第二十二話 ズル休み
──俺はあの後、忽然と姿を消し元の世界へと帰還していた。
帰ってくれば、既に日は上がり始めており、時計を見てみるとその針は7:00を指していた。
俺は急いで着替えると、家を飛び出る。
そして、途中でコンビニに立ち寄ると、パンを買い走り出す。
始業時間は8:30だが、今日は小鳥遊と約束した事があるのだ。
それは遡る事、一日前。
──「俺に一つ提案があるんだが、いいか?」
聖職者のような人物の動画を見終わった俺は、小鳥遊に一つの提案をした。
その内容は至極簡単なもので、俺と小鳥遊でこの道場(?)の情報を集めようという物だ。
そう提案をすると、小鳥遊は少し間を開けた後に首を縦に振る。
「確かに、手分けして情報をかき集めた方が手っ取り早そうね」
そう言った後、俺を見て言葉を付けたす。
「じゃあ、明日、7:15に校舎裏に来てちょうだい。」
「ああわかっ──は? 明日の、何て?」
「7:15よ?」
至極当然の様にそう言った小鳥遊に俺は顔を顰める。
それを見てどう思ったのか、小鳥遊が口元に手をやり、顔を伏せて震える。
「何よその顔w」
どうやらツボに入ったようだ。
震える声でそう言う小鳥遊だが、俺は顔を戻すことなく考える。
俺は基本、起きるのが7:30だ。
それなのに、7:15など、、、。
いやまあ、早起きすればいいだけなんだけどさ、、、。
「まあ、そう言う事だから。」
小鳥遊は一通り笑うと、息を整え、俺に一言。
「、、、遅れないでちょうだい?」
そう言って店を去っていった──。
──と、いう事があったのだが、よく考えればスキルを使えばすぐに着くという事に気付いたので、家を出るのが少し遅れるくらいは許されるだろう、という事で遅く寝てもいいだろうと思っていたのだが、異世界にてオールした今現在である。
そして、俺が急いでいる訳はもう一つある。
それは──
「っと、着いたな。」
俺は、《高速移動》を使い校舎裏の近くまで行くと、速度を緩める。
そして、周囲を眺め、小鳥遊を探す。
すると、不意に背後から声をかけられる。
「いた! おーい!」
「ん? 小鳥遊か?」
俺は声のした方を向いて──そこにいた人物に問いかけてしまう。
そこにいたのは、マスクに金縁の大きめな眼鏡をかけたおさげ少女だった。
それに、心なしかスカートも短いように感じる。
此処のスカートの丈は、膝よりも上にする場合はタイツを履かなければならないのだが、ソックスしか履いていない。
既に生足と言っても過言ではない。
、、、寒そ。
「そうよ!」
俺に走り寄り、胸を張って自信満々にそう言ってくる小鳥遊。
揺れる胸を見ながら俺は小鳥遊の方に手を伸ばし──
──フニッ!
その頬を抓る。
「いふぁ! な、なにふんのよ! ちょっふぉ!?」
「お前、昨日俺に会計させたろ! お前頼んだ奴結構高かったんだぞ!?」
「ひょんなこひょで!?」
此奴の頬っぺた柔らかいな。
伸び具合が餅だぞ。
「もういいいでひょ、、、!?」
痛みの所為か、はたまた羞恥の所為か、目尻に涙を溜めてそう言ってくる小鳥遊。
その様は可愛かったので、まあ、ここらでやめるとしよう。
と、言うかこんな事に時間を割いてられないんだよ。
──「で、どうするんだ?」
「な、何が?」
「プランだよ」
俺は、マスクを顎に下して頬を摩る小鳥遊に問う。
良く解らないと言った風に小首をかしげる小鳥遊。
すると、俺の方を見て思い出した様にマスクを付け直し、胸を張る。
「あー、何の意味を持ったポーズなんだ?」
「これよ、この格好!」
「お、おう、、、それが何なんだ?」
胸元に手を置いて言って来るが、俺には何が何なのかなど解るはずもない。
今度は俺が首を捻る番になってしまった。
小首をかしげる俺を見て、頬を膨らませるとその恰好の説明をしてくれる。
「この格好で貴方は私かどうか分からなかったでしょう?」
「まあ、それはそうだな。」
「それよ! それを使うの!」
どういうことだ?
俺は未だ良く解らず、もう少し詳細な説明を求める。
「だから、要は私の容姿を隠せればいい──というか、私であるという事を隠せればいいのよ」
「それが良く解らないんだが?」
「多分、あいつは殆どの大手道場の当代から次世代に至るまでを把握しているはず、その中に私も含まれていると思うのよ。」
「おう、まあそうだろうな。」
「そこで! 私は今から小鳥遊遊離ではなく、小鳥遊で行くわよ!」
「じゃあ、何て呼べばいいんだ?」
「じゃ、じゃあ、遊って呼んでちょうだい、、、。」
仄かに頬を桃色に染めながらそう言ってくる小鳥遊だが、特に恥じらう所ではないと思うんだが、、、。
まあいいとしよう。
それで今の問題はというと、、現在の時刻なのだが、此奴は既に八時十分前だと言う事を解っているのだろうか?
「まあ、それは解ったが、もうそろそろ始業時間だぞ?」
「へ? そうね? それがどうかしたの?」
「いや、行かなきゃ不味いだろ。」
俺がそう言うと、そんな事ないと言うように首を振る小鳥遊。
「私は風邪を引いたてことで休むから、行かなくてもいいわ?」
「は? ちょ、ちょっと待てよ! もしかして、これから行くのか?」
「そんなの決まってるじゃない?」
「じゃなきゃこんな格好しないわよ」と付けたし、俺の横を通り過ぎる小鳥遊。
俺は小鳥遊がその先に行く前に引き留め、もう少し暗い所へと引きずり込む。
そして、土下座をする。
「、、、は!? ちょ、何してるのよ!?」
「静かに、今から学校に電話をかける。」
俺は携帯を取り出すと、学校の番号を入れ、耳にスピーカーを当てる。
すると、俺のクラスの担任の声が聞こえてくる。
『はい、知之浦高校です。』
「ゴホッゴホッ、1-Fの闇山光里です。」
『は、はい、光里君ね、私のクラスの、、、大丈夫?』
そう心配そうに聞いて来る大松浦先生。
そんな先生に嘘をつくのは少し心苦しいが、少し騙されてもらおう。
「ちょっと、風邪気味で、、、。今日は欠席したいんですけど、、、ゴホッゴホッゴホッ!」
『そ、そうなの? 今日は欠席が多いわね、わ、わかった、ゆっくり休んでね?』
「はい、すみません。」
ツー、ツー。
──《ピピ──スキル《ペテン》を入手しました。称号:『ペテン師』『善の偽造者』が追加されました。》
クソ、何もいえねー!
「貴方、なかなか演技派ね、、、」
「そんな目で俺を見るなぁ!!」
少し引いたような目で見てくる小鳥遊にそんな切実な思いを叫びながら、俺は立ち上がる。
そして、小鳥遊を見ると声をかける。
「、、、まあ、兎に角行こうぜ。」
「そうね、表は見つかってしまうかもしれないから、裏からこっそり出るわよ。」
「ああ。それと、これから行くなら準備が必要だな。」
「準備、、、?」
「とりあえず行くぞ。」
俺は、小鳥遊を引くと、《隠密》のスキルを使いながら存在を隠す。
そして校庭のふちに敷かれるフェンスの一つにある少し大きめの穴から学校を抜け出す。
そのまま俺達は近くの“ショッピングセンター”に入っていく。
「ちょっと!? なんでこんな所に!」
「こういうのは見た目からはいるもんだ。お前みたいにな。」
俺たちは潜入捜査の準備を始めたのだった。
日常回、、、なのでしょうか?




