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 名乗ったあと、弟は怖い人と神経質そうな人に、さんざん怒られてた。

 やれ、そこまで信頼できなかったのかー、とか。

 水臭いとか、バカとか。

 時々いなくなるのは向こうに戻っていたってことか、とか。

 なんか、ニホン捜索隊まであったらしくて、そこもいらなかったじゃないかとか。

 ほかにもたくさん怒られてたけど、よく分かんなかったから、そっとしておいてクッキー食べてた。素朴な味。


「そちらの世界で魔法がないのが不思議なくらいですね、あなたの魔力もとても多い」

「まりょく」


 くるっとこちらを向いた神経質そうな人が言う。

 そんなものはない。というか、わからないので困ってしまう。


「レイド、それ本当に?」

「そうですね。そちらの世界の人はみんな、ですか?それとも、ミヤの姉上だからなのか」

「いや、あっちに戻ってるとき誰からも魔力は感じられなかった」

「それは自分のものも?それとも、」

「詩音でいいです。魔力あっても、日本じゃ使えないから、別になんでもいいです」


 なんか、グイグイ来る感じが、新しいスイーツ見たときの店長みたいだ。こういう人には、はっきりと断っておかないとあとが大変だ。


「もったいない!正しく使えば、とても大きなことを成し遂げられるんですよ?シオン、あなたもこちらで暮らすべきだ」

「あり得ない!!」


 ものすごい損だって言う感じで言われる、そう、食べ放題でスイーツ全制覇できなかったときの店長みたいに。

 慌てて立ち上がって、手で大きくバツを作る。


「こっちの世界で過ごすなんて、絶対絶対ありえません!」

「どうして!」

「だって、素朴な味しかないんだもの!」

「素朴な、()?」

 

 何を言われているかわからないようなみなさんに向かって、弟が説明をしてくれる。


「姉さんは、パティシエっていう、甘いお菓子を作る職人なんだよ。だから、ここの甘味じゃ満足いかないと思う。それに、レイド、見ててほしいんだけど」


 弟が手のひらをくるんってすると、そこにはグラスが握られていた。なにそれすごい。


「はい、ここに水を入れられると思ってやってみて」

「は?いやむり!」

「そうだね、空気中の水蒸気を集める感じで」

「いや、水蒸気って集まらない」


 なんかそういうの、中学か高校で習ったけど、わからない。ぐって力を込めとって言われて、グラスに向かってんーってやってみるけど、なんともならない。


「信じられない」

「ね、分かった?」

「信じられない無駄!本当にミヤの姉なのか?」

「正真正銘、姉だよ」

「そんな、こんなに魔力の無駄遣いをするなんて」

「理論がわかって、その上で想像しないと難しいみたい。だから、化学が苦手な姉さんには難しいと思って」

「理科とかの問題でもなかった」


 なんかもっと難しそうな話だった。姉さんは高校で習ってたよねって感じの顔されたけど、シラネ。そんな記憶は、もうない。


「つまり、そういうこと。たとえ姉さんに魔力があっても、魔術が使えないこともある。それに、姉さんにはあちらにやりたいことがあるから、こっちで過ごす意味もない」


 たしかに。全く知らない場所だから、なんか旅行みたいでワクワクするけど、話を聞いていると物騒だし。

 弟みたいにこちらでなにかするとか、生活するとか、考えられない。


 弟の考え方だと、魔力の使い方を分かっていて、こちらでやることがあるっていうことか。


「あれ、じゃあ私のこの連休の予定って、意味なかったじゃん」


 この連休の目標は、成人の写真を撮るっていう話をして、スーツを仕立てること。それで、社会に出られる一歩になればいいと思ったけど、なんかこっちに生活基盤ができてるってことか。それなら、必要ない。

 そういう大事なことは、ちゃんと話しておいてくれてると良かったなぁ。

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