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ベゴニア   作者: ニャンボ
第1章 杉崎編
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第1話 雨の約束

お久しぶりですニャンボです。

今回は恋愛ものに挑戦したいと思い書いてみましたがまあ難しいですね。

女性視点も書いてみました。

拙いですがよろしくお願いします。


 予備校が終わった時には既に23時を過ぎていた。

 

 ここ最近はまともに授業を受けていない。受ける気がしないでいた。

 今日のテストもダメだったなぁ。順位なんて下から数えた方が早かった。

 気怠(けだる)いままに階段を下りてみると、外は雨が降っていた。

 あいにくと今日は傘を持ってきていない。学校からそのまま予備校に向かったから。

 出かける前に天気予報を確認しておけばよかったんだけど、それすら億劫になっていた。


 雨はそれが唯一課せられた使命であるかのように絶えず途切れない。

 

 ああ、なんだか機械みたいだ。行動だけを設定されて命令通り動く機械。

 きっとそれはつまらなくて苦しいのだろうなぁと思ってもみる。

生き物ですらないものに同情してしまうなんて私もきっと疲れているんだろうけど……


 私がこうして予備校で勉強するのもいち女子高生として学校に行ってるのも機械となんら変わらない気がした。毎日惰性で授業を受けて、惰性で友達と喋って……

 私の毎日には変化がない。

 朝起きて学校に行ってそれから予備校で勉強して帰宅して寝て。

 そのことが私にはとても怠慢なように思えた。

 

 --------------


 

 天気は今日も雨。

 先週あたりから梅雨に入ったらしく、じっとりとした空気が肌にへばりついて不快な日が続いている。

 でも雨の日は悪いことばかりではない。


 私はつい最近、予備校に向かう途中の道でとある場所を見つけた。

 大きな公園の三角屋根の時計台。雨の日には人も通らず静かな場所だった。

 ただそこには既に居ついていらっしゃる人がいた。

 杉崎勇斗(すぎさきゆうと)さん。

 彼はこの辺の大学の学生さんで、一人でのんびりとできるこの空間が好きなんだとか。


 初めて彼を見た時、私は彼を()いだ湖面に照らし合わせた。

 穏やかな雰囲気はクラスの男子とは違う大人の魅力が感じられる、でも違う。

 彼は私に似ている。そう思った。

 

 それから私たちはそれから話をしていくうちに親しくなっていった。

 彼と話していると楽しかった。

 普段の私を忘れられる時間だから。

 問題の先延ばしだなんてわかってはいてもどうしようもないのだから。

 

 私は時計台へ向かう。

 そこへと続く石畳を駆けていく。

 

 途中、沿道に咲いていた赤い花が目を引いた。

 名前はわからない。

 以前から道端に咲いていたその花になぜか魅了された。

 私には花なんて()でる趣味もないけれど、雨に濡れるそれはとても綺麗だった。

 目を引く赤はあなたの強さのようで、どこか触れては枯れてしまいそうな危うさがあった。

 

 跳ねた水が靴下に染み込んでいくのがわかる。

 でもそんな気持ち悪さはどうだっていい。

 ただ息を切らして、犬のように私は走る。

 ずぶ濡れになった私をきっとあなたは小馬鹿にして笑って、でも最後にはタオルでもかけてくれるんだろう。

 持ってきた折りたたみ傘をカバンに忍ばせて私は時計台へと駆けていく。

 

 時計台の前で一つ大きく深呼吸をして、

「こんにちは!!」

と私は雨宿りしていたその人に言った。


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