったのか、元からボサボサだった髪がさらにボサボサだ。ところどころに小さな葉っぱがくっついている。


「ほんとに何もないですね…」


 若干気落ちする。

 未知の経験ばかりで、久しぶりに自身の索敵にも引っかからないほど高度な魔力操作が可能な相手でもいるのかと少し期待していたのである。


 それでもないものは仕方なし。そう諦めて男は空を見上げた。


「………っ」


 よく晴れた空だった。

 移動しているうちに夜の帳が下りたようで、森の中にぽつんと開けた草原から見上げる空には満天の星が輝いていた。澄み渡る空に散りばめられた星々が、まるでそれ一つの命が呼吸をするように瞬いている。


「星なんていつぶりに見たかな」


 男の故郷では、いつだって紫がかった灰色の重苦しい雲が空を覆っていた。男の故郷がある場所を考えれば、分厚い雲の先に青空が広がっているとは言い難い。


 男はふと肩の力を抜いた。開けた草原の中心まで歩き、予備動作もなくごろりと寝転んだ。

 美しい景色に特別興味があるわけではない。しかし、それでも数時間とはいえ見知らぬ土地で歩き回った疲労は溜まっている。

 だから少し、そう少しだけこの危険のない場所で、久方ぶりの星空観光も悪くないと思ったのだ。大の字に寝転んで、大空を胸に抱き大きく息を吐く。スゥと全身が弛緩すると共に、瞼がゆるゆると下がっていった。


「しかた、ありませんね。きょうはひさびさの休日です」


 舌足らずに誰に聞こえるわけでも無い言い訳を口にすると、ワーカホリック気味の真っ白な男はフッと意識を星空の海へと落とした。





 翌朝、男は違和感と共に目を覚ました。眩しいほどの日差しが、遮るものの無い草原に寝転ぶ男の顔に降り注いでいる。本来ならば、仕事の書類に囲まれていないという、この素晴らしい光景に微睡みもう少し惰眠を貪るところだがそういう訳にはいかぬ事情があった。

 ズシン、ズシンと臓腑に響く音が男を安眠の底から揺り起こしたからである。


「何か、来ますね」


 まだ眠気の覚めぬ男はグシグシと子供っぽい手つきで瞼を擦る。しかし昨日と同様、男は既に無意識の索敵を開始していた。精巧なマッピングには相手こそ分からぬものの、何某かがこの草原目指して男とは反対方向からやってくることがわかっている。

 さて鬼が出るか蛇が出るか。男はほのかに魔力反応のあるそれを静かに待った。


 ズシン…ズシン――


「あれは」


 くすんだ草色の体躯に爬虫類と同じようなごつごつした体表面。足は象の様な形で大きさは明らかに象以上。のんびりと草原を歩く姿から草食動物のようだが、その首は細く長い。周りの木々を優に超えるその首は、男より遥か上にある小さな頭を揺らし辺りを窺っているようだ。


「古代にああいった動物がいたことは知っていますが、まさか時間遡行でもしましたかね」


 男は半分本気、半分冗談で呟いた。

 その正体は蛇でも鬼でもない、大きさ、形、ともに故郷ではまるで見たことのない生き物であった。むしろ文献でしか見たことのない、太古の生き物にそっくりである。

 ここは未知の場所。命が惜しくばその生態や攻撃性などが分からぬ相手には触れないのが定石だ。男もそれは承知している。


 だが、それでも未知と神秘に心躍るのが男の研究者としてのサガ。

 気付けばその足元へと歩みを進めていた。

 徐々にその巨大な体躯の足下へと迫っていく。


「ふむ、近くで見るとさらに大きい。大きさとしては10メートルくらいでしょうか。僕に気づいてはいるんでしょうけど温厚ですね。…おや」


 首の長い草色の生き物は男に特に頓着しなかった。しばらく草原を眺めると、首を捻り背後に向かって”キュイィ”とひと鳴きした。それは超音波のようにあたりへ広がり、草原に響き渡った。

 すると、奥の木々に隠れていたのか同じように首が長く体が草色の、しかし目の前の個体よりも小柄な生き物たちがのそりのそりと次々に現れた。その数は5体。中くらいの大きさの個体が2体と、小さな恐らくまだ子供であろう個体が3体。


「キミは、群れの長だったんですね。群れのリーダーが偵察をしてから、危険がないと判断したら呼んで知らせる…とても賢い」


 彼らはゆっくりと歩いて草原の真ん中へやってくると、思い思いに過ごし始めた。一番大きな個体は体を休めるように草原へとその巨大な体を横たえる。中くらいの個体は周辺の草をもさもさと、その長い首を窮屈そうに曲げながら口に含んでいる。一番小さな子供たちは、キュイキュイと楽しそうな甲高い音を上げながら駆け回っていた。


「ふふ、一家団欒という訳ですね。未知の生態が気にならないわけではありませんが、家族の時間を邪魔するわけにもいきませんし、そろそろどなたか言葉が通じる人にも出会いたいですし動きますか」


 そっと草色の家族から離れて踵を返す。森に向かって歩きつつ、強い日差しを遮るように片手を額に翳した。雲一つない晴れ渡った空だった。しかし、奥の方にどんよりとした雨雲を見つける。これは急いで移動しなければと思う男がおもむろに足を踏み出した。

 

「さて、今日はどこにいきま」


――ギュイイイッ!!


