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第二十三話 準備

今回、長めです。

 ──「えっと、似合うかしら?」

 「、、、ああ、可愛いと思うぞ?」


 俺達は現在、学校をズル休みしてショッピングセンターでファッションショーをしている。

 いや、決してやることを忘れている訳ではない。

 これは準備をしているのである──。


 ──50分前。


 「ちょっと! なんでこんな所に!」


 学校を抜け出し、ショッピングセンター内に入った俺にそう問いかけてくる小鳥遊。

 だが、俺は冷静にその問いに答える。


 「こういうのは見た目からはいるもんだ。お前みたいにな。」

 「どういうこと?」


 俺の答えに納得がいかなかったのか、そう小首を傾げる小鳥遊。

 俺はさらに詳細に、かつ分かりやすく話を纏めて説明する。


 「まず一に見た目だが、此処で服を買う。そして二に飯だ。」

 「ご飯は分かったけど、服は、、、何でよ?」

 「こんな制服で行ってみろ、学校はどうしたのか? と、咎められて突き返されるだろ? だから普段着を買って行くんだ。それと、俺の事は星馬って呼んでくれ。俺もお前も19歳って事にしろ。」


 俺は、詳細にそう伝えると一度話を止める。

 そして、スマホに表示される時刻を見る。


 「八時十五分か、、、。もうちょい時間を潰した方が良さそうだな、、、。」

 「ちょっと待って、なんで新しいのを買うのよ?」

 「なんでって、19歳っぽい服を手に入れておかないと行けないだろ?」

 「そう、、、というか、何で貴方まで名前を?」

 「なんでって、俺の名前って結構珍しいから直ぐに覚えられるだろ? それで今度高校生として見られてみろ、色々と不味い事になるだろ?」

 「じゃあ、顔は?」

 「顔なんて、お前と同じで眼鏡にマスクで十分だろ?」

 「、、、それもそうね、、、。」


 一通りの説明が終わると俺はブレザーを脱ぐ。

 それを見て小鳥遊が顔を赤くする。

 そして指の間から目を出しながら俺をガン見する。


 「ちょっと!? 何公共の場で脱いでるのよ! 馬鹿じゃないの!? もっとゆっくり脱ぎなさいよ!」

 「ちっげーよ! てか最後のはどういう意味だよ!」


 何を言うかと思えば、何を考えているんだ此奴は!

 そもそも最後のゆっくり脱げってなんだよ! そういう趣味かよ!


 「ブレザーは結構学校の特徴が出るからな、、、お前もブレザーは脱いどけ。」


 俺はそれを仕舞うと小鳥遊にもそうするよう促す。

 すると小鳥遊も渋々受け入れ、ブレザーを脱いでリュックにしまう。

 何か必要になるかもしれないと思いリュックを持ってきておいてよかった。

 うちの高校は鞄orリュックだからな。

 というか、此奴は何故リュックを持ってきていたんだ?


 「それじゃあ、飯だが、、、こん中でもう空いてる所はあるか?」


 俺は辺りを見回して問う。

 だが、流石に開いていない所が多い様だ。

 この店の大体の店は9:00開店だからな。


 「、、、ミックって、アリか?」


 俺は目についたかの有名なハンバーガー屋はどうかと小鳥遊に聞いてみる。

 すると小鳥遊は爛々と輝いた瞳で俺に近付いて来る。

 俺はその気迫の様な物に少し仰け反る。


 「ど、どうした? ミックは嫌だったか?」

 「いいえ! むしろ大歓迎よ! 今まで禁止されてたから!」

 「え? じゃあ、行かない方がいいんじゃ、、、」

 「ふっふっふっ、今年から行っても良いというOKが出たのよ!」


 涙を流しながらガッツポーズをする小鳥遊だが、俺は特に何も考えず一つの質問を投げかける。


 「それならもっと早く行けば良かったんじゃないのか? 今年からって事は中学卒業前に友達とか誘って、、、」

 「貴方それ嫌味!? 今の私を見て誘えるような友達いたと思う!?」

 「、、、確かに、話さなければ全校女子と仲良くなれそう、というか、逆にあっちから誘ってきそうだが、、、居ないだろうな。」


 俺は少し考えてそう結論付ける。

 容姿端麗、八方美人! ではなく、容姿端麗なだけの中身はダメ子ちゃんだしな、、、。

 俺は温かい目で小鳥遊の手を引く。


 「ちょっと! その目止めてくれる!?」


 と、うるさいが、兎も角腹ごしらえだな。

 俺はミックのカウンターに足を運び、店員にモーニングセットを頼む。

 小鳥遊は迷っていたが、ハンバーガー2個と飲み物にポテトという欲張った注文をしていた。


 ──「さて、食べるとするか。」

 「(ゴクリ)」


 注文した者が来た所で、席に座って手を合わせる。

 小鳥遊も何故か緊張したような顔をしているが、腹は減っているだろう。


 「「いただきます!」」


 俺と小鳥遊は手元のハンバーガーを持つと勢い良く噛り付く。

 中から肉汁が溢れ、その肉汁と、タルタルやケチャップなどが絡み優しくも勢いのある味が口一杯に広がる。

 小鳥遊は目尻に涙を浮かべてハンバーガーを頬張っている。


 「、、、うまいか?」

 「、、、ッ! お、おいしいわよ、、、。」


 俺が優しい声を意識しながら問いかけると、頬を赤らめてそう言う小鳥遊。

 ぶっきら棒に言うよりは良いかと思ったが、、、恥ずかしい奴だと思われてしまったか?

 それとも、俺にあの姿を見られていた事に対する羞恥だろうか?

 まあ、そんな事はどうでもいいか。


 俺はとりあえずハンバーガーを頬張ると付いてきた珈琲で流し込む。

 ふむ、良く解らん味になったな。


 「それじゃあ、もうそろそろ服屋も開店するしお前が食い終わったら行くとするか。」

 「解ったわ、、、。」

 「これからは遊って呼べばいいのか?」

 「、、、そうね、そうしましょう。私は星馬君って呼べばいいのよね?」

 「ああ。」


 こういうのは早い内からやっておかないと、本番で襤褸が出るからな。

 今の内からやっておいて損は無いだろう。

 今日は長い一日になりそうだ。


 ──「で、まずはお前、、、遊からだな。」

 「っ、、、そ、そうね。どこの服屋で買おうかしら。」


 俺達は人が増え始めたのを確認して、それに紛れ込むように服屋へと向かう事にした。

 まずは小鳥遊の服からだ。

 俺は周囲の店を確認して、対象が18~25歳の店を見つける。

 そこへ向かうと、小鳥遊にとりあえず服を選ばせ、一番高年齢に見える服を俺が見定めるという事になった。


 ──「えっと、似合うかしら?」

 「、、、ああ、可愛いと思うぞ?」


 そして現在に戻る。


 今小鳥遊が着ているのは、緩めのレースシャツに黒のワンピースだ。

 モノクロのおかげか、シンプルだが大人びて見える。

 そして、そもそもの雰囲気が大人びている小鳥遊が着るとさらに大人びて見える。


 「ッ! に、似合うかって聞いて可愛いって返すのってどうなのよ、、、。」

 「え、駄目だったか?」


 実際、似合うし可愛い。

 大人びて見えるという表現には合わないだろうが、容姿とスタイルはいいし、素直でいれば普通に可愛い少女である小鳥遊にはこの言葉が一番だ。

 そう思ったのだが、間違っていただろうか?


 「、、、まあ、ダメではないけれど、、、。」

 「、、、?」


 ダメではないなら何なのだろう?

 、、、まあ、其処はおいておくとしよう。

 次の服に着替えてくれと頼むと、小鳥遊は「そうね」と一言言ってもう一度試着室に入っていく。

 それから30秒後。


 「こ、これはどうかしら?」

 「ふむ、いいな、、、。」


 今度は胸元に文字の書かれた白地のTシャツにベージュのショルダーパンツ。

 そして、露出した腕を守るようにTシャツと同じ色のカーディガンを着ている。

 だが、これは、、、。


 「、、、眼鏡をかけた方が似合うんじゃ無いか?」

 「へ、そ、そうかしら。」


 そう言いながら眼鏡をかける小鳥遊。

 うむ、可愛い。


 「な、何よ、、、。」

 「ああ、悪い。あと何着ある?」

 「え? 後、2着くらいかしら?」

 「じゃあ、、、後10分位で決まりそうか?」

 「まあ、大体それくらいかしら?」


 小鳥遊はそう言うともう一度試着室に入っていく。

 今度は20秒ほどで出てくる。


 「ど、どうかしら?」

 「、、、これは、、、少し危なくないか?」


 今度は、首から方にかけてを露出した肩出しワンピースだった。

 流石に一介の高校生には早すぎるのではないだろうか?

 まあ、俺はウェルカムだけどね! ウッホーイ!


 「ちょ、ちょっと、そんなジロジロ見られると恥ずかしいのだけど、、、。」

 「ああ、悪い。じゃあ、最後のやつを見せてくれるか?」


 俺がそう言うといそいそと試着室に入っていく小鳥遊。

 俺は脳内データフォルダにしっかりとあの光景を刻み付けながら待つ。

 途中、《瞬間記録》というスキルが手に入ったが、まあ、活用するかは置いておこう。

 そんな事をすること30秒。


 「これは、ど、どうかしら?」

 「、、、これは、、、。」


 ダボッとしたベージュのプルパーカーに黒のチェック模様の入った赤いロングスカート。

 そして眼鏡に帽子。

 俺はこれ程までにこの格好が似合う女性を見た事があっただろうか?

 いや、ない。


 「、、、おお、神よ、、、。」

 「ちょ、な、何で涙目なのよ、、、!?」


 顔を赤くしてそう叫ぶ小鳥遊。

 その赤くなるのもまた、、、。

 まあ、とりあえずこの中から選ぶとして、だな。


 「ここら辺で弄りは止めるとして、さて、どうする?」

 「いじっ、、、まあいいわ。私は1番目と二番目が好きだけど、、、。」

 「そうなのか、、、俺は、、、全部似合っていたし可愛かったが、最後のこれと最初のこれが好きだな。」

 「にあっ!? かわっ!? あ、貴方どうして今言うわけ!? 着てる時に言ってくれればいいのに!」

 「え、あ、わ、悪い、、、。」


 俺はその気迫に押されてしまう。

 そして、そこであるものが目に入る。


 「ん? あ、いい事思いついたぞ!」

 「へ? いいこと?」

 「ああ、一番最初のレースシャツにこの最後のスカートと、あそこのコートを着たらどうだ? 足元は少し長めのソックスだ。」

 「、、、確かに、無しではないかもしれないわね。」


 俺が言った通りの組み合わせを見て、そんな事を呟く小鳥遊。

 一度試着してみる事にしたらしい小鳥遊は、それらを手に取り、試着室に入っていく。

 俺はその間、想像できる限りの出てきた時の印象を思い浮かべる。


 それから30秒。

 試着室のカーテンが開かれると、そこに立っていたのは想像を遥かに超える可愛さを誇る小鳥遊だった。

 可愛いの暴力だ。


 「可愛いな、、、。」

 「へ!? ま、まだ何も言ってないじゃない!」

 「え、いや、思った事を言っただけだが、、、?」


 俺がそう言うと顔を赤くして試着室に急いで飛び込んでしまう。

 俺、なんか言っちゃった?

 俺は自分の言葉を思い返しながら小鳥遊の帰りを待つ。


 ──「次は貴方、、、星馬君の服ね?」


 会計を終え、店を出ると小鳥遊がそう言ってくる。

 うむ、正しい。

 だが、俺は自分の服など買った事が無い。

 そのため自分に合う服が分からないのだ。


 「俺のは適当にマネキンが来てるやつを買うから時間はかからな──」

 「ちょっと待って。」

 「──い? どうした?」

 「、、、私のは何でそうしなかったのよ?」


 目を点にしてそう問うてくる小鳥遊。

 何か引っかかるところがあるのだろうか?


 「なんでって、自分の好きなやつ買った方がいいだろ?」

 「、、、そうだけど、、、でもそれなら貴方もそうすれば良いじゃない。」

 「俺は自分に合う服が分からないからそんな必要ないんだよ。」


 しかも、この体になってから服買うのもこれが初めてだし。

 小鳥遊は俺の説明を受けて、何故か頬を膨らませる。

 、、、可愛い。


 「それなら、わ、私が貴方の服を選んであげるわよ!」


 人差し指を立ててそんな事を言ってくる小鳥遊。

 そんな小鳥遊の圧に少し仰け反りながら俺は了承する。

 小鳥遊は俺が頷くのを確認するや否や俺の手を引いて歩いていく。

 どこに向かっているのだろうか?


 「どこに向かってるんだ?」

 「私が知ってる紳士服専門店よ」

 「、、、遊が知ってるところって、高そうなイメージがあるんだが、、、。」

 「、、、そ、そんなこと、、、な、、、くもないわね、、、」


 俺の全財産の三分の二は今週の日曜で消えるだろうからな、、、。

 少しは取っておきたいんだが、、、。


 「それでも、上下だけなら2万もしないはずよ。」

 「いや高くないか!? もう少し安価なところを、、、」

 「いやならお母さんから借りたカードで買ってあげるから、とにかく行くわよ!」


 そんなこんなで連れてこられたが、これ何語だ?

 見た事もない文字で書かれた店名に首を傾げる。

 が、小鳥遊は特に気にする様子もなく店内を巡り、服の上下セットを持ってくる。


 「、、、これ、ちょっと着て見てくれる?」

 「解った、、、。」


 俺は手渡された服を持って試着室に入る。

 そのままカーテンを閉めると、値札を探す。

 この服いくらだ! これが予算内で買える範囲なら直ぐに買って出よう。


 『5,900円(税別)』+『6,590円(税別)』=『12490円(税別)』+(税)=『13739円』


 あっぶねー! ギリセーフだぜ!

 これであと今週は何も買わなければいける。


 俺はその服を着て試着室を出る。


 「、、、中々似合うじゃない。」


 俺の姿を見て小鳥遊がそう言う。

 俺が今着ているのは、シンプルな黒地のスキニーパンツに、ワイシャツを脱がず上から所々に赤い線の入ったレザージャケット。

 ただ、これはレザージャケットと言ってもいいのか、袖や、縫い合わせの所等に薄い紐がぶら下がっている。


 「この服って、なんて言うんだ?」

 「私も知らないわ。」


 お前が進めたんだろ! と突っ込みたくはなったが、とりあえず会計だ。


 「これでいいかな。」

 「、、、じゃあ、私のお母さんのカードで──」

 「いや、これ位なら払える。」


 俺は自らの財布を取り出した小鳥遊を止める。

 そして、自分の財布を取り出してレジに持っていく。

 会計が終わると小鳥遊の手を取ってトイレの前へ歩みを進める。


 「ちょ、ちょっと、何でトイレの前に、、、」

 「此処で着替える。」

 「、、、そう言う事ね、、、。」

 「ああ。終わったら此処で待っててくれ。」

 「解ったわ」


 俺と小鳥遊は解れると、それぞれトイレの中に入っていく。

 俺は室に入ると、中で《隠密》と《短縮転移》を使い、ショッピングセンターの外へ出る。

 そのまま《浮遊》と《高速移動》で家まで直行。

 マスクと伊達メガネを取ってまたショッピングセンターへ戻る。

 そして、直ぐに着替えるとトイレを出る。


 「悪い、待たせたな。」

 「いえ、私も、、、その眼鏡とマスクはいつの間に?」

 「いや、偶然リュックに入ってたんだ。」

 「、、、いまいち信用できないけど、それ以外ないものね。」

 「ああ。というか、店の雰囲気の割に安い服だったな。もう少し行くかと思ってかんだが、、、。」

 「まあ、確かにそうね、、、。普通に一万超えるところもあるけれどね。」

 「上下のどっちかだけでか?」

 「ええ。」

 「どんな高級ブランドだよ。」


 俺達はそれだけ会話をすると、ショッピングセンターを出て、小鳥遊が言う道場へ向かう。

 もし、本当にスキルが使える人間なら、人間性を見ておかないと危険かもしれない。


 俺達は体験入門希望という設定で行くことにする。

 歳は19。

 大学生として、今日は午前授業という事にする。

 最近はやっていると友人から聞いたという設定で行く。


 プランは完璧だ。

 それと、俺はスキルで本来の動きなどを隠す。

 《隠蔽》と《擬態》を使う事で、完全にこの姿にに擬態し、動きを隠蔽する。

 俺の動きはスキルが使えるものなら多分直ぐに異世界に行っていると気付くだろう。

 俺の動きは本来ではありえない動きだからだ。


 俺達、そして俺単体のプランは完璧だ。


 これを破壊できるなら、やってみろよ。


 そうして俺達は目的の場所まで来ていた。


 「此処って──」


 それは、俺が入学式の日に見た、大聖堂だった。

主人公は全ての伏線を回収しているのかもしれません。

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