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第四十九話 クソ野郎

 ──深夜も更けようと言うとき、俺は異世界の『魔の森』と呼ばれる森林の入り口に来ていた。

 プリスは寝てしまったので、家に置いてきた。

 森の前にはまだ頭に包帯を巻いた状態のトリセが立っていた。

 俺はトリセを見つけるとそこまで走って向かう。


 「悪いな、待ったか?」

 「いいえ、大丈夫です。それじゃあ行きましょう。」


 少しやつれた様な声を出すトリセの背中を追いかけて、俺は森の中へと入っていく。

 中に入ると、魔力が充満しているのか少し空気が重たく感じる。

 それに、最近感じていなかった魔物の気配を感じる。

 コルネアでお世話になっていた時に感じていた気配だ。

 まあ、少し弱いが、、、。

 ともかく、何故こんな場所を選んだのかは知りたいところだが、目的の場所が何処なのかを知りたい。


 俺はトリセに地図を借りる。


 目的の場所まではもう少し歩かないといけないらしい。


 「、、、何でこんな時間に、、、。」


 俺は森を眺めて小さくつぶやく。

 暗い。

 そのため足元が見ずらい。


 俺は只々トリセに付いて行くが、トリセは道を把握しているのだろうか、、、?

 そんな疑問を抱くが、その疑問を頭を振ってかき消す。


 魔物に襲われる事なく順調に進んでいくと、少し開けた場所に出る。

 大体、一軒家が二軒経っても大丈夫なくらいだろうか、、、?

 その中心部分には、細い紙が貼られまくった大きめの石があり、その石の後ろに、トリセが言っていたようにブラクが立っていた。


 月明かりによりできた木陰の下に立ち、俺達の方を向く。


 すると、ゆっくりと足を前に出して近付いて来るブラク。

 月明かりの下に出て、しっかりと顔が見える様になると口を開く。


 「やあ、この時間、ここに来たってことは君たちが薬草を取って来てくれたのかな?」

 「、、、は、はい。」


 ブラクの問いに答えたのはトリセだ。

 少し上ずった声で返している所を見るに、緊張しているのだろう。

 好きな相手が目の前にいるのだ、当然緊張するだろう。


 ただ、相手であるブラクは、ずっと精巧に作られた笑顔を張り付けて突っ立っているだけだ。

 相手の事など考えていないだろう。

 こんな奴のどこが、、、。

 ん? 笑顔?


 この依頼は、父親である現国王の急な病を治すための依頼だったよな?

 なのに、焦る素振りも見せず、それ所が平然としたように今という時間を満喫しているようだ。


 、、、おかしい。


 何が、という明確な部分までは掴めないが、何か嫌な予感がする。


 「それで、何本位採れたかな?」

 「ええと、十本程、、、。」

 「そっか、、、上出来だよ。じゃあ、渡してもらえる?」


 そう言いながらトリセに近寄るブラク。

 そして、その歩みに同調し、引かれるように歩き出すトリセ。


 何がおかしい?

 分からない。

 だが、ここで動かなければ、多分この先に待っている結末は──BADEND。


 「っ! ミツリ、さん、、、?」


 俺は急いでブラクとトリセの間に入り込んで、トリセからポーチを受け取ってブラクに投げ渡す。


 「ちょっ!」


 トリセが声を漏らすが、今は構っていられない。

 俺を見るブラクの眼は、完全に人の物では無かったからだ。

 受け取ったポーチから《氷花》を取り出すと、溜息と同時にそのポーチを地面に捨てる。

 その顔に張り付いていた笑みが、完全に消え失せる。

 代わりに覗くのは、この世の物とは思えない、この世の負が全て詰め込まれたような醜く歪んだ顔だった。


 「あー、バレたか、、、お前、堪良いなー。ま、そんなんどうでもいいけどさ。」

 「、、、どういう意味だ?」

 「、、、どうせ今から、そいつ以上の上物を一杯贄に出来るんだからなあ!」

 「贄?」


 突如として口調の変わったブラクの言葉に首を傾げる。

 すると高笑いを上げながら俺の質問に答えを返す。


 「グヒャヒャヒャヒャヒャ!! これから目覚める、最低最悪の魔王様の贄だよお!!」

 「、、、ブラク、、、様?」


 トリセが俺の背中越しに声を漏らす。

 俺はトリセが聞きたがっているだろう事を質問する。


 「なんでそんな事を?」

 「あ? 決まってんだろ、この世界が憎いからだよ!」


 この世界が憎い。

 そんな事があるだろうか?