 空気が軋む様な声であった。

 踏み出そうとした足を止め、背後を振り返る。


 首の長い生き物が何かを察し、まるで警戒音のように濁ったけたましい鳴き声を上げている。長い首を激しく動かし周囲を警戒し、小さな子供たちは我先にと来た道を戻り高い木々へとその身を隠している。中くらいの個体が後に続き、木々へと姿を隠した。その後に続くように巨大な個体が足を踏み出した時だった。


「これは」


 男が急いで張り直した索敵に、急速に接近してくる反応が一つ。それは高速で移動し、徐々にこの草原へと近づいている。正体は分からないが、それは空を飛んでいるらしい。

 次第に肉眼でもそれが確認できるようになる。


「ワイバーン……?」


 それはまるで一匹の嵐。

 黒光りする巨大な体躯に2対の羽を広げ、大空を滑空している。

 両翼に纏うは荒れ狂う風。

 不気味な鉤爪が、確実に草色の生き物を狙っていた。


――ギュルルッ!


 草色の生き物が激しい警戒音を喉からひねり出している。

 それはまるで、来るなと訴えているようであった。


 しかし自然界は無常で非情だ。

 弱肉強食を常とする世界で、鋭い牙も爪も持たぬ草食動物が、嵐を操り獰猛な鉤爪を振りかざすドラゴン相手にいかに戦えと言うのか。


――GYRRRAAAAA!!!

――ギュイイイッ!ギュッ!


 音か声か分からぬ獣の言語を放つワイバーンが、遂にその鋭利な爪を巨大な草食動物の肉体へと振りかざした。迫りくる凶爪に草食動物が前足を高く上げ威嚇するも、空からの攻撃ではそれも届かない。


 今まさに、一つの生と死が分かたれようという時、男は随分と冷めた瞳でその様子を見ていた。

 否、彼は観察していた。

 この世界における強者と弱者が決着づけられる瞬間を。

 



 だがそれは、第三者の登場で防がれる。


「ッフン!!」


 ギィィインッと、大気を震わせるほどの衝撃をもってその鋭利で凶暴な爪を止めたのは、真っ黒な刀身に揺らめく漆黒の魔力を纏わせた一振りの刀。


「…魔力の気配が全くしなかった」


 男が呟きわずかばかり細めた視線の先で、一人の漆黒の男がワイバーンから繰り出される爪を薙ぎ払っていた。虚を突かれたのは男だけではない。ワイバーンも草食動物も、第三者を予想できなかった。


「索敵は張り巡らせていたはずですが何故」


 男の興味は瞬時に刀を携えた漆黒の男に移った。

 視界の端では、一命をとりとめた草食動物がこれ幸いにと森へと逃げ込んでいた。恐らくすぐに家族共々どこかへ移動するだろう。


 だがそんなことよりも、男は漆黒の男がワイバーンと刃を交える姿をじっと見つめていた。


 黒い刀身を持つ刀を振るう体は、常人よりはよほどがっしりとしているが程よく引き締まっていた。力強さと言うよりもしなやかさに特化したような体つきである。今も、ワイバーンの爪を弾き返すというより、刀身に爪を流したと言ったほうが正しい。

 地面に着地したところを、標的を変えたワイバーンに狙われるがひらりと体の軸をずらして避ける。そして次の瞬間には反撃と言わんばかりに、飛び上がりワイバーンの眼前へと肉薄する。風圧でふわりと浮いた前髪から、鋭利な光を宿した黄金の瞳がちらりと覗く。

 

 その脚力、反射神経は明らかに人間離れしていて、まるで猫科の獣を見ているようであった。


「なるほど」


 漆黒の男は影のようにワイバーンに付かず離れずの距離を保ち攻撃を仕掛けている。そして、そのどれもが必殺の威力を持つ。だがそこに魔力で強化された気配はなく、純粋に筋肉から生み出される力であることはが分かった。


「つまり、彼は魔力なんて持ってないんですね」


 だから男の索敵には引っかからず、ここまで接近することができたのだ。さらに目の前の男の身のこなしから、足音や気配を消して獲物に近づくことなど朝飯前なのも納得できる。

