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第4話 校舎裏、残敵

週明け。


佐倉の表情が気になる。

俺を見つけると、安堵したかのような顔になり、一緒の時間は大体が笑顔なのだが。

学校が近づくと、決まって少しだけ影が差したように思える。

「佐倉。もしかして、まだ何か悩みがあるのか?」

「わたしですか・・・?あー、うーん。まあ、そんな所です。」

えらく歯切れが悪い。

「俺でよかったら、力になるよ。」

「・・・ありがとうございます。ひょっとしたら、何かあるかもです。」

「そっか。」

その場では話してくれなさそうだったので、俺はそれ位にして、他愛も無い話に講じた。

朝の別れ際。

「先輩。また放課後の4時に。」

「ああ。待ってるから。」

そう言いながら俺を見る目は、何かを訴えかけているように見える。

確信。

佐倉は言ってくれなかったけど。

助けを求めている。

――よし、わかった。放課後だな。

事が起こるとしたら、例の放課後だろう。

俺はずっと気にしながらも、授業を切り抜ける。

時間の進みが、あっという間に感じられ。

気付けば、放課後になっていた。


おかしい。時間になっても佐倉が来ない。

SNSにメッセージを送ってみたが、帰ってこない。

既読もつかない。

―これは、やっぱり何かあったな。

俺の『先輩』としての勘が、佐倉に何が起きているのかを察する。

―多分、校舎の裏だな。

とてもベタな場所だが、俺も経験者なので見当がつく。


校舎裏



考えたくは無かったが、案の定勘は当たってしまった。


女子生徒数人が、佐倉を取り囲んで詰め寄っている。

「豚に助けられたんだって?」

あんたのせいであたしの彼氏捕まったじゃない。どうしてくれんのよ!」

「お前てか男に媚売ってんだろ?」

「わたしはそんなこと・・」


・・・よくよく見れば、俺のクラスの奴等じゃないか。

以前の俺なら、こういう時自分から首を突っ込むことは避けていただろう。

でも。

今は違う。

俺は平然とその真ん中に躍り出た。


「おい、何やってんだお前ら。」

「村上先輩!」

「はあ!?なんで村上がこんな所にいるんだよ?」

「お前には関係ないだろ豚。帰ってブーブー鳴いてろ。」


「断る。佐倉は俺の同好会の部員だ。部長として放っておく訳がない!」

俺は佐倉の手をつかむと、その体を半ば強引にこちらに引き込んだ。

「部長?お前が?似合わねえー!」

「あれか?養豚所でも見物するのか?」

「わかった!相撲部だろ!ちょっとしこでも踏んでみろよ。おーデブはこわいこわい。」

何と言うレパートリーの少なさ。

それしか言うことは無いのか。

半ば呆れかえる俺。

不安そうに見つめる佐倉。

「先輩、平気なんですか・・・?わたし・・・怖くて・・・!」

「大丈夫。俺はこう言うのは慣れてるから。」

「はい!」



俺は再びそいつらに向き直る。

「似合わなかろうが結構。お前らに理解してもらおうとは端から思ってもない。」

「・・・はあ?」

「残念だったな。あいにく俺はこういうことに慣れっこでな。いつもは悪だくみをしている放課後の教室に居なかった時点で、大方予想はついたさ。」

「何!?」

「大体、お前の彼氏が捕まったのは、俺の財布を盗んだからじゃないか。それを佐倉に当たり散らすのはお門違いだ。」

「・・・!」

「佐倉はただ絡まれていただけだし、文句があるなら俺に言えば良い。今までみたいにな!」

「なっ・・・!」

「この野郎・・・!」

―言い返すこともできないか。

拳を握りしめ、今にも殴りかかってきそうだ・

「・・・力に訴えるか?俺はそれでも構わないぞ?それ位でひるみも退きもしないぞ!」

「言わせておけば・・・!」

「ほら、どうした。さあかかってこい!相手になってやる!」

佐倉を背中に回し、一歩も引かない構えで攻撃の態勢をとる。

しばらくの間、にらみ合いが続いていたが。

「こいつめ・・・!」

「・・・畜生!覚えてやがれ!」


―どこのテンプレ悪役だ。リアルでその台詞初めて聞いたぞ。

実際悪なのだけれど。


吐き捨てると、そいつらは去って行った。

「先輩!本当にありがとうございます!・・・2度ならず、3度までも!」

「これで、男女ともに厄介な連中は退けた。もう大丈夫だ。」

「あの!・・・わたし・・・!わたし・・・!」

何か言いたそうだが、言葉にならないようだ。

佐倉は俺にしがみついたままだ。

余程怖かったか。

「ごめんな、ウチのクラスの馬鹿共が迷惑かけて。」

まだ少し震えている佐倉の髪を、優しく撫でてやる。

「最近、あの人達からあんな風に絡まれるようになって。多分この間のことなんでしょうけど、やっぱり先輩には迷惑かけちゃいけないと思って。」

「それで、朝は歯切れが悪かったのか。」

「でもわたし、本当は怖くて!もし先輩が来てくれなかったらって思ったら、わたし・・・!」

「何回来たって同じだ。あれは俺の問題だし、俺が何度でも佐倉を守ってやる。妙な言いがかりをつけてくる奴は返り討ちだ。」

「・・・はい!」

三度笑顔を取り戻した佐倉は、何度見てもまぶしい笑顔で俺を見上げてくる。

今日退散した連中の外には、いじめの中心的存在だった奴はもういない。

―恐らく、もう来ることは無いと思うが。

考えて見れば、今日奴らが引き下がったと言うことは。

佐倉はもちろんのこと。

俺も平穏な日々を送れるかもしれない。

久々に、そうやって晴れ晴れとした気持ちでいた。


気持ちが落ち着いてくると、気になってくる、感触。

「あの・・・佐倉?そろそろ、離してくれない?」

「いやです。まだ怖いですもん。もうちょっと、先輩にくっついていたいです。」

「お、おう。」

佐倉の、色々な所があたる。

柔らかい、身体。

胸とか。

―よし、考えるな。無心になろう。

このままは、流石に恥ずかしいのだけれど。

佐倉は、そんなことを知ってか知らずか。

しばらく、俺から離れなかった。


読みいただき、ありがとうございます。


「面白かった!」


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