父は娘が恋愛幼児であることを知る
徐々にギャグ感も上がってきてますっ☆
今後もよろしくね〜( ´ ▽ ` )ノ
「ベアトの教育はどうなってるんだ?」
夕食を食べ終え、入浴も済まし。
あとは寝るだけとなった頃……唐突に私室を訪れたリヴィエの言葉に、ベインは首を傾げた。
「…………教育はどうなってるんだ? と聞かれても……何が聞きたいんだい?」
向かい合うようにソファに座り、目の前で険しい顔をしたリヴィエは更に眉間にシワを寄せる。
だが、いつまでも言わずにいられないと思ったのか……ポツリポツリと語り出した。
「…………夕食前、ベアトがスキンシップを図ってきた。今後、色々と忙しくなって俺とベアトの時間が減るだろうからと」
「ふむ」
ベインはそれを聞いて頷く。
婚約者であるのだから、互いの親密度を上げるため、スキンシップをするのは当然だろう。
だが、それと教育が何に繋がるかが分からなかった。
「………………だが……そのスキンシップが押し倒しだったんだ……」
「…………………」
ベインはその言葉の意味を理解できずに固まる。
黙り込むこと数秒。
やっと、自分の娘が婚約者にしたことを理解した瞬間ーーーーベインはギョッとしながら叫んだ。
「はぁっ⁉︎ 嘘だろうっ⁉︎」
「嘘な訳あるかっっっ‼︎ だから、ベアトの教育はどうなってるんだって聞いてるんだろうっっ⁉︎」
ベインは顎が外れんばかりに口を開けたまま絶句する。
貴族女性は基本的に、夫以外の異性と過度な接触はしない。
婚約者であろうと、適切な距離を置くものだ。
しかし、押し倒し……しかも女性の方からなど、破廉恥すぎる。
貞操観念が強い国であるからこそ、ベアトリーチェの行動はとんでもないことだった。
「キスは恥ずかしがるのに……触れ合うのは大丈夫らしいんだ……なんなんだ……あの基準っ……‼︎ 一体、どう教育したらあんな小悪魔みたいな行動を取るようになるんだっ⁉︎」
リヴィエは若干涙目で叫ぶ。
彼の様子から、かなりベアトリーチェに翻弄されたらしいことを察したベインは、そっと目を逸らしたくなる。
しかし……聞かされた話は、かなり問題だ。
ベインは今までの記憶を遡り……ベアトリーチェの教育のことを…………。
「………………あ……」
サァァァア……と顔色を悪くするベインに、リヴィエは目敏く気づく。
そして、未来の義父のにっこりと微笑んだ。
「義父君? 未来の義息子の緊急事態なんです。隠さず教えてくださいよ?」
「えっと……」
「義父君」
リヴィエの威圧に、ベインは更に顔色を悪くする。
そして……途切れ途切れになりながら、答えた。
「…………その……多分、ベアトのそっち系の教育は……五歳児レベルな気が……」
「………………は?」
「……この国において、女性の貞操観念……男女に関する教育は息子ならば父が、娘ならば母親がするものなんだ」
他の国はどうかは知らないが、ルーフレール王国ではそのようにして、異性との接し方を教わっていく。
リヴィエはそんなこと知らなかったので、目を見開き……ベインが言わんとすることを察した。
「つまり……ベアトの母君は五年前に亡くなっているから……」
「……その……そういう教育も五歳児に教えるレベルで止まっている可能性がある。当時のわたしも妻を亡くしたことに動揺していて……教育のこと自体、忘れてたというか……今回聞かされるまで、すっかり抜け落ちていたというか…………」
「……………………」
手を組んで眉間に当てながら……リヴィエとベインは黙り込む。
リヴィエはその教育を受けていなかったため、夜空の王を参考にベアトリーチェに接していた。
だが、ベアトリーチェの方はベアトリーチェとして中途半端に教育を受けたため……スキンシップの取り方が、五歳レベルになっているのだろう。
リヴィエは大きな溜息を零して……ジトっとした目で、ベインを睨んだ。
「…………流石に、五歳児スキンシップをされたら、こちらの理性が危険だから……早々に教育をして欲しい。あんな無防備に擦り寄られたら……擦り寄られたらっ……‼︎」
「あ……あぁ……。勿論だ。直ぐに手配しよう」
リヴィエは両手で顔を覆いながら、懇願する。
場違いな考えだとは思うが……過去に生きた者の記憶を持つがゆえに、大人びた雰囲気を放つリヴィエでも動揺することがあるんだなぁ……とベインは思ってしまった。
加えて、娘のために我慢する姿は好感が持てる。
しかし……。
「こちらの不手際が原因ではあるが……ベアトは、恋愛幼児なんだ。我慢してくれるね? リヴィエ殿下」
言外に、ベアトリーチェに甘えられても襲うなよと告げていて。
リヴィエはヒクッと頬を引きつらせながら……呟いた。
「…………頑張れ、俺の理性ぃ……」
婚姻前に娘に手を出されたら堪らないので、ベインはサラッと釘を指すのを忘れなかった。




