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花乙女と死神王子の花想曲  作者: 島田莉音
1、受け継いだ二人
9/26

過去を生きた者達から、未来に生きる者達へのプレゼント


おぉう……珍しく三日連続更新……。


書きたくて書いてみた『悪役令嬢わたくしのおかしな侍女−ヒロインは最推しに幸せになって欲しい−』(同時刻投稿)も含めて、よろしくねっ☆

 








「さて……父上の嫌がらせとベアトリーチェの父君が不安がる必要が無意味だったと分かったところで、今後の話をしようか」





 リヴィエの言葉に、ベインは今だに少し脱力した様子で……質問した。


「今後、と言っても何を話すんだい?」

「簡単に言えば、俺がどう動くかだな。このまま王宮で暮らすこともできるが……上手くいけば王宮このから抜け出せるはず」

「………? ()()殿下ならば、誰にも知られずに王宮を抜け出すなんて容易いのでは……?」


 ベアトリーチェの疑問も最もだろう。

 闇魔法の使い方を知ったリヴィエであれば、その力を使って自身の身を守ることも、この王宮内で誰にも見つからず好きなことができる。

 それこそ王宮から抜け出し、戻るなんて朝飯前のはず。

 だが、リヴィエはそれに気づきながらも首を横に振った。


「確かにな? 今の俺ならそれぐらい簡単だ。だけど、隠れてコソコソ動いて変な勘繰りされたら堪ったもんじゃないだろう?」

「その隠れてコソコソすらバレないようにできるのではないんですの?」

「できないことはないんだけど……できれば公的に王宮を出たことにしたいというか」

「公的に?」

「今のところは問題ないが……王宮内で何かしらの問題が起きたら、確実に俺が犯人扱いされるからな」


 今のところ何も起きていないが……王宮という場所の本質は魔窟だ。

 陰謀と策略が渦巻き、誰もが足の引っ張り合いをし、権力争いのために裏では様々な思惑が飛び交っている。

 そんな場所で、もし王位継承権第一位である王子に暗殺騒ぎでも起きてしまえば。

 例え、冤罪であろうと問答無用でリヴィエが犯人扱いされるだろう。

 闇魔法を使うからというちっぽけな理由で、誰もリヴィエのことを信用してくれないし……逆を返せば、彼ほど罪をなすり付けるの(スケープゴート)に最適な人物はいない。

 ゆえに、それを回避するためにもリヴィエは公的に王宮から姿を消す必要があった。


「このままここにいたら、幸せになるどころか陰謀の最中に放り込まれてしまう。だから、何か良い案はないか?」

「…………」

「…………」


 黙り込むベアトリーチェとベイン。

 冤罪に巻き込まれる可能性が高いならば、リヴィエが王宮から出て行くのは必要な措置だろう。

 三人は頭を悩ませるが……。




 その解決策は案外早く提示された。




『…………ならば、我が王に責任を取らせるため……ルフト侯爵家で教育するために連れ帰ると言えば、公的に王宮から出れるのでは?』

「…………ふむ。それは案外、良い言い訳になーーーーうわっ⁉︎」


 リヴィエは驚きながら、右側に振り向く。

 そこにいたのは……ソファの肘掛けにちょこんと乗っかった生き物。

 まるで星を散りばめたような煌めきを放つ、夜空色のフクロウのカタチをしたモノ。

 ベインは初めて見る珍妙すぎる生物にギョッとするが……ベアトリーチェ達はもっと驚いていた。


『ふぉふぉふぉっ‼︎ ()()()()()と言うべきでしょうかな、リヴィエ殿下。ベアトリーチェ様』


 好々爺とした雰囲気で笑う……その梟の姿をしたモノの名前は、ニルギス。

 リヴィエの前世、夜空の王に仕えていた《闇の精霊》。

 思慮深く、博識であり、夜空の王の頭脳とも言える……賢獣ならぬ賢精と呼べる存在だった。

 ベアトリーチェとリヴィエは、ニルギスの姿を見て言葉を詰まらせる。

 永き時を生き、心の機微に敏感なニルギスはそんな二人の本音を簡単に見透かし……柔らかく笑った。


『どうされましたか?』


 優しい声で聞かれて、ベアトリーチェとリヴィエは互いに顔を見合わせる。

 そして……小さな声で呟いた。


「…………その……どうして急に……姿を……」

『それは勿論、知恵が必要となれば儂の領分だと思ったからですぞ。()()()()()()リヴィエ殿下は闇魔法を嫌っておったようですからな。下手に儂が姿を見せますと余計に拗れると思ったゆえ、姿をお見せしませんでしたがな』

「「………………」」

『ふふっ、お二人は深く考えすぎですな』

「「っ‼︎」」


 ニルギスはバサリと翼を広げ、リヴィエの膝の上に乗る。

 そして、諭すような声で二人に告げた。


『確かに、儂が仕えていた方は夜空の王とその奥方です。そして、お二人はその記憶を待てど赤の他人。儂がお二人に協力する義理はないと、協力してもらうことを躊躇ためらうのも一理ありですな』