 確かに、俺は此奴の思ったこと考えたことなんてわからない。

 だが、俺はこの世界を私欲で崩壊させてはいけないと、そう何かに告げられる感じがする。


 「この世界のやつらは、どうせ次代の王にはなれもしねえ俺に危ない行動は慎めだのなんだのと、意味もねえ知識ばっか叩き込みやがってよお、だって言うのに俺の言う事は何も聞き入れやしねえ、なあ、何かに縛られて生きるってのは、クソみてえな人生だぜ? なのに、王族ってだけで周りからは羨み、妬みの対象にされて、、、なにが幸せだ、クソがっ!」


 淡々と毒を吐き捨てていくブラク。

 その様に耐えかねたのだろう、トリセが俺の背後から飛び出していく。

 俺はその腕を掴んで引き留めるが、そのまま質問をする。


 「それは、第一王子様の、オーネン様を、、、あなたのお兄さんをなくしたから──」

 「あ? 何言ってんだ? あれやったのは俺だぞ?」


 途端、トリセの体の力が一気に抜ける。


 「あいつ、無駄に正義感つええし、暑苦しいから魔物に襲わせて殺したんだよ。」

 「魔物に、、、襲わせた?」

 「ああ、魔物挑発剤を回復薬だと思ってガバガバ飲んでる姿は爆笑もんだったぜ!」


 そう言うと思い出したように高笑いを上げる。

 トリセはその言葉に、膝から崩れ落ちていく。


 クソ野郎。


 「ハーア、ま、そこで大人しく魔王様の贄にでもなってろ。」


 笑い終えると、そう言いながら《氷花》を石の上に掲げる。


 「こいつは万病を治す。ただな、有名な呪いの花でもあるんだよ! この花の力によって、魔王の封印を解く!!」


 そう言いながら、その花を石の上に落とす。

 すると、禍々しいオーラが漏れだす。


 こいつは、とんでもないクソ野郎だ。


 だが、クソ野郎って言うのは──


 「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、、、あん?」


 ──最期を華やかに飾れず、なにも成し遂げれず、ただ私欲を振りかざす奴の事を言う。

 つまり、此奴だ。


 「あが!!? ウぎ、ウギヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!! 腕が、、、俺の腕がああ!!」


 途轍もない閃光が天高く伸び、禍々しいオーラが伝わってくる。

 そして、ブラクはその閃光に腕を飲まれ、一人悶絶の声を上げる。

 次の瞬間には、一層強まる閃光に飲み込まれていく。


 「何故! なぜ俺が、俺が、ガァアアアアアアアアアアアアアアアアア──!!!!」


 見るも無残に塵へと変えられたブラクを見届けて、トリセが震える。


 「また、また何もできなかった、、、。」

 「、、、」

 「、、、好きな人の為にも、、、自分の生まれた故郷の為にも、、、。」


 俺は閃光を見上げながらトリセに声をかける。


 「別に、何もできなくていいんじゃないか?」

 「、、、え、、、?」

 「どうせ、お前が何をしようが、どっかで死んでいようが、世界は回るんだよ。何だったら、お前が此処で息をして生きていようが世界はお前の事なんか気にしてないんだよ。」

 「、、、」

 「だけどな、一つだけ言わせろ。」

 「、、、」


 トリセが涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら俺の方を向く。

 俺はそれを感じ取り、肩越しに背後を見て続ける。


 「生きろ。」


 俺は至極単純で、最も難しい世界の理を口にする。


 「死んだところで世界は回る。だけどな、生きてないと世界が回ってることも解んないし、それ所が、回ってる世界で自分のしたい事も出来ない。」

 「、、、」

 「だから、生きて自分のしたい事をしろ。出来ない事ばっか悔やむな。」


 俺は今トリセにかけてやれる言葉の全てを此処で紡ぐ。


 「出来ないこと、やりたくない事は誰かに任せればいいんだよ。」

 「、、、」

 「だから──」


 ──だから


 「だから、今回は俺が世界救ってやるよ。お前の代わりにな。」


 俺が全てを言い終えると、閃光の中から一体の影が出てくる。

 そして、その影は言った。


 「我は魔王、魔王グラッジである! 我が前に跪け!!」


 こうして、俺のこの世界での最後の戦いが幕を上げたのだった。

魔王復活。

そして──この世界での最後の戦いが始まる。

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