第十一話 絶世の美女
――「はいっ! では、自己紹介を始めたいと思いまーす!」
そんなノリノリの司会をするのはこのクラスの担任となった大松浦 恵奈だ。
俺は自己紹介などしたくはないが、しょうがない事なので、了承しよう。
俺は後ろから五番目あたりだ。
、、、だが、俺は自分の心配よりも、彼女への興味が尽きない。
俺が今まで見てきたどんな女性よりも、ずば抜けて可愛い、、、いや、奇麗だった。
その翡翠色の髪の毛に翡翠色の瞳。
整った顔の造形に合う、シュッとした目のライン。
小柄な様で細身の長身。
いい。
これは、普通に好みだ。
ただ、そんな絶世の美女に声をかけるような事、かなり図太くないと出来ないだろう。
おっと、そんなことを考えている間に俺の番が来てしまった。
「それじゃあ、、、闇山君!」
「、、、はい」
俺はゆっくりと立ち上がると、自己紹介をする。
「ええっと、闇山光里です。これからよろしくお願いします。」
無難にこんな感じでいいだろう。
俺が内心でドヤ顔を決め込んでいると、先生に声をかけられる。
「えっと、好きなものとか、趣味とかって、、、ないかな?」
「、、、」
趣味か、、、ゲームとかか?
やったことないけど。
「ゲームですね。」
まあ、あっちの世界で魔物倒してるし。
俺はそれだけ言って席に座る。
先ほどからちらちらと視線を感じるが、それも俺が少し不細工気味で面白いから見ている輩の視線だろう。
、、、ん?
あの子の名前聞いてなかった!
俺のことだけで精一杯だった所為で!
俺はやっちまった! と思いながらも後の説明を真面目に聞く。
特に変わったこともない説明はすぐに暇になってきて、瞼が重くなってくる。
ただ、時間配分が完璧だったのか、俺が深い眠りにつく前にその説明は終わってしまう。
――「ふう、終わった。」
今日は自己紹介と説明で終わりとか言ってたし、帰ろうか、、、。
いや、妹に会いに行こう。
俺の妹も今日は、もうそろそろ終わるて言ってたし。
俺は妹にメールを送る。
『今入学式終わったから、久々に会わないか?』
よし、送信。
この学校、意外とでかくて中等部の校門まで結構時間がかかるんだよな。
、、、まあ、もうちょいかかるだろうし、ここら辺の地形でも把握しておくとしようかな。
先ずは、、、近くのコンビニで飯にしよう。
俺はスキルを使うことなく適当に歩き回り、大体の地形を把握する。
そして、一軒のコンビニを目指して足を進める。
途中、白い二階建ての家ほどの大きさの建物がある。
ここは、、、床屋か?
クルクルと回る赤と青、それと白の筋が絡まるようにしてなるサインポールが出ていた事により、直ぐにそうであると判断する。
「、、、こんな所に床屋かぁ、」
俺はそれを眺めながらゆったりと歩いていると、目の前に美を見つける。
それは、先ほど俺が名を聞きそびれた絶世の美女だ。
何をしているのだろうか?
、、、いやまあ、大体は帰宅途中なのだろうが、、、。
まあ、気にせずに飯だ飯――へ?
俺は見た!
突如として現れた黒い手袋を付けたゴツイ手に、華奢な手首が掴まれていきなり美女が消えるところを!
やばい! もしかしたら彼女も異世界の住人なんじゃ――!
いや、素直にやばいぞ。
え、誘拐?
俺、決定的なところ見ちゃった?
えっと、、、いったん様子見だ。
、、、《短縮転移》で、この建物の屋上に登ろう。
「――《短縮転移》」
景色が一瞬のうちに切り替わる。
俺はその淵から、顔を少しだけ出して、下を覗いてみる。
すると、美女に迫る数人の男たちと、口元にハンカチを押し当てられて声を出せないでいる美女本人。
これは本格的にやばい状態なんじゃないだろうか?
「スゥ~、、、《隠蔽》《隠密》」
俺は、《隠蔽》のスキルで、ここにいるという事象を隠蔽し、《隠密》で姿を隠す。
そして、聞き耳を立てる。
「―、―――、―。」
「――。―――!」
やばい、何にも聞こえない。
どうしよう。
いいスキルは無いだろうか?
――――――――――――――――――――――――――
スキル:《破壊の鉄槌》《栄光の聖光》《ステータス》《空間収納》《魔法攻撃無効》《隠蔽》《隠密》《物理攻撃無効》《叡智の神眼》《並列思考》《思考加速》《極限神越》《異世界の扉》《敵意感知》《存在感》《言語理解》《夜行視野》《起死回生》《高速再生》《短縮転移》《蜃気楼》《高速移動》《覇王の威厳》《化煙》《吸収》《威圧》《夢吸》
固有スキル:《攻撃無効》《無限攻撃》《暴食之皇》《盾王の覇気》《魔法遮断》《完全変化》《擬態》
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無い!
どうする?
、、、もう突撃するか?
いや、でもしっかりした情報がないと、、、。
――《ピピ――スキル《盗聴》《望見》を手に入れました》
よし。
これで行こう。
すごい物騒なスキルだし、そもそもこっちでスキルが手に入ってる時点でやばいけど、、、。
この際気にしたら負けだな。うん。
俺はしっかりと耳を澄まして新たに入手したスキル、《盗聴》を使用する。
すると、一瞬だけ、町に燻ぶる騒音が全て頭に叩き込まれて痛みが走る。
だが直ぐに焦点が定まったのか、その騒音は消え、彼らの声が鮮明に聞こえてくる。
『おら、行くぞ。』
『ンンッ! やめて!』
ふむ、強く抵抗しているようだな、、、。
あそこにどんな関係があるかはわからないが――一応、俺も一般男子高校生となったのだ。
美女の味方に付くのは当然だ!
俺は隠密で静かに飛び降りて――
「フゴォ!?」
――一番後ろでニヤついていた男を蹴とばす、、、いや、踏みつける。
その物音に他の仲間も振り向くが、それよりも先に《短縮転移》で美女と男の間に入る。
そして、男の肩をトントンと叩いて――人差し指でぷにっ。
これ、妹とか親によくやられたなー。
まあ、一旦置いておくとして。
こいつらが、どう出てくるかだな。
「んだてめえは!」
ただのグーパン。
ふっ、あまり吠えるな、弱く見えるぞ。
俺はその拳を握って止めると、その拳を握ったまま、その男を振り回す。
するとどうだろう、全員が吹き飛ぶ。
美女と俺を除いた全員が。
俺はその隙を突いて、美女の手を引く。
そして、そのまま走り出す。
少し離れた所まで来ると、物陰に隠れて美女を少し密着させ、《隠密》を使う。
すると数秒後、さっきの男たちが訳が分からないといった様子であたりをきょろきょろと見回しながら歩いてくるのが見えた。
俺はバレないように、《隠蔽》を重ね掛けする。
そして数十秒。
俺は美女を離して、一息ついた。
「、、、あなた、、、同じクラスの、、、闇光君?」
そして、そこで美女の一言が、地味に刺さった。
名前は間違えてはいけませんね。