 そう……二人が言葉を詰まらせた理由はまさにそれだった。

 ニルギスの主人はあくまでも夜空の王。

 記憶を引き継いでいても、結局は他人である自分達にニルギスが協力するのは……違うのではないかと思ったのだ。

 しかし、ニルギスはそんな思いを払拭させるように言い放った。


『儂が姿を見せたのは夜空の王の縁が理由ですが……それでも、難しいことは考えずとも良いのです』

「でも……」

『でもも何もありませぬ。持っているのなら、知識であろうが、力であろうが、過去の縁であろうが、他者の縁であろうが使えるものはなんでも使うがよろしい。使わずに宝の持ち腐れになる方が損となります。こうして儂が若き少年少女に協力するのは……過去に生きた者達から、未来を生きる貴方様方へのプレゼントだと思いなされ』

「…………プレゼント、ですの……」

『難しいことを連ねて言いましたが……ただ儂が若人のために力を貸したいのです。それでは駄目ですかな?』


 その優しい言葉に苦笑が溢れる。

 色々と余計なことを、難しいことを考えすぎてしまったらしい。

 二人は難しいことを考えるのを止めて、吹っ切れたように笑った。


「…………ニルギス。俺達に力を貸してくれるか?」

『勿論、任せなされ』

「うふふっ、ありがとうございますわ」


 ベアトリーチェはニルギスの頭を撫でる。

 夜空色をしていても、その感触は普通の梟と変わらない。

 その温もりに、彼女はふわりと微笑んだ。


「…………サラッと無視されていたが……説明を求めても構わないか……?」


 ふんわりとした雰囲気になっていたが……その声で二人は忘れかけていたベインの存在をハッと思い出す。

 慌てて説明しようとしたが……それよりも先にニルギスが自ら自己紹介をした。


『儂はニルギス。《闇の精霊》とも言える存在じゃ。リヴィエ殿下とベアトリーチェ様に力を貸すことにした。まぁ、要するに参謀役じゃ。よろしくお願いする』

「…………闇の……精霊……?」

『そうじゃ』


 それ以上説明する気はないと言外に語るニルギスに、ベインは黙り込む。

 リヴィエは苦笑しながら、ニルギスの頭を撫でた。


「まぁ、味方になってくれたってこと。さて……早速、提案を聞かせてもらっても?」

『うむ。ただ、ベアトリーチェ様の父君が国王に〝殿下を教育のため、領地に連れて帰る〟と言えばよろしいかと。あの王は短慮であり、愚鈍なり。多少言い訳に無理があろうと、リヴィエ殿下がいなくなるならばと喜んで賛成するかと思われますぞ』

「そんな簡単に上手くいくか?」

『ご安心を。姿を見せるのは遅くなりましたが、今までの情報収集は怠っておりませぬ。国王を観察し、性格を判断した上で提案しておりますゆえ』


 それを聞いて、ベアトリーチェとリヴィエは頷く。

 ニルギスの提案で失敗したことはほとんどないと、過去の記憶が教えてくれる。

 多少予想外なことが起きることもあったが、それも直ぐに修正できる程度ばかり。

 情報収集、相手の分析を経ての提案ならば問題ないと、二人は判断する。

 ベアトリーチェは父に視線を向け、お願いした。


「ということで、お父様。お願いしますわね」


 にっこりと微笑んでいるが、その笑顔は有無を言わさぬ気配で。

 ベインはヒクリッと頬を引き攣らせた。


「拒否権はないのか……?」

「ある訳ないでしょう? やってくださいますわね?」


 サラッと言われる言葉に、ベイン絶句する。

 しかし、娘の笑顔の圧に負けて……こくっと頷いた。


「…………やっと、ベアトが心の壁を取り払ってくれたことに喜ぶべきなのか……あまりにも遠慮がなくなって親使いが荒くなったことに嘆くべきなのか……。まぁ……我儘の一つも言ったことがなかったベアトのある意味初めての我儘だ。早速行ってくる」

「ありがとうございます、お父様」

「今回ばかりは、後でちゃんと()()()()()()()()()()()()()からね」


 ベインはそう言い残して、応接室を出て行く。

 ベアトリーチェとリヴィエは互いに顔を見合わせて……苦笑した。


「俺達に()()()()()()()()()()()のに、今は聞かないでいてくれるって良い人だな」

「でしょう? わたくしのことを第一に考えてくださるし……今の今まで()()()()()()()いてくれた。良いお父様なんですの」

『苦労性の気がありますがな』




 その苦労をかけているのが自分達だと分かっているため……ちゃんとベインを労わり、後で全てを話そうとと思うベアトリーチェとリヴィエだった。










ベアトリーチェとリヴィエは、花乙女と夜空の王から、ニルギスとの縁をゲットした‼︎(RPG風w)

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