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第五十話 魔王

熱くなれるように頑張ったのですが、、、どうでしょうか、、、。

 ──星がよく見える澄んだ空の夜、『魔の森』と呼ばれる大森林に、禍々しい一つの閃光が天に上り、光の柱を作り出した。

 光の柱が消えれば、そこに現れた一つの影から生物の内に眠る恐怖を呼び起こす様な、禍々しい声が響き渡った。

 その(ぬし)はこう言った。


 「フハハハハハハハァ!! 私は蘇った!! さあ! 私に恐怖と絶望を!!」


 空気は揺らぎ、時空は犇めく。

 そよ風は暴風に、緩やかに流れる川の潺は濁流の轟音に。

 付近の樹木は吹き飛び、遠くの樹木はその身に着いた葉を落とす。

 付近の街、王都にいた人間は目を覚まし、今という状況に恐怖、絶望を感じない事など出来なかった。


 「いいぞ、いいぞ! 力が満ちていく!!」

 「、、、これが魔王、、、か。」


 ──そんな中、俺は魔王を名乗った主を見て呟いた。


 揺らめく白い炎。

 それが体となり、顔であろうパーツには濁った銀色をする山なりに折れた様な平たい鉄仮面が装着されていた。

 それは、冒険者ギルドで耳にした『恐怖の象徴』とやらにとても似ていた。

 まあ、それは当然なのだろう。

 何故なら、その『恐怖の象徴』というのは──『魔王の仮面』の事なのだから。


 霊体の様に宙にフヨフヨと浮かび、ただそこに存在するだけで威圧を感じる。


 「ハハハハハハ!! ん? 貴様、、、何故絶望していない?」


 俺を見て魔王が言う。

 トリセは既に倒れ伏せている。


 「絶望? そんなものある訳ないだろ。」

 「何?」

 「この世界救う救世主(セイバー)が、魔王なんかにビビッてどうすんだよ。」


 俺がそう言うと、此方を一瞥する魔王。

 そして、空間を取り巻く魔力をその手元に集める。

 (この世界では)魔力は形を持たず、目に見えない。

 だが目の前には、魔力が円形に気流を現し、球場に固まっていっている。


 魔力の塊は、徐々に巨大化していき、その大きさは、俺の目の前に相対する魔王のおよそ二倍。

 魔王が空気中から魔力の供給を止めると、その場には球体上に気流を作り続ける魔力の塊が残る。

 そして、何やら発光を始める。

 白紫の光を放ちながらその場に止まる魔力。

 手の上で魔力を発光させながら魔王が言った。


 「悪いが、この世を救う事は出来ない。何故なら、貴様にはここで死んでもらうからな、、、!」


 次の瞬間、その手を此方へと勢い付けて振る。

 するとこちらに魔力の塊が飛んでくる。


 レンさんに聞いた話、魔力そのものに殺傷力はないが、人為的に手を加えると殺傷力を持つらしい。

 そして、それは一センチ程度の球体にしただけで、人体に大きな風穴を開けてしまうらしい。


 それを、魔王は約200倍以上にして俺に打ち込んできたのだ。

 だが、俺はそれを避ける事はしない。

 《空間収納》に手を入れ、《守護の防剣》を取り出し構える。


 魔力は既に目の前に迫っている。


 それを前に俺は、《守護の防剣》を一振りする。

 その時に丁度魔力が《守護の防剣》の刃に当たる。

 するとどうだろう。

 俺に迫っていた魔力は、俺を避ける様に後方にすっ飛んでいき、轟音を響かせる。

 それと同時、頭の中に無機質な声が響く。


 ──《ピピ──《守護の防剣》による【パリイ】に成功しました。》


 ふむ、実際は叩き切ろうと思っていたんだが、、、まあ、結果オーライだ。


 俺は魔王を睨み据える。

 すると、魔王は「ほう」と感嘆の声をこぼす。


 「あれを受け流すか。確かに、救世主(セイバー)というのは間違ってはいないようだな。」


 そう言うと、更に数十の魔力の塊を作る魔王。

 先程の現象が目の前で何回と繰り返され、魔王が、揺らぐ体を動かしてそれらを一斉に放ってくる。

 魔力の塊は全て、俺に標準を合わせてあるように、次々と迫ってくる。

 さすがにこの数は、《守護の防剣》で防げる様な物では無い。

 ならどうするか?

