日本政府に懇願されたワタシは女性猟師としてデビューする事になりました。
H県某所山林。12月某日。年も押し迫って来ると流石に空気もキーンと冷え、鼻先を覆っているネックウォーマー越しに呼吸をすると幾分温んではいるがやはりそれなりに冷たい。幾分温んだ空気をゆっくりと、一定の間隔で浅く呼吸をし肺へと送り込む。
右腕に付けた時計をチラリと視線を送る。AM4:20
辺りはまだ暗い中、少し高台の藪の中に彼女は居た。周りからはカモフラージュされ余程近くに寄らなければ誰も気付く事はないくらい見事に偽装されている。彼女ー美咲・クラウディア・楢崎・ライデンバッハ
日系アメリカ人の17歳の少女は害獣駆除執行官として日本政府機関からスカウトされ4ヶ月前から活動している。本来アメリカですら正式な銃所持ライセンスは州にもよるが大体21歳からである。10歳の折諸事情により叔父夫婦の元へ養子となりアメリカ人となった彼女は自然豊かなカナダ・ユーコン近くのアラスカ州で叔父夫婦の営むハンティング・フィッシングやスキー、ホースキャンプ等の娯楽ガイドサーヴィスの助手をする様になりその中で野生動物やフィッシング・ハンティングガイドの経験を積んでいたが丁度一年前不慮の事故で叔父を亡くした処に日本から来たスカウトマン達から勧誘、何度か断ったものの凡ゆる条件がクリアされ余り気が乗らないまま日本へと戻ってきた帰国子女である。177cmの長身、女子にしては怒り肩のやや逞しさすら感じるボディに筋肉質の長い手足に長い黒髪をカチューシャで纏めてニットキャップで髪が散らない様被っている。口元はネックウォーマーで隠れているものの街中で見掛ければ皆振り返って見るくらいの美少女である。しかしその眼は鋭く力強く い。ちょっと近づき難い雰囲気を周りにふりまいている。軽い気持ちでナンパでもしようものなら彼女ークラウディア、短く クロエ は平気で殴り付けるだろう。
もうじき夜明け前。その直前、夜明け前の闇がより深くなる一時。クロエは息をそっと鼻から抜くのと同じ時間を掛けて呼吸をする。腕時計に向けていた視線を戻す。戻した先は暗視装置に熱感知フィルタの付いた双眼鏡ー覗き込んだその狭い視線の中は薄いグリーンに染まった景色がハッキリと映し出されていた。太陽の下、偏光レンズの入ったサングラス越しの景色に似ているー一瞬そんな言葉が頭をよぎったものの又直ぐに視線の中に意識を集中させた。
そろそろか。ー彼女は頭の中で呟いた。
この場所に陣取って既に7時間というところか。冷たい空気を吸い続けている為か、 頭の中は外気と同じクリーンでクールな状態を保ち続けている。
防寒の為に纏っているダウン製の迷彩ブランケットを頭からスッポリと被り三脚に固定した双眼鏡を左手にある山側にユックリと動かしながら目を凝らしたその瞬間ー山の裾野から先に広がる田畑へユックリと一匹、又一匹と姿を現した。
来た!ーー
心の中で呟くとまた一つ静かに呼吸をする。
辺りを警戒してか、中々畑の方へ移動しようとしない。その間も山の裾野の藪の中から小さな個体が出て来ては戻り、又現れるーちょっと焦れる時間がジリジリと過ぎていく。
早く全部出て頂戴。無駄に時間を使うのは好きじゃ無いのよー
藪の中にいる個体ー暗視装置のみならば分からないが熱源探知フィルタのスイッチを入れてあるので何匹いるのかも既に分かってはいるー、が、安全な山と地形、藪から引き離すことで遮蔽物の無い場所で一匹でも多く処分する、此方側に有利な状況を作り出す為今はまだ動けない。いや、動かない。
