第三十八話 討伐出立
──「やあ!今日も来てくれたのかい!」
そう声をかけてくれたのは、二十歳位の優しい顔立ちをしたハンサム兄さんだった。
右目にモノクル、クリーム色の癖毛、白衣の上に胸元までのローブ。
聞けばわかるだろう、そう、彼は錬金術師である。
なぜ俺が最近彼にお世話になっているのか、それは、俺がある依頼を受けた時に錬金術の有用さに気付いたからだ。
「いやー、でも鉱石採取の依頼で錬金術が必要だなんてねー!」
「はは、まあ、石は脆くして中の鉱物を中で固める。そして石部分を破壊して中身を取り出す、、、こんな便利なものはないと思って。」
「そうかそうか!錬金術を必要とされるのはいい事だ!」
彼の名前はレンさん。
俺が鉱石を採取しているときに横の草むらでずっと鉱物を取り出していた、いわば変人だ。
そんな彼のもとに通う理由は──
「今日はどんな『ポーション』が必要かな?」
そう、ポーションだ。
ここへは錬金術を習うために来ようと思っていたのだが、周りを見て気付いたことがある。
周囲の冒険者は、倒した魔物の素材を持って帰ってきているのにもかかわらず、俺は討伐証明部位しか持って帰ってきていないのだ。
そこで、セリスが言っていた事を思い出したのだ。
『狩りというのは駆除以外にも食糧確保などの目的で行うものだぞ? そもそも只々ぶちのめせば良いという物では無いのだ!』
あそこでは、魔物は食べられなかったが、ここで魔物とされているのは猛獣だ。
つまり、猛獣は食べられるという事を現している。
そして、魔物の場合は素材を回収する事もできるのだ。
だと言うのに、俺はその素材ごといってしまうので、儲かる物も儲からない。
そこで思いついたのが、ポーションで相手の防御力を上げて俺の攻撃に耐えてもらうというものだ。
まあ、他にも、ポーションを使って色々出来ないかと試してはいるのだが、、、。
ともかく、今日は依頼に必要な物を揃えに来たのだ。
「今日は、、、聖属性のポーションって行けますかね?」
「、、、いけるかは分からないけど、、、やってみるよ。」
「頼みます。それと、今回は結構大掛かりで、、、他にもお願いできますか?」
「ああ、もちろん!」
レンさんは俺の言葉に快くそう答えるてくれる。
俺はその言葉に甘え、必要なポーションを言っていく。
「じゃあ、必要なポーションは、『筋力上昇』『硬化』『軟化』『属性系』『完全回復』『魔力回復』『脆化』『粘化』『鋭化』、、、位ですかね?それぞれ30瓶ほど欲しいんですけど、できますか?」
「うん、いけるよ。というより、一番の問題は『聖属性のポーション』だね、、、。」
苦笑いでそう言ってくるレンさん。
確かにそうだな。
聖属性なんて普通はありえないし、それはもうポーションというより聖水だな。
「とりあえず、『聖属性のポーション』以外は期待しといてくれていいよ。30なんて言わず、50瓶位でも行けるよ!」
「わかりました、期待しておきます。」
俺はそう言って、日時と時間を伝えてその場を離れる。
そして、人の眼がない場所で日本へ帰還すると、ぐっすりと眠らせてもらった。
明日に備え、体力を温存しておくのだ。
──翌朝、俺は学校に電話をかけていた。
『はい、知之浦高校です。』
「すみません、1-Fの闇山何ですけど、今日は少し体調が悪くて、、、休みます。」
『わかりました。大松浦先生に伝えておきます。お大事に。』
「はい。」
俺は電話を切ると、即座に着替えて異世界へと出向く。
時刻は7:00きっかり。
異世界に着くとまず、レンさんの元へ行く。
ポーションを取りに行くのだ。
店の前には既に段ボール一杯に詰まったポーションを地面に置いてレンさんが立っていた。
俺はそれを見つけると、即座に走り出す。
「おはようございます。」
「ん、ああ、おはよう、、、!」
どうやらあまり元気はないようだ。
朝に弱いのか、それとも──
「ごめんね、、、ちょっと徹夜しちゃって、、、これ、全部で1500本」
「せ、1500、、、!?」
あれ?
30×9って=1500だっけ?
「聖属性のポーションは、少ないけど一応できたよ、、、全部で30本ってところかな、、、?」
「いや、十分多い気がしますが、、、。」
俺は聖属性のポーションは一本でも十分だと思っていたのだが、、、これは嬉しい誤算だったな。
とはいえ、レンさんの体が少し心配なので早めに切り上げよう。
「まあとりあえず、ありがとうございました。俺はもうそろそろ行くので、ゆっくり休んでください。」
「ああ、頑張ってね。それじゃ、、、ふぁ~ぁ」
ポーションを《空間収納》に詰め込む俺の言葉にそう答えてくれるレンさん。
俺に手を振ってお店の中へと入っていく。
俺は頭を下げると、討伐隊の集合場所へ向かった。
集合場所とは、もちろんギルドである。
「お、きたきたー!」
「すみません、遅れました。」
「いいや、本当の待ち合わせ時間まではあと5分もある、我々が早すぎただけだ。」
俺が到着すると、既に全員が集合していた。
俺が頭を下げると、剣術試験で試験管をしていた女性が大丈夫だと言ってくれる。
、、、が、俺はこの人の名前を知らないぞ。
「えっと、、、自己紹介、、、しません?」
「自己紹介?」
「はい、《イザベル》さんとはあまり関わった事が無いですし、、、えっと、試験管さんの場合、名前も知らないので、、、。」
「、、、確かに、そう言う事なら軽くしておいた方が良さそうね。」
《イザベル》さんは俺の言葉にそう呟くと、俺の方を見て自己紹介を始める。
「私の名前はゼン・ウォント。2つ名が《イザベル》よ、よろしくね。」
《イザベル》さんがそう言いながら右手を差し出してくる。
俺はその手を取り、「よろしく」と一言。
次はミサが自己紹介を、、、と思ったが、殆ど知っていたので、飛ばして、試験管の名を聞く。
「、、、私はネーフ・ケインだ。あの時は少し乱暴すぎた、、、その、よろしくな、、、。」
試験管──ネーフさんはそう髪を触りながら自己紹介をしてくれる。
俺は頭を下げると、東の方に顔を向ける。
「それじゃあ、いきましょうか。」
俺は東を向きながらそう口を開く。
それにこの場にいる全員が賛同し、俺達は邪竜討伐へ向かったのだった。
次回!邪竜討伐!
物語は動き出す!!