 永い時を生き、もはや敵などいなかった男は研究と仕事くらいにしかその持て余す時間を捧げておらず、索敵も魔法頼りであったことは否めない。なるほど鍛錬不足かと一人マイペースに頷く。


 気になるとすれば刀の方だが、そちらも出力がオンオフしかない魔剣と似たようなものなのだろうとあたりをつけた。オフの時はただの鉄の塊、オンになれば周囲から魔力を吸い上げその刀身に纏わせるという武器は、魔力を持たぬ人間にとって実に便利な武器であるからだ。


「さて、せっかく言葉が通じそうな相手が向こうから来てくれましたし…ここはひとまずお任せして、終わるのを待ちましょうか」


 ほのほのと微笑んだ男は、目の前で繰り広げられる激しい戦いなど知らないように、そっと地面に腰を下ろし足を休める。

 ふと、ポツリポツリと男の真っ白な髪を小さな雨粒が濡らした。嵐を纏うワイバーンが連れてきた雨雲がすぐそこまで迫っていたのである。

 男はそれを見上げるでもなくパチンと指を鳴らした。次の瞬間には土砂降りになった草原で、微笑みを絶やさぬ純白の男の周りの地面だけは不思議と乾いていた。





 血生臭い吐息が顔にかかる。

 漆黒の男――レオは、雨でぬれる視界を拭いチッと舌打ちを零した。

 

 日ごろから仏頂面だとか不愛想だとか言われる顔――レオにとってはこれがデフォルトであるため失礼な話であるーーに、不機嫌だと言わんばかりの殺気を滲ませる。もはやどこかで人でも殺してきたのかと言われそうな雰囲気すらあるレオの殺気に、ワイバーンが触発された様に咆哮を上げた。


「うるせえ」


 人より敏感な耳が間近でワイバーンの咆哮を拾い、鼓膜がびりびりと揺れる。だがそれに屈するほど弱くはない。右手にだらりと構えた太刀を振り上げワイバーンの視覚を奪う。次に、いい加減空中でリーチをとられ続けることにも苛立ってきたため、返す刀で左翼の付け根に傷を入れる。硬い鱗1枚をかわして切り込む繊細な太刀筋であったが、上手く肉まで届いたようでレオの手には確かに筋肉の筋を絶った感触が伝わった。

 ワイバーンの体がガクリと傾く。重心が傾いたことでバランスをとりづらくなったワイバーンが、咄嗟に藻掻くような仕草をする。きっとそれは生き物の本能なのだろう。空中において落下しそうになった時に藁をもつかみたくなる気持ちは、人間もモンスターも同じらしい。


 落ちそうになり暴れるワイバーンの鉤爪をひらりと避け、その体躯をトッと蹴って離れた位置で地面に着地する。その動作に危なげはない。明らかに並大抵の人間ではできない妙技であったが、本人が余裕すら感じさせる(てい)で立っている為どこか簡単そうにすら見えた。


――Grrrrr…


 レオは気怠そうに目の前に落下したワイバーンを流し見た。警戒するように喉を鳴らし、いつレオに飛び掛かろうかとその鉤爪を光らせている。

 だがその巨大な体躯には、今や大なり小なりの刀傷が刻まれ、鮮血が地面を濡らしている。青々とした地面にボタボタとワイバーンの血が滴り落ちては、大粒の雨が洗い流していた。


 決着がつくのは時間の差だろう。


「…」


 それよりも、と。

 レオは髪をかき上げたついでに、背後で微動だにしない視線を感じてまた舌打ちをした。


 感じる。

 胃を持ち上げるような得体の知れない何かを。

 あの、純白の男から。


――Grr…GG、GYAAAA!!

「ッチ、こっちが先か」


 意識を目の前に引き戻し、最後の力を振り絞り立ち向かって来る手負いのワイバーンへと向き直った。濡れた視界にぬかるんだ地面とコンディションは最悪だが、レオは己の勝利を疑わない。彼が纏う覇気に応えるように、刀身を覆う黒い靄は激しく渦巻き、その切れ味は一層冴える。


 次が最後の一刀になるだろう。

 大口を開け牙を剥き出しにして飛び掛かってくる手負いのモンスターに、漆黒の太刀がギラリと一閃煌めいた。

初めまして!

古野拙です。なろうでの投稿は初めてなので暖かい目で見守っていただけたらと思います。

これからよろしくお願いします。


レオは出てきましたが、肝心のもう一人の主人公は名前すら出ないという…

むしろあらすじの方にしっかり名前でちゃってるという…

次、きっとでてきますから…


(あらすじって難しいですね苦笑)

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