第二十七話 小話
この回は一章の肝になるかもしれないお話です。
──これは、とある町娘のお話。
彼女、トリセは貧しい訳でも裕福な訳でもない、いわば普通の家庭に生まれた普通の女の子。
何かがずば抜けて出来る訳でも、出来ない訳でもなく。
毎日友達と遊び、人並みに生きる。
ただそれだけの、普通の女の子だった。
ただ、彼に出会うまでは──
「トリセ、あの人はさすがに無理だって、、、。」
「え、いや、わかってるよ?」
「だって、“王子様”だよ?いくら可愛くても身分が無いと。」
「だから解ってるって、、、」
──これは彼女がまだ幼いころ。
中々内気だった彼女は、あまり人と群れる事も無く、一人で生きていた。
父母は仕事で帰るのは夜遅く、兄弟姉妹がいる訳でも無かった。
毎日を、一人の時間で浪費していた。
だが、彼女の人生が大きく変わったのは彼女が良く行く肉屋へ向かっていた時だった。
彼女が横を向くと黄色い声を飛ばす女性の群れ。
何かやっているのかと、少し高い位置へ上り女性たちが見つめるその先を見る。
そこには、自身よりも幾分か年上の金髪の少年が馬の上で手を振っている姿があった。
愛想のいい、優しそうな少年に、彼女の心は高鳴った。
自分の様に薄汚れた格好をしている訳でも無く、高貴な、それこそ王族の様に奇麗な服を着ていた。
純白の正装に身を包み、王子様と言えば、というイメージが具現化したようだった。
周囲の声を聴けば、彼は実際に王子だと言う。
彼女は、初めて恋をした。
純正な心には、清純な笑顔が刺さった。
そして、彼女の初恋が実る訳もなく、ただ時が過ぎた。
彼女には、友達が出来ていた。
一人で生きていた彼女は、友と過ごしていた。
そんな他愛もない時間が過ぎ、11年の年月が過ぎた。
彼女は16歳になって、そろそろ働く事の出来る年だ。
「トリセはなんになりたいの?」
友人の質問に彼女は悩む。
自分になりたいものなどあるだろうか?と。
実際、彼女の頭には、何も出てこなかった。
彼女は人を守りたいという信念が強い訳でも無く、戦士系の職も似合わないだろう。
だからと言って、手先が器用なわけでもない。
「私になりたいものはないかな、、、。」
彼女は友の問いにそう答える。
だが、友人──アマリは納得がいかないようで、脹れている。
トリセは焦って理由を付け加える。
「えっと、私得意な事とか好きな物とかないからさ!何になろうか悩んでて、、、!」
トリセの返答にまだ納得がいっていないようだが、何か思いついたように瞬きを一回する。
「、、、じゃあ、冒険者になってみれば?」
アマリはそうトリセに提案する。
その提案は、トリセには想像もしていなかった提案のようで、トリセは目を丸くしている。
そんな事は知らんとでも言う様にアマリは続ける。
「ほら!冒険者ってさ、危険な仕事だけじゃなくて薬草採取とか錬金術とか、いろんな依頼があるから自分に合う仕事探してみて、それで決めてみれば?」
「、、、悪くはない、、、かな?」
トリセは自分がこの街を往復する姿を思い浮かべてそう呟く。
そして何より、トリセは一途だった。
冒険者は、功績を得れば貴族へ成り上れるのだ。
そうして、身分が上がれば彼女が王子と結ばれる可能性もなくは無いだろう。
「、、、私、冒険者になるよ。」
そして、この言葉で運命の歯車は回りだした。
この一年後に、彼女は冒険者として活動し始めた。
そして、それと同時に、彼はこの地に足を踏み入れた──
♦
──「ふう、これ、、、いつつくんだ?」
俺は、森林の中で呟いた。
見渡す限り、木、木、木。
村を出てから既に4時間。
絶対に騙されたな、、、。
こんなに時間かかるとか聞いてないぞ。
「はあ、でも、、、《魔力探知》か何かのお陰で道には迷わないし、人の魔力が近付いている気がする。」
歩きながらもそんな事が感じ取れるのだから便利である。
勘があともう少しだと告げている。
さあ!行こう!
──2時間後。
「はあ、はあ、あれか!やっと着いたー!」
俺は目の前に広がる広大な大地に聳える絶壁、その内に広がる大きな都を見て叫ぶ。
絶壁の所々には列がなされているが、一か所だけ、空いている所がある。
ここは整地もされていないようだが、門番は立っている。
よし、あそこから入ろう。
俺は足を踏み出す。
さあ、ここから俺の異世界冒険譚が幕を開け──
「おい、とまれ。貴様、怪しいな、、、。何の用で王都へ来た?言え!」
──る、、、?
俺の目の前には、この外壁よりも高い障害があった。
俺って、そんなに怪しく見えるの?
──こうして、全ての歯車はかみ合った。
次回から一章本番スタートです!
書ける限りの大冒険を!