どうやら群れのリーダーらしい一際大きな個体が藪のに向かい小さく鳴くと一瞬の間を置いて小さな個体とそれより一回り大きな個体が わらわら と飛び出して来る。大型のリーダーを先頭に畑の真ん中へと移動を始めた。それに続く大中小の個体。大型が4。中型が6。小型が13。群れは2ファミリー、若しくは1ファミリーの群れらしい。一匹でも多くの個体を屠る為、成るべく山から離れた所で餌を食べるのに夢中になり警戒心が薄くなるまで待つ。
この辺りの農家からの依頼で害獣駆除の依頼を受けたのがつい1週間前、数日を掛けて彼等の動きのローテーションを調べる為、夜は粗こんな感じだ。毎夜飽きる事なく現れる個体ーその正体は猪だった。この山を縄張りに辺りの集落の畑を回って荒らし回っている。一通り食い尽くすと次へ、また次へと移動する。普通警戒心が強い猪はひとだところに集中してというのはあまり無い行動だったが、この個体達は少し変わっているのか食い尽くすまで通い続けた為場所と時間、数の特定がし易かった。そうこうしているうちに広い畑の粗中央、未だ彼等に荒らされていない芋畑を掘り始めた。腹を空かせているのだろう、大中小全ての個体が地面へ向かってしきりに頭を動かしている。その姿を見て彼女はー動いた。ゆっくりと。
断熱材を地面に引いて座っていた彼女は音を立てない様ユックリと膝立ちになり断熱材の上に寝かせておいた仕事道具、 M4カスタムを構える。そっと藪から音も立てずバレルが突き出し彼等へと向けられる。狩猟用、200mの距離で中型獣を倒す威力の為5.56㎜から6.6㎜、300AAC・blackoutへ変更、これはアフガニスタン等では中距離射程での威力不足から要望され開発された弾で308だと重い重量、強いリコイルによる反動抑制、コト狩猟に関して言えばリサイティングに時間が取られ結果的に仕留める数が減る。威力と射程を天秤に掛けここに落ち着いた。猪や鹿等の中型獣ならばこの口径で事足りる事、そして万が一数量が多い場合の途中の弾切れを予防の為30rdマガズィンを使用している。しかし何故狩猟にバトルライフルなのか?
これは単に扱い易い…のとこの口径へのオプション変更が1番イージーなのがAR系バトルライフルだった為。彼女はチャンバーまで弾を装填、セフティを掛けたM4カスタムを双眼鏡を覗いている間中ずっと銃口を空に向けた状態で左腕を絡めるようにして保持していたした。不意に獲物が現れても行ける様、腕を下ろせば射撃状態に入れる準備は出来ていたその時が来た。一連の動作に全く無駄は無く彼女はバトルライフル構えると獲物が居る200m先の畑へと銃口を向けると何の迷いも無く銃口がピタリと止まる。その遥か先には今日の獲物達が今から自分達に死という絶対的終焉が待っている事も知らず平和そうに作物を漁っている。ロングブルバレルの先端には少し長めのサウンドサプレッサが付いており4方向にビィカティニーレールの付いたレシーバー、伸縮タイプのストック、レシーバー上にあるビィカティニーレールには4倍のリューポルドスコープ、そのさらに上にナイトドットサイトを付けている。中には赤い光点が自己主張するかの如く瞬いている。カマボコ型のサイトの中でリーダーの猪を捉えるとその急所ー丁度此方を向いている。畑に出るまではあんなに注意深かったのに一旦餌に有り付くと食べるのに夢中になり過ぎてる彼等を見て彼女は少々あっけに取られながら。
