第四十四話 新しい生活
──「おー!!ここが、、、異世界!!」
俺の部屋を一望すると、プリスがそんな事を叫ぶ。
いや、まあそれに変わりはないが、、、未だほんの一端でしかないのにここまで声を大きくする事は無いだろう。
「一応そうだが、、、特に変わりない部屋だろ?」
「いいえ!元の世界から比べれば、、、それはもうかけ離れた、、、というか、何故ミツリさんはあっちの世界でも平然としていたんです?」
「ん?あー、なんというか、この世界の昔にあった様式に似てる感じだったんでな、、、。」
中世ヨーロッパ風。
要するに、違いはあれど特にかけ離れた違いはない。
確かにそう考えると、あっちから初めてこっちの世界を見ればこんな反応にもなるのか。
「そーだったんですか!」
「ああ。」
俺はプリスの言葉にそう返すと、時計を見る。
すると既に時刻は19:30。
今日の夜ご飯は何にしようか、、、?
買い物にでも行こうかな。
「これから夜ご飯の買い出しに行くんだが、お前も来るか?」
「はい!もちろんです!!」
俺の問いに元気よくそう答えるプリス。
なんだか、こうしてみていると、、、昔の朱梨を思い出して、涙が、、、。
「ど、どうしたですか?どこか痛いです?」
困ったような声でそう言ってくるプリス。
俺は涙を拭きとり、プリスに言う。
「じゃあ、行くか!」
気持ちを入れ替え、さあ、シュッパーツ!
「おおー!これが異世界!!」
「、、、今日はカレーでも作ろうかな。」
「かれー?」
「そう。カレー」
異世界にカレーライスという存在は無いのかもしれない。
偶には自分でカレーライスというのも悪くはない。
こう見えても、料理は得意な方だ。
まあ、2・3ヶ月位一人で生活してれば、それが普通だよな。
というか、もうそろそろバイトも始めたいのだが、、、どうしようか。
「必要な材料は、ニンジンと、玉ねぎ、鶏肉、、、ジャガイモ、、、」
俺は野菜を次々に籠の中へ放り込んでいく。
その姿を興味津々と言った風にプリスが除きこんでいる。
「これはなんですか?それも!」
「ん?これはニンジンって言う野菜だ。こっちはジャガイモ。」
「ほえー!すごいです!新しい発見がいっぱいです!!」
俺の答えにそんな事を言うプリス。
ふむ、確かに、初めて見る物に興味を示すのも無理はないだろう。
俺はそれを見て微笑むと、ルーが売られている場所へ足を運ぶ。
どのルーがいいか、、、。
一番は、、、甘口か、、、?
いやでも、、、。
ええい、両方買っちまえ!
ガサッと二箱のカレールーを籠に入れる。
育児って大変なのかもな。
──「さあ、食え!」
俺は、かえって来て早々、カレーを作りプリスに提供する。
すると、プリスは目を輝かせ、その手にスプーンを握り締めている。
そうして、「いただきます!」と叫ぶように言うと、そのスプーンの先をカレーライスに差し込み、掬い上げる。
そして口にカレーを運ぶと同時、瞳の輝きは更に強くなる。
「うっっっまーーーい!な、何ですこれ!食べた事が無いくらい美味しいですよ!!」
「まあ、あっちの世界にないんだから食べた事ないだろうな。」
目を輝かせてはしゃぐプリスに俺は苦笑いでそう返す。
「早く食べ終わらせろよ。」
「はい!!」
俺の言葉に頷くと、がつがつと口にカレーを掻っ込むプリス。
俺はそれを見ながら明日の事を考える。
(こいつ、学校行ってる間どうしよう。)
大人しく、、、出来るか?
「明日は、俺はこの世界で学校に行ってから、あっちの世界へ行っている訳なんだが、、、お前はどうする?」
「えー、、、そうですねー、、、あ、じゃあ一緒に!」
「ダメに決まってるだろう。」
俺は名案を思い付いた様な顔のプリスにそう一言。
まあ、無理な話だ。
「、、、留守番は出来るか?」
俺は極論を出す。
すると、何を思ったのか、少し不安になるほど元気な声で大きな返事を返してくれるプリス。
俺は少し嫌な予感を抱きつつ、明日を待つことにするのだった。
──結果、家の中がめちゃくちゃになっていた。
俺は、プリスに説教をした後異世界へと足を踏み入れ、また冒険者として活動を続けた。
そんな生活が2・3ヶ月程続いたある日、それは起こった。
俺はトロルに呼び出されていた。
「、、、」
仰々しく深刻そうなオーラを纏い、俺に一言。
「、、、頼みたいことがある。トリセを助けに行って欲しい。」
そんな依頼を受け、俺は、この世で最も恐れられている氷雪山へと足を踏み入れる事になるのだった。
トリセに何があったのか──。




