第二十六話 出立の準備
結果こうなりましたね(笑)。
──あれから一週間後、俺は、王都へ出立するための準備をしていた。
準備、と一口に言っても特に用意する物がある訳でも無い。
一応用意する物はあるが、今は、村長に呼ばれて村長の家へ来ているところだ。
「えっと、何か用でも?」
「用、、、というか、君に聞いておきたいことがあるんだ」
「何です?」
「君、この世界に来て日が浅いけれど、、、この国、この世界の常識とかって、あるのかい?」
「ある訳ないじゃないですか。」
この世界に来て、というより、元々の世界でもまだ学生だから知らない事は沢山ある。
だがそんな事よりも、それと同時に覚えなければならないこの世界の常識。
俺の脳はどこまで耐えられるだろうか?
俺の返答を聞いた村長は苦笑いで、「だよね、、、」と声をかけてくる。
「それじゃあ、私がこの世界の常識を教えておこう。」
「え、いいんですか?」
「もちろんさ。なんたって、この村を救ってくれた恩人だもの。」
「そういう事ならありがたく。」
俺は村長の言葉に、首を縦に振る。
俺の返答を聞いた村長は、すぐさま説明を始める。
「まず、この国の通貨からだ。この国の通貨は『銅貨』『銀貨』『金貨』『白金貨』の四種類だ。『銅貨』は、一番下のグレードだから、これ一枚だと買える物は限られるね。でもって、一番グレードの高い通貨は『白金貨』だ。これ一枚で一年は働かなくても困らない。それも、かなりの大家族が、ね。」
「そんなに高いんですか?」
「ああ、本来なら金貨十枚で一般の家庭は一年以上働かなくてもいい。それの上となれば、、、まあ、そうなるよね。」
「ほえー。」
「まあでも、冒険者なんかの場合は高い装備とかを買うためにどんどん減っていくから、白金貨一枚だと直ぐになくなっちゃうけどね。」
「そうなんですか。」
「そう。そして、大体の場合は『銀貨』が十枚もあれば一日の食事には困んないさ。」
要するに、『白金貨』は日本で言う一万円と同じ感じってことか。
「後、『銅貨』が十枚で『銀貨』が一枚分の値段になる。」
「そうなんですか」
「ああ。で、『銀貨』が百枚で『金貨』一枚分、『金貨』が千枚で『白金貨』一枚分の値段になる。」
「桁が上がていくんですか?」
「そう。」
ここは日本とは違うが、覚えやすい桁数で良かった。
刻まれると厄介だったからな。
「それで、ここに『白金貨』はないが、それ以外の実物はこれだよ。」
「、、、だんだん大きくなっていきますね」
「ああ、これで繰り上がりを現しているんだ。」
この世界は何か、こういう均一な大きさに叩くためのスキルでもあるのだろうか?
鍛冶系のスキルとかか?
まあとりあえずは解ったが、他にも覚えたほうがいい事はあるのだろうか?
俺は、村長の言葉を待つ。
「それじゃあ、この世界で君と関わりが深くなりそうな職業を説明しておこう。」
「職業?」
「ああ。この世界では主に『外部職』と『内部職』がある。その中で君が最も関わりが深くなるのは主に『外部職』だろう。」
「どんな職業なんです?」
ニュアンス的に分かりそうなものだが、待ってましたと言わんばかりの表情なので、一応聞いてみる。
「『外部職』は街の外で、魔物などを倒すことが仕事だったり、街の外とは言わずとも、室内での仕事をすることのない職業だよ。そして、代表的なのは『冒険者』や『近衛騎士団』、『聖騎団』なんかかな?」
「『聖騎団』?」
俺は聞いた事のない職業に首を傾げる。
「ああ。聖魔法が使える騎士たちの事だ。」
「、、、聖騎士じゃないんですね。」
「いや、単体では聖騎士というけれど、その団体は聖騎団と呼ばれるんだ。」
そういう事か、腑に落ちたな。
というか、意外と簡単じゃないか。
そこまで覚える事が多いわけでもないし、何だったら漫画の予備知識のお陰でスムーズに覚えられる。
「それと、『内部職』はあまり関わる事は無いと思うけれど、一応、念のため教えておこう。『内部職』は、主に室内で行う作業が多い職業の事を言う。君が係るとすれば、『鍛冶師』や、『錬金術師』、『道具師』なんかかな?」
ほう。
やはり鍛冶師はいるのか。
それに、錬金術師まで。
「俺が関わると思うのは何でですか?」
「、、、君は異世界から来た、救世主、だからね。」
「どういう意味です?」
「、、、前に話した伝承に乗っていたことだが、、、救世主は、この国、この世界から信頼を得るために、『冒険者』として活動していたらしい。」
「じゃあ、俺もまずはそうしろ、、、という事ですよね?」
「ああ、そうだね」
俺の問いに村長が答える。
その答えが示すものは、俺に拒否権は無いという事だ。
いや、厳密にいえば、拒否権はあってもその拒否権を使えば結果この世界で自分のすることがなくなる、もしくはこの世界が滅ぶという事だろう。
俺は思案した挙句、溜息を一つ。
「わかりました、王都に着いたらまず冒険者登録しますよ。」
「有無、それでいい。」
そう笑顔で言うと、俺の前にソフトボールくらいの大きさに脹れた風呂敷を置く。
中からは金属が当たる音が聞こえる。
要するに──
「これは、私からのプレゼントだ。」
「、、、ありがたく受け取らせ貰います。」
「ああ。それじゃあ、明日の朝には出発かい?」
「、、、そう、ですね。」
俺は、明日が土曜であることを思い出し、そう返事をする。
「それじゃあ、今日はもう眠りたまえ。」
「はい、それでは。」
──朝日が昇る。
周囲は透き通った水色で包まれている。
そして、俺は──
「それじゃあ、短い間だったが、お世話になりました、、、また、いつか!!」
──俺は背中に朝日と、村の人たちの声を浴びながら新天地へと一歩、足を踏み出したのだった。
これが完成した日、一章と書いていた部分をプロローグに変更しました。
この話の次の話は、一章に含まれますので、少し新鮮な感覚に陥るかもしれません。
其処も含め、続きをお楽しみください。