野生といってもこんなもんか…そう思いながらドットサイトを左前脚付け根に赤い光点を重ねる。浅く呼吸をしその呼吸を止める。構えたM4が安定すると一拍間を置いた次の瞬間、彼女は左手の人差し指を引き絞る。
プシュ!エアガンを空撃ちしたかの様な小さな音がしたと同時にサイトの中のリーダーは上半身を少し跳ね上がる様にしてその場にー倒れた。
バイタルエリアに当たった為ピクピクと痙攣してはいるがその場から動かない。
食べるのに夢中だった他の個体は未だ事の次第に気づいていないのか未だ夢中で土の中の芋を食べるのに夢中である。先ずは統率するリーダーを倒し群れを混乱させる。リーダーのいない群れは勝手に動き回りより多くの個体を処理できる。取り敢えず次の個体、大型のオスを狙う。観察によりもう目星は付いている。群れのサブリーダーのオスをサイティング、やや右向き。左前脚付け根バイタルエリアが丸見え。
運が良いー彼女は思った。
ユックリ呼吸をして一瞬止める。そうする事で銃が安定、呼吸による上下運動が止まった所でトゥリガーを引き絞る。一拍置いた次の瞬間この個体は倒れたまま動かない。痙攣すらしない。動かない事を確認すると次の個体大型のメスを狙う。流石におかしいと思ったのだろう、一匹の大型のメスが首を擡げ周りを見回している。反射的に彼女はこのメスを狙う右側を此方に向けている。右前脚付け根をポイント、2射。一発だとバイタルエリアに当たらず暴れられたり騒がれると厄介だったのだ。当のメスは2射のお陰かバイタルエリアを破壊された為その場に倒れ伏し動かない。大型最後の一匹、メスは食べるのに夢中になってしきりに鼻っ面を土の中にねじ込んでしきりに動かしている。
此方は左前斜め向き。一連の動作後彼女は再びトゥリガーを引き絞った。
バイタルエリアを無理なく貫通、その場に伏せる様には倒れ込んだ。この間約8秒弱。装備が良いとは言え恐るべき腕である。後は中型個体6、小型個体13流石に中型個体の中にはおかしいと思ったのだろう、山へと駆け出す物がいたが彼女たち真っ先にこれを射ち倒す。左に山ーそう、体面は左。移動物体のバイタルエリアを一瞬で捉えて撃ち抜く。神業である。獲物はピクともしない。パーフェクトキル! 普通獲物の異動先を先読み、弾の到達スピードを計算しての予想射撃。どんなに良い腕であってもリーチを含め数秒は掛かる筈なのだが。正に彼女は狩猟の女神ーアルテミス の化身と思わせる程見事な腕である。周りの異常を感じて中型個体の残りが其々動き始める。どうして良いのかわからずその場でオロオロするもの、倒れた大人に寄り添うもの、小型を山へと誘おうと鼻先で突いて追いやるもの、明後日の方向へと駆け出し逃げるもの…どうして良いのかわからずを辺りを走り回っている瓜坊達…彼女は山へと数匹の瓜坊を誘い逃げようとする中型個体を狙う。瓜坊を気にしてかかける速度は遅い。その為狙うのは容易だった。
プシュ!プシュ!プシュ!…数回のエア漏れ音擬きがした後…瓜坊を率いていた中型と瓜坊4匹が倒れている。スコープ中で動かないのを確認すると次の獲物を見定める。明後日の方向へと逃げた個体、それは運悪く彼女の方へと向かって此方へと一直線に向かって全力疾走している。粗、正面。首元が見えれば頸椎を狙えるーが後頭部が邪魔をしているので見え難い。その為彼女はためらう事無く正面頭蓋骨を3射。粗、一点に当たり頭蓋を破壊、脳を砕かれた猪は脚をもつれさせて転んで前のめりに倒れそのまま動かなかった。
彼女は何も無かったかのようにスコープを戻す。
後、4と9…
頭の中で数を半数しながら次の個体を探す。
