残酷な世界の中心で戦う者
初心者で経験不足なところはありますがご了承ください^_^;
綺麗事ならいくらでも言える。何かを得るには他の何かを捨てるのが必然。その真実からはまぬがれない。どちらが正しい選択なのか、果たして正しい選択などあるのか、先のことは知る由もない。それでも運命は彼に託される。
真田高志は平凡に憧れている。可もなく不可もないごく普通な生活を目指している。朝ご飯を食べて学校に行ってバイトに行って帰って夕飯を食べて友達とゲームをして風呂に入って寝る、そんな平穏な暮らしこそ心の豊かさを保てるものだと彼は感じている。彼は何事にも干渉しすぎない事を心がけてきた。干渉するということはその分悩みも悲しみも後悔も伴うということ。彼はそんな感情に抱かれる事を恐れていた。
今日も高志は友人のタツキとツバサと一緒に学校帰りの行きつけコンビニでたむろしていた。タツキとツバサの目当ては毎日夕方の4時からシフトに入っているアリサだ。タツキはコンビニの外から鼻の穴を大きく開け、ナナチキを食べながらアリサを眺めている。「眩しい、今日もアリサがまぶしいッ‼︎」「マジでやめとけって警察呼ばれるぞ」そう言いながらツバサはアリサへ目を大きく広げ少し口角を上げ不気味な笑みを浮かべている。あまりの見苦しさに高志は「マジでやめとけって警察呼ぶぞ」と二人に呼びかけた。はっとした二人はガラスに写っているおぞましい自分の顔を見て正気に戻った。恥ずかしそうなそぶりをした二人は少しして高志に言った。「ていうかお前は異性に興味ねぇのかよ。よくあの美顔を晒されて正気でいられるね」高志自身は可愛いとは思っているが干渉しないよう心がけている。それも高志の幸福のためだからだ。高志は3人で少しゲームをしていたがまた二人がアリサを眺めるのに夢中になり高志の声さえも聞こえない状態に陥っていたため高志は警察に通報し、その場を後にした。家に帰って誰もいない4畳のアパートでご飯を食べ、風呂に入り、歯を磨き、ゲームをして寝る。今日もいつもと変わらない高志の1日のように思えた。その日の夜高志はベッドでアリサのことを考えていた。さっきは興味のないそぶりを見せていたが高志も男だ。人並みの異性への興味はある。高志はアリサとは隣の席で話すことも多く、実のところアリサは高志の事が好きだった。それを知っている高志はそのことについて考えずにはいられなかった。
次の日の朝、高志は寝坊した。今まで寝坊などした事なかったのに。はじめての体験だったのか高志は大慌てで、髪も整えずご飯も食べず、起きて1分で家を出た。しかし交差点を止まっている時、今日提出の書類を忘れたことに気づき、家まで大急ぎでペダルを回した。しかしその時、坂道でチェーンが外れた。とっさにブレーキを握った高志は勢いよく吹っ飛んだ。そして曲がり角から出てきた車と衝突した。とんだ厄日だ。もし昨日アリサの事など考えず寝ていたら寝坊などせずいつもの平穏な日常を送れたのに。やっぱり干渉は人生を狂わせる。そんな事を考えながら高志はゆっくりと息を引きとった。