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92話 洗礼




「ふぅ……」


 肺の中にあった空気を全て吐き出し、新鮮な空気を大きく吸い込む。


 脳に酸素が充分に行き渡ったことを確認して、今回のラウンドの航路を確認する。


「よし、問題なく俺たちのランドマークに降りられそうだな」


 ランドマークとは、チームの初期降下地点として、あらかじめ決めている街のことだ。

 試合前から降りる場所を決めておき、何度もその街での立ち回りを練習することによって、物資の調達や車両の確保、敵チームと遭遇した場合の戦闘などを円滑に進めることができる。


 俺たち|UnbreakaBullアンブレイカブル初期降下地点(ランドマーク)は南東の大きな橋、その入り口にある小さな集落。


 物資を漁れる場所は若干少ないけれど、車両の確保も容易で、南半島(シコク)から本島への移動も容易。


 しかもこの場所をランドマークにしているチームは、今回スクリムに出場しているチームにはいない為、安全に物資を漁り移動できる。


「立ち上がり、なるべく早く物資を漁って初期安地内に移動するぞ。もし俺たちのいる南半島(シコク)に安地が寄った場合は、手筈通り強ポジの確保に向かう」

「「「了解」」」


 高校生全国大会後、何度も何度も練習した立ち上がりムーブ。

 このまま予定通りに行けば安地に嫌われすぎない限り、物資や車両に左右されず俺たちの本来の実力を発揮できるだろう。


 目的地に最速で降下できるよう、タイミングを調整して飛行機から飛び降り、すぐさま索敵を開始する。


 ランドマークがかぶることはないだろうけど、近くの街に敵が降りていれば警戒が必要だし、降下後の作戦立案に大きく役立つ。

 情報をとることはバトロワ系FPSにおいて最も重要な要素と言っていいだろう。


 手筈通り、俺は北側を警戒していると、ベル子が慌てた様子で声をあげる。


「お、同じ方向にワンパーティ飛んでます! すぐ後ろです!」

「……マジか」


 予想外の出来事。

 どうやら俺たちと同じ場所にランドマークを決めていたチームがいたようだ。


 このままいけば悪くないムーブができると思ったけど、まぁそう簡単にはいかないよなぁ……。


「なら敵と被った場合に用意していたムーブに切り替えるぞ。奥の市街地に降下地点を移す。みんななるべく早くパラシュートを開いてくれ」


 各々は手早く返事を済ませ、また索敵に戻る。


 ランドマークは被ったが、降りる場所さえずらせれば、戦闘(ファイト)は避けられる。

 一番最初、物資の無い状態で同じ街に降り、そして戦闘することは、俺たちも敵チームもまったくメリットがない。

 そもそも最初に降下した場所に使える武器があるかどうかもあやふやな状況で勝負するなんて、お互い不確定要素が多すぎる。


 いわゆる武器ガチャになってしまうということだ。

 初期降下戦闘は、撃ち合いの技術や立ち回りよりも、強い武器が拾えるかどうかの運ゲー要素が強くなってしまうのだ。


 お互いのメリットを考えれば、敵チームも俺たちにわざわざランドマークを被せようとはしないだろう。


 そう、考えていたんだけど。


「シンタロー! 敵がランドマーク被せにきてる!」


 奈月の焦る声。


「は? 俺たち進路変えたんだぞ……? 敵はランドマークにフリーで入れるのになんでかぶせてくんだよ……!」

「この初期降下ムーブもスクリムで練習していた。俺たちのランドマークは割れている。その上で進路を変えても後ろをついてくるということは、よっぽど俺たちと戦いたいということなのだろう」

「まじかよ勘弁してくれよ……!」


 ジルの推測を聞いて、両手をマウスとキーボードから離して頭を抱えたくなる。