 決まっている。


 経験値にしてしまおう。


 俺は《守護の防剣》を持つ手とは逆の手を突き出す。

 そして、一言、口を動かした。


 「──《貪食之皇(ボラシティー)》!」


 瞬間、空間中に無数のブラックホールが現れる。

 それらは全て、30cm程度の大きさだ。

 だが、それらの大きさに意味はない。

 何故なら、対象がどんな大きさであろうと──


 「っな!?」


 ──構わず貪り食うのだから。


 刹那、目の前に存在していた魔力の塊は一瞬の内に消え失せる。

 そして、俺の頭には無機質な声が流れる。


 ──《ピピ──スキル、《貪食之皇(ボラシティー)》により、『魔力凝固』を捕食しました。》

 ──《ピピ──スキル、《貪食之皇(ボラシティー)》の効果により、スキル、《凝固》を手に入れました。》

 ──《ピピ──スキル、《貪食之皇(ボラシティー)》の効果により、経験値を獲得しました。》

 ──《ピピ──称号『異世界人』の効果、成長速度所の上昇により、経験値量が2倍になります。》

 ──《ピピ──Lvが上がります。救世主:闇山 光里のLvが65329→78200に上がりました。》


 俺はそれを聞き届けると、剣を持ち替える。

 《神威の魔剣》。

 剣身から深紅の魔力の粒子を放ち、柄の部分は紫の魔力で形成している。

 俺はグリップを握り締めると、屈みこみ、勢いよく地面を蹴る。

 すると、一気に魔王と同じ高さまで跳躍する。


 「よっ。」


 俺は軽く挨拶の様な物を残し、横方向に剣を振り抜く。

 そして、魔王の肩口にかかると──魔王の体をすり抜けていく。


 「ちっ、やっぱり実体がないのか。」


 俺は悪態をつくと、魔王と距離を置く。

 当然魔王は動かない。

 何せ、俺を恐れる必要が無いのだから。


 「ハハハハ! 奇怪な技を使った貴様にビクビクしていれば、その必要もないな。」


 そう言うと、魔王は天に隙間なく魔方陣を作り始める。

 そして、所かまわず魔法を放ちまくる。

 それは、俺に焦点を定めている訳でも無い、ただの撃ちっ放しだった。


 地に魔法が降り注ぎ、破壊をもたらしている。


 俺は、今更ながら魔王のステータスを確認する。


 ──《ピピ──スキル《叡智の神眼》発動》


 種族:魔王

 名:グラッジ・イーター

 Lv:102346₋

 MP:10003265646978962001300‐

 HP:204600012130000046546850‐

 身体速度:126468791000003453₋

 反射速度:1000258846662000315₋

 魔法耐性:――

 物理耐性:――

 スキル:《理外攻撃》《魔力操作》《黒魔法》《破壊魔法》《理外魔法》

 固有スキル:《煙体無効》《体形変化》《生成》

 称号:『恨む者』『残虐者』『破壊者』『魔王』


 俺はそのステータスに目を見張る。

 だが、そんな余裕はなかった。

 俺はすんでの所で、《結界魔法》で国全体を囲む。


 そして、魔王に対し、突っ込んでいく。


 俺の攻撃は全てすり抜けていく。

 が、魔王もそれが鬱陶しく感じたのか、その手を剣の形に変え、反撃に出てくる。

 だが、俺は《守護の防剣》を取り出し、魔王攻撃を【パリイ】する。

 魔王もそれが気に食わないようで、右手だけだったはずが左手まで剣の形に変え、攻撃をしてくる。

 だが、俺もその両方で繰り出される全ての攻撃をパリイする。


 そして、次の瞬間、周囲に魔法陣が所狭しと浮かび上がり、俺に魔法を放ってくる。

 俺は、その魔法の雨を避け、後ろへ下がる。


 だが、俺が想定していない事が起きた。


 ──ピシッ!