あと残り4匹の中型。その内1匹がようやく我に返り山へと向かい駆け出していた。変わらずバイタルエリアから他の花が咲き山まで後50m程残して山に向かい四肢を天に向けて痙攣されている。
ま、大丈夫か…
次の個体を探す。死んだ大型個体に鼻をすり寄せ周りから離れずにいた。
コリャ、パーフェクト狙えるかな…
そう思うと、狙い易い個体から躊躇いすらなくドンドン狙い撃った。
3射3中!無駄弾を撃つ事無く終わらせた。この女に狙われたモノは一体どうなってしまうのだろう…逃れることができるのだろうか…
感慨に耽ることもなく彼女は残りの個体。瓜坊9匹の掃討へと入った。
せめて一瞬で終わらせてあげるから…
残り9匹を探す。山に向かいトテトテと走る4匹が…
先頭を走るのから順番に、
パシュ!パシュ!パシュ!パシュ!…
発射音毎に前からパタパタと転がる様にして倒れて行く。其々動かない事をスコープ越しに見て取ると、
後5匹…小さな言葉が口から漏れ出たのを彼女は理解しているのだろうか…
いつのまにか辺りが段々と白んでいた事に気付くも山影になっている為日が開けるにはもう少しかかる…視野が広く見つけ易い双眼鏡を覗き込むと彼女は直ぐに見つけ出し暫く動かなかった。死んだ大型個体と中華個体の周りから離れず寄り添いピーピーと、鳴いている瓜坊が3匹。その周りで訳なく走り回り疲れて動けなくなったのだろう、2匹が其々離れだ場所で蹲っている。
…。何も語らず、フゥッ。と、軽い溜息を吐き、空気をユックリと鼻から吸い込むと銃を構える。最早躊躇いなどカケラも無い。その視線は暗い闇も、憂いも、哀しみも、感動も、涙も、嗤いも無い。唯真っ直ぐ、対象を静かに見つめている。サウンドサプレッサに消された銃声が5つ、乾いた山の空気の中を響いて消えた。朝日が昇り辺りを照らし始める。動くものは何も無い。唯、少し冷たい山からの吹き下ろしが彼女、
アルテミスの身体を撫ぜる様にして吹き抜けて行っただけだった。
パーフェクトワーク。一言そう言葉にするとアルテミスと例えられた彼女、美咲・クラウディア・楢崎・ライデンバッハ特別狩猟管理官は専用のスマホを取り出し電源を入れ立ち上げるとどこへなのか電話を始める。画面上には上条担当官と表示が出ている。数回のコールの後、TVフォンが立ち上がり画面に現れたのは何時ものショートヘアのおぼこい女…では無く眼鏡をかけた長い髪の毛を後ろに束ねた生真面目そうな歳の頃30半ばの美人ではあるが見るからにお堅い女性がスーツをキチッと纏った姿で現れた。その姿を見てクラウディア、クロエは思わず眉を挟める。この番号は彼女、クロエの担当官である上条担当官の物。しかし出て来たのは上条担当官の上司でありこの部門、狩猟庁第2区・近畿地方担当管理官、つまりクロエ達が所属している近畿ブロックのトップである八百万管理官その人だった。
おはようございます、クロエさん。
時間が時間なのだが彼女は眠そうにも疲れたそぶりも見せず彼女を見つめながら話し掛けてくる。
グッモーニン。 訝しそうに返礼したクロエの態度に、彼女が応える。
上条担当官は有給消化中です。
その返答に対しクロエは苦笑いをしてすっかり夜が明けた空を見上げて思った。
人が寝ずに仕事してるのにアナ女…テメエはヴァケィションだとぅ! ざけやがって!あのカマトト糞ガール! 帰ってきたら…!
彼女の心中を察しているではあるだろうが顔色一つ変えず
あなたから連絡があるという事は…仕事が無事終わったという事ですね? それで結果は?
生真面目な口調で担当官が問うと、
パーフェクトワーク。
一言だけ答える。
個体数は?と、此方も事務的に問うと、
大型オスと2メス2の計4。中型計6。小型…瓜坊が13、中型と瓜坊は性別判別して無い。
トータル23…各個体数からしてハーレムと言うよりファミリー…ね。了解しました。至急処理班を車両を送りますので現場保護の為もう暫くそこで待機して下さい。後、明日迄に各種報告書の提出も至急お願いします。では、ご苦労様でした。
ヤー。一言応えるとクラウディアは即座にスイッチを切った。
本来ハンターならば獲物に対しその肉を食する為即座に回収、処理を始めるが彼女の仕事は特別狩猟管理官は被害が出た各担当地域を周り管理担当動物の数の管理、処理を行う為仕事から個人的に処理を行う機会が無い、と言うか数をこなさなければならない場合が多い為中々有り付けない…と言うのが実の所である。その為彼等彼女等の仕事の後始末には専門部隊が有りこれらの処理を引き継ぐ。頼んでおけば取っておいてくれたり処理してくれる。今回のような短期決戦がた作戦にはオートマチックバトルライフルをカスタムした物が使える。が、基本223口径は使えない事になっている。この辺りの説明は又いずれ…
ひいていた防寒マットに ドッカリ! と座るとライフルをケースに入れ、ザックの中からカセットガスバーナーを引っ張り出して湯を沸かす。カップ一杯分などすぐに沸く。熱いコーヒーを作りそのまま口に運ぶと苦味と適度な酸味が熱さと相まって胃の中へと運ばれていく。ブドウ糖のアメを袋から数個取り出すと口に運ぶと甘さが口腔内に広がり脳に栄養が行き渡り元気になるのがわかる。疲れた体にも良い感じに栄養が行き渡る。甘ったるい口腔内をコーヒーで流し込む。冷たい風が彼女の頬を撫ぜていく。眉の上まで被っていた黒い薄手のニット帽を捲り上げる様に取るとニット帽の中に押し込まれていた黒く豊かな髪が彼女の体へと落ちて来る。それを見ていたかのように風が再び巻き起こり彼女の豊かな黒髪を天高くへと舞い上げた。クラウディアは前髪を抑えるようにして再びニット帽を被るのだった。と、同時にどこからとも無く処理班を乗せた車両が近づいて来るサイレンの音が近づいて来るのが聞こえた。クラウディアは立ち上がると、
さぁ、引き上げ準備を始めるか…
小さく呟くとぐっ!と背伸びをするのだった。
その時背後から荒い呼吸音が聞こえるのを彼女 クロエは聞き逃さなかった。
フーンッ!フーンッ!フーンッ!…
呼吸音が聞こえる背後へゆっくりと首を向けるとそこには今日仕留めたどの大型個体よりも大きな猪がクロエを睨み付けている。距離にして15m程か?その猪はいつ掛かってきてもおかしくない程呼吸を荒く見出し体勢を低く構えている。
こいつどっから湧いて出た?
多少の戸惑いと焦りを感じ驚いたものの流石に彼女は直ぐに冷静さを取り戻すと同時に足元にあるはずのライフルを顔を動かさずに目線を動かして探す。銃は彼女の右脚の側にあった。が、残念ながら既にガンケースの中に納まっている。
自分の状況に心の中で悪態をついた。
かーっ!なんてこったい!コリャ銃を引っ張り出している暇は…無いな…じゃ、仕方ないな。
そう思うと同時に着ていた迷彩柄のジャケットの前を右手で跳ね上げるとー 其処には左向きやや斜めに付けられた黒い革製のホルスターに納まった大型拳銃ーがウエストガンベルト正面にドン!と鎮座していた。そのハンドルに手を掛けたと同時に相対している猪は これぞ合図! とばかりにクロエへ向かって駆け出している。クロエは焦る事無く左手で銃 闇の様に黒いスタームルガースーパーブラックホーク44レミントンマグナムを引き抜きながらハンマーを起こしつつ銃口を迫り来る猪へと向けるや、引き金を引いた。
ドン!!!ドン!!!
2発の鼓膜をつんざく銃声と共に辺りを衝撃波が走る。その途端、
ピギーーーッ!
と断末魔の叫びを上げ頭の中心から血を吹き出しながら怒りの猪は…彼女の左横を掠める様にして数メートル後ろで崩れ落ちた。240gr・APアーマーピアッシング弾頭により硬い頭骨に穴を開け続け様に放たれたJHPジャケッテッドホローポイント弾頭により脳を吹き飛ばされた猪はピクリとも動かなかった。
フウゥーーッ!
大きく息を吐きブラックホークをホルスターに戻しながら呼吸する。生きた心地がしない一瞬を体験した所為か、背中から腋から嫌な汗が噴き出してくるのをクロエは感じながら、
あ〜早く帰ってシャワー浴びてぇなぁ。腹も減った…そんな言葉を呟くのだった。
終わり