第3話 腐敗
いつもありがとうございます!
若菜が問う大人とは何か。
この物語の根幹ともなる質問がなぜ起こったかというか発生原因というかそんな感じの話です。
ちょっと暗いです。
「また模試の判定が落ちてるじゃない。どうしたの? 最近はずっとこんな調子よ。しっかり勉強しないと」
怒るではなく諭すような声音。
お母さんなりに気を遣ってるんだろうけどなんだかその優しさも心地が悪い。
「ごめんなさい。次はもっと頑張るから」
「もう受験生なんだから気を張らないと。受験生は夏が勝負なんだから」
「うん」
「若菜には私みたいに苦労してほしくないの。いい大学を出て、いい人を見つけてほしいの。おじいちゃんやおばあちゃんもお金のことは心配するなって言ってるし。あとは若菜の頑張り次第だからね」
「……うん、わかってる」
お母さんは特別頭がいいわけではないし、大学を卒業したわけでもない。
若い頃は結構やんちゃしてたらしいし。
高校を出てからは上京して仕事を探すのに必死になった。
正社員の仕事がなかなか見つからず、毎日ギリギリの生活だった時もあったそう。
お父さんとはどこかの安いバーで会ったんだって。
私はまだお酒が飲めないからわからないけどそれはきっとオシャレで運命的だなんて思っちゃうんだろうな。
お父さんはお母さんの話を親身になって聞いてくれるような優しい人だった。
二人はすぐに親身になってそれからはトントン拍子で同棲するまでになった。
お母さんも雇ってくれる会社がやっと見つかってそこに就職することにした。
お母さんの生活は一気に輝いただろう……
二人の将来を考えるくらいには……
結局お母さんはーー若くして私を産んだ。
お父さんはーーお母さんの妊娠がわかった次の日に行方をくらましたらしい。
だから私はお父さんを知らない。
お母さんは私を産むかどうかかなりの葛藤があったみたい。
周りの反対は当然あったし、お母さん自身も不安で仕方なかったって。
実家に帰る手もあったんだけどやっと掴んだ仕事を辞めるのも気が引けたって。
おじいちゃん達の支援はあったらしいけどそれでも一人で育てるには相当の苦労があったそうだ。
娘を自分みたいにはしたくないとお母さんは躍起になって私を育てた。
こんなになってまで私を産んでくれたお母さんに感謝している。
私達を支えてくれたおじいちゃん達にも感謝してる。
でも私が思春期だからかな。
最近はお母さんの言動が妙に苛立つようになった。
自立したいという精神ができ始めた私はマリオネットみたいな教育を拒否するようになった。
特に今年は受験生だ。
自然、お母さんとの会話は私の受験のことばかりに集中する。
それが余計に私を憂鬱にする。
「いい大学に入ったら絶対楽に暮らせるから。大人になったら苦しまなくてすむから」
母は祈るように言う。
きっとそれはあの人の本心で、私のことを思って言ってくれてる。
ーーそれはわかってる。
母が悪いわけではない。
受け入れられない私が悪い。
明かりがついているのに部屋は暗い。
テレビの音がよく聞こえない、でも時計の秒針はやたらとうるさい。
大人になったらーー
言葉はこだまして霧散する。
じゃあ教えてください。
大人になるってどういうことですか?
恋愛小説……?