第十三話 妹
――あれから、俺は小鳥遊と別れ、中等部へと足を運んでいた。
結構時間を食ったな。
一時間弱ってところか。
俺は《短縮転移》で建物から建物へと渡り中等部に僅か三十秒でたどり着いていた。
本来ならば五秒でたどり着ける場所だったのだが、道に迷ってしまい三十秒も使ってしまった。
俺は中等部の中を見回す。
すると、よく見慣れた、白い上下一体のワンピース型のセーラー服を着た、俺と同じ黒髪で、俺と違う茶色メッシュが前髪に入ったウルフヘアの少女が校門に入ってすぐ横のベンチでスターファックスの何とかかんとかうんたらラテを飲みながら空を仰いでいた。
横には見慣れないプラチナブロンドのくるりんぱショートで眼鏡をかけた少し小柄な少女がいる。
だが、俺は気にせず妹――闇山 朱梨に声をかける。
「おーい、朱梨ー!」
叫ぶと、朱梨はハッとして持っていたスタファのラテを置いて走ってくる。
そんなに俺に会えるのが嬉しいのか――
「遅ーい!」
「――フゴォ!!?」
朱梨はいきなり握り拳を作ると、俺に殴りかかってくる。
いきなりだった事もあり、衝撃をもろに食らってしまう。
妹は強しだ。
「まったく、、、って――誰?」
「お、俺だ、光里、お兄ちゃんだ。」
「、、、嘘、でしょ?」
「本当だ。」
特にダメージを受けていない俺を見て、一瞬呆けたように訊いてくる朱梨。
だが、俺が事実を突きつけた瞬間、朱梨の顔に絶望が滲む。
「わ、わたしのお兄ちゃんが、こんな風に、なってしまうなんて、、、」
そう言いながらヘナヘナと地面にへたり込んでしまう朱梨。
そして、その絶望を口から漏らし始める。
「あのもちもちしてると気持ちよかった、鏡餅ボディーの、あのお兄ちゃんがあーー!!」
「ちょっと待て! それは褒めてるんだよな!?」
褒め言葉なのかディスリなのかわからない朱梨の言葉に思わず叫んでしまう。
すると、何かが近づいてくる気配がする。
その方に俺が顔を向けると、そこには、先ほど朱梨の隣に座っていた少女が走って来ていた。
何処か内気そうな可愛らしい少女。
ヒョロヒョロとしていて今にも折れてしまいそうだ。
「あ、朱梨ちゃん、、、何してるの、、、」
疲れたように肩で息をしながらそう声を出す少女。
そして、俺の方をチラリと見てほんのりと頬を桃色に染める。
やっぱり、内気な子なのだろうか。
「あ、空木ちゃん、、、」
本当にショックだったのか、目じりに涙を溜めてその少女(空木と言うらしい)の方に顔を向ける。
空木と呼ばれた少女はそんな朱梨に困った顔を浮かべながら戸惑っている。
「ど、どうしたの? て、言うか、この人だれ、、、? これって、どういう状況なの?」
猫の首についた鈴のようにコロコロとした優しい声でその戸惑いを口にする。
そんな彼女に抱き着いて顔をごしごしと擦り付ける朱梨。
「あ、おい! やめろよお前! こんな所で何してんだ! もう中二だぞ!」
「うるさい! このシスコン!」
「なぁーにぃー!?」
反抗期だ!
妹が絶賛反抗期中だ!
うあーーーー!(嘆き)
「ちょ、ちょっと、説明を、、、」
そして、そんな俺たちに挟まれて更に戸惑う少女。
そんな彼女に更に顔を擦り付ける朱梨。
俺はダメージを気合でなかった事にすると、その少女に説明を始める。
「、、、俺の名前は闇山光里。こいつの兄だ。」
「え、あ、そ、そうだったんですか! こ、こんにちわ! 梅花 空木と言います宜しくお願いします!」
「ああ」
そういうと朱梨に目を向ける。
もう中学二年だというのに、こんなんなのか、、、。
「そういや、部活はどうなんだ?」
俺は一旦話を変える。
すると、今まで少女――空木に顔を擦り付けていた朱梨がすごい勢いで詰めてくる。
「よくぞ聞いてくれた! 流石お兄ちゃん!」
「はっはっは、もっと褒めていいんだぞ!」
「うん! それはやめとく!」
「なぜだ!?」
俺の心に尽くダメージを与えてくる朱梨に俺はどんどん体力を持っていかれてしまう。
「それでね! 最近、新しく自分で作った技がちょーーー強いの!」
「そ、そうなのか。」
俺は何もしていないと言うのに疲労困憊な体を何とか立て直して返事を返す。
「あ、そうだ、、、じゃあこれから私の部活見てってよ。」
ニチャリ、と何か悪いことを思いついたような笑みを浮かべて俺にそんな提案をしてくる朱梨。
俺はそんな笑みに一瞬顔を顰めるが、妹の部活をやっているところを見たい気持ちもある。
くそ! 乗ってやるよ!
「よし! じゃーいこー!」
そういうと俺の手を引いて部活をやっているというテニスコートに連れていかれる。
テニスをやってたんだったか、、、。
何をやってるかはそんなに覚えてなかったな。
「それじゃあ、お兄ちゃん、入って♡」
「、、、へ?」
俺は部活用の服に着替えてきた朱梨にそう言われて固まる。
周りには一年の後輩や、三年の先輩などが群がってきている。
「私の新技、身をもって体感してもらおうかなって思って♡」
「いや、別に――」
「はい、ラケット♡」
「――はい。」
凄まじい圧を感じ、反射的に受け取ってしまう。
俺は知らなかった、妹がこんなに、Sだったとは――。
こうして、俺と妹の兄弟マッチが始まったのだった。
――お手並み拝見だ。
妹は強し。
ただ兄は──。




