プロローグ
「契約は成立だ。君はこれで、人ではなくなった。これから君は、どんな時を刻むのかな?そばで見させてもらうよ。」
「やあ君。僕と契約しないかい?」
そいつは突然現れた。
中学二年の夏休み。昼時。
家で一人、カップ麺をすすっている時だった。
机を挟んで反対側の席に、滲み出るように出現したんだ。
セーラー服を着た美少女だった。腰まである長いストレートの黒髪を後で一つ結びにしていた。鮮やかな桃色の淡く輝く瞳意外は、人間と姿形の違いはなかった。いや、ほくろもそばかすもない、日焼けも全くしていない正しく白皙と呼ぶべきその肌と、左右対称の完璧なシンメトリーを体現する顔の造形は、多少違和感があったな。整い過ぎていて、こいつは同じ人間どうか疑問に思ったぐらいだ。まあ、突然何もないところから滲み出てくるようなやつが、普通の人間であるはずがないんだが。この疑問は、すぐに正解だったと知ることになる。
が、まあそれは今は置いておこう。
そいつは表れるなり、冒頭の言葉で契約を持ちかけてきた。
しかも、頬杖つきながら流し目を送る、実にあざとい仕草でだ。
そんな言動をする、いかにも怪しいそいつを前に俺は、
フーフーフーフー
ひたすらカップ麺を冷ましていた。。
フーフーフーフー
「・・・」
フーフー、ズゾゾー
「・・・」
ハグハグモグモグ、ゴクン
「・・・」
フーフーフーフー
「ねぇ…」
フーフー、ズ…アチッ
「ねぇちょっと…」
フーフーフーフー、ズ…ズゾゾー
「…無視はひどくないかい?」
ハグハグモグモグ
「あれ?もしかして僕、見えてない?え、君、見えてるよね?聞こえてるよね?」
ゴクン
「おーい、聞こえ「うっせえ!食い終わるまで待て!」…はい。」
ラーメンを食うのを邪魔されてちょっと苛立って怒鳴ったら、そいつは本当に食い終わるまで待ってた。何が面白いのか食ってる顔をずっと眺めてきてたのは鬱陶しかったが、案外良いやつなのかもしれない。
「さて、これでようやく話を聞いてもらえるね!」
「残念だが、人の家に不法侵入してくる輩の言葉を聞く耳を俺は持ってない。」
「待った意味!」
「というわけで、俺の代わりに話を聞いてくれる人を呼ぶから感謝して待ってろ。」
「わーいありがとー、ってならないよ!?何110番押そうとしてるの!?」
「家に不法侵入してきた不審者がいるから。」
「正論!いやいやちょっと待ってって。こんな美少女が頼んでるんだから話しぐらい聞いてくれてもいいんじゃん。」
「悪いが俺は、アルビノロリ巨乳美幼女がタイプなんだ。」
「そんな子がリアルに存在すると思ってるのかい!?」
「諦めたら、そこで試合終了だ。」
「君の場合はまず始まってもいないよ!?現実を見なよ!」
「大丈夫だ。最終手段として美幼女にアルビノロリ巨乳のコスプレしてもらうという…」
「いやだめだよ!?全然大丈夫じゃないよ!?何幼女に手を出そうとしているんだい!?」
「別に出そうとしてはいない。あくまでやむを得ないときの最終手段として、そういう選択肢もあるという…」
「いや選択肢にも入れちゃだめだよ!?イエスロリータノータッチという紳士としての鉄則はどうしたんだい!」
「ナニソレ美味しいの?」
「もうダメだこいつ!」
そう言って、そいつはテーブルに突っ伏した。
騒がしいやつだなぁ。