花乙女と死神王子の新生活(4)
更新が遅くなってごめんなさい‼︎
遅筆なんですぅ……‼︎
加えて、昔投稿した作品(完結)の続編?番外編?が書きたくなったので……多分、もっと遅筆になります。
待っていてくださる方もいるかと思いますが、許してねっ‼︎
それでは今後とも……よろしくどうぞっ‼︎
ルフト侯爵領においての通達方法は、各重役達への風魔法での伝達と、広場にある掲示板への掲示である。
普通であれば、貴族でない限り文字の読み書きはできない者が多い。
しかし、ルフト侯爵領では領主の政策の一つとして領民に基礎的な教育を受けさせおり……識字率が高いからこそ、掲示板による伝達ができるようになった。
つまり……簡潔に言えば、何か連絡事があった際の伝達がかなり速い。
そのため、午前中は屋敷の案内。午後に街の案内に出たベアトリーチェ達が婚約を知った者達に言祝ぎをかけられたのは……当然だった。
「おっ、ベアトリーチェ様。掲示板見ましたよ。婚約おめでとうございます」
「お隣にいるのが婚約であるリヴィエ王子ですかい? はぁ〜……王子様を間近で見ることがあるなんてねぇ。人生ってのは分からないもんだな‼︎」
「婚約おめでとう‼︎ お祝いにウチの野菜、持ってきな‼︎」
「ベアトリーチェ様〜、婚約おめでとう〜。これ、お花〜」
「ありがとう、皆さん」
市場を歩く大人や子供、領民達とすれ違う度に、ベアトリーチェ達は祝いの言葉を受ける。
それだけでなく、店に並んでいた野菜やお菓子なども渡される。
ベアトリーチェはそんな優しい領民達の姿に、笑顔でお礼を返していく。
彼女の隣にいるリヴィエは、親しみがある彼らの姿に頬を緩めた。
「ベアトは、皆に愛されているんだな」
賑やかな市場。
すれ違う度にかけられる祝いの言葉に、自分のことのように喜ぶ姿。
あの冷たい場所とは全然違う温かな場所。
領民達から愛されるベアトリーチェの姿が、ほんの少しだけ眩しくて。
…………ほんの少しだけ、羨ましかった。
ベアトリーチェは彼の顔を見て、少しだけ目を見開く。
そして、呆れたような顔をしながら……答えた。
「確かにわたくしは愛されていると思いますわ」
「…………あぁ」
「でも、これからは貴方も愛されますわよ」
「っ‼︎」
ベアトリーチェは彼の腕に軽く抱きつきながら、柔らかく微笑む。
「…………今まで会った人はリヴィエを愛さない人達ばかりだったかもしれません。だけど、貴方を嫌う人もいれば、好いてくれる人もいるのは当然ではありませんか。貴方がいた狭い世界には貴方を嫌う人が多かったけれど、世界は広いのですわ。きっと貴方を好いてくれる人が、友と呼べるようになる方がいますわ」
「…………そう、かな」
「えぇ。少なくとも……わたくしは貴方を好ましく思っておりますわ」
まだ共に過ごした時間が短いため……男女間の愛だとは断言できないけれど。
ベアトリーチェは彼を好ましく思っている。
嫌になるような一面を見るほど、一緒の時間を過ごしていないだけだからかもしれない。
これから、彼を嫌いだと思うことがあるかもしれない。
だが、それでも。
きっと未来では彼のことを愛するようになる気がした。
「だから、そんな羨ましそうな顔をしなくてもいいのです」
「…………そんなに顔に出ていた、か?」
「えぇ」
リヴィエはそう言われて、頬を僅かに赤く染めた。
あの王宮で暮らしていた時は、ただ淡々と日々を過ごすだけの、死んだような日々を暮らしていたのに。
夜空の王の知識を得てからは……ベアトリーチェと出会ってからは、何もかもが違う。
冷たかったあの部屋から出て、暖かな場所にいる。
何にも感じなかったのに、感情が息を吹き返したような気がする。
他人と関わる機会がなかったのに、今はこうして誰かと言葉を交わして……触れて、その温もりを感じている。
…………表情すらあまり顔に出なかったのに、今では簡単に表に出ているほどで。
リヴィエはベアトリーチェが自分のことを分かってくれることや、感情が豊かになったことが嬉しい反面……いきなり自分の顔が分かりやすくなったことに恥ずかしさを覚えた。
「複雑そうな顔をしてらっしゃいますわね、リヴィエ」
「…………それは複雑な気分にもなるだろう。分かりやすいって点は、微妙に恥ずかしいからな」
「ふふふっ」
ベアトリーチェはクスクスと笑いながら彼の頬を撫でる。
そして、とても優しい笑みを浮かべながら告げた。
「分かりやすいということは、感情が豊かだということでしょう? わたくしとしては、沢山の表情を見せてくれるようで嬉しいですわ」
その優しすぎる言葉と笑みに、リヴィエは目を大きく見開く。
だが、その目尻が徐々に緩やかに下がり……嬉しそうな顔で、彼女の手に頬を擦り寄らせた。
「……………やっぱりベアトには勝てないな。微妙に恥ずかしいと思ったが、君がそう言ってくれるなら分かりやすいのも良いと思える」
「わたくしの言葉が貴方のためになるなら、良かったですわ」
ベアトリーチェとリヴィエは互いに笑い合う。
そして、彼女は彼の手を取って再度歩き始めた。
「まだまだ案内したい場所があるのですわ。行きましょう、リヴィエ」
「あぁ、行こう。ベアト」
その後、二人は楽しげな様子で街を案内し続けるのだった……。