 どこからか、何かに亀裂の入るような音が聞こえた。

 俺が音のした方を見ると、そこには、魔王が封印されていた石があった。

 それがピシピシと罅を広げているのだ。


 次の瞬間、その石が砕け散る。


 砕けた石の中から現れたのは、東京ドームよりも大きいのではないかと言う程の、巨大な大地。

 そして、その上に聳え立つは、禍々しいオーラを放つ巨大な城。

 更には、砕けた石の中から無数の魔物達が溢れる様に出てくる。

 それは、【魔物大行進(スタンピード)】の比ではない。

 その数は数万を超えているだろう。


 「ハハハハハハ!!」


 魔王が笑いだす。


 「これは貴様にも防ぎきれまい!!」


 魔王が俺にそう言ってくる。

 それに俺は、しっかりとこう答えた。


 「NOだ!」


 俺は、《魔力断罪》というスキルを発動させた。

 これは、自分よりもLvの低い魔物を一気に滅する、強力なスキルだ。

 とはいえ、数などに指定があるのかまでは知らないがどうだろうか?


 そう危惧していたのだが、、、。


 次の瞬間、そこは血の海に変わっていた。

 あれ程いた筈の魔物が全て絶命し、残ったのは、大地、城、魔王、俺だけだった。


 魔王はその事に少しの戸惑いを見せるが、次の瞬間には、城の天辺(てっぺん)にフヨフヨと浮いている。

 そして、その両腕を広げると、一言、大きく叫んだ。


 「《時空間移動》!!」


 瞬間、空間に亀裂が入る。

 その亀裂はどんどんと広がっていき、城を超えるほどの大きさになったところでついに空間が砕け散る。

 中には、うねる紫色の煙が広がっており、それ以外には何も見えない。

 だが、次の瞬間にその煙は渦を巻き、その渦の中心を広げ空洞を作っていく。


 そして、それが完全に開くと、その先に見えた景色は──


 「嘘、だろ、、、!」


 ──日本だった。

 それも、俺が暮らすエリアだ。


 魔王は高笑いを轟かせ、その城ごと空洞の中に入っていく。

 そして、完全に向こう側へ移ると、時が戻されるように、割れた空間の破片がくっ付いていき元の景色に戻る。

 俺は、それを見て、急いで《異世界の扉》を開いた。


 そして──


 ──星の煌めく澄んだ夜に、突然、ガラスの割れる様な甲高い騒音が響いた。

 そして、数多くの者が、ありえない物を目にした。


 この世の物とは思えない、巨大な城、そしてその上に浮かぶ、白銀の炎。


 そしてその炎は言った。


 「フハハハハハハハ!!! 今日から私がこの世界の支配者だ!!」


 それを見て、彼女、小鳥遊 遊離(たかなし ゆうり)はその場に尻をついた。

 コンビニへ飲み物を買いに行き、帰る途中であんな物が現れれば誰でもそうなるだろう。

 それも、その炎は、恐怖心を煽る様な威圧感があったのだ。


 遊離は、恐怖で立てず、只々そこに座り込んでいた。


 そして、不運にもその炎は遊離を発見した。


 そうすれば、既に蛇に睨まれた蛙の如く、逃げなければと言う意思すらも消え失せ、只々恐怖に震えていた。

 炎が近付いて来る。

 遊離は死を覚悟した。

 炎も、その恐怖を味わいながらジリジリと寄ってくる。


 そして、炎と遊離との間には、既に軽自動車が入る程のスペースもない。


 遊離は既に生の希望を手離し、もはや、何かを考える事すらも出来なくなっていた。

 走馬灯すらも廻らない。

 そう、只々死を待った。


 だが、次の瞬間、閃光が走った。


 遊離と炎の間に、閃光が生まれ、何か、渦を巻いていく。

 炎はその現象に、身を引き、距離をとる。

 そして次の瞬間だった。


 遊離は信じられない物をその目に映した。


 そこには、漆黒を纏った自身の友人──


 ──そこには、救世主である、光里の姿があった。


 「さて、お前には元の世界に帰ってもら、、、いや消えてもらうぞ。」


 こうして──


 ──世界の改変が始まった。

救世主(光里)よ、その能力(ちから)で、敵を討て──。

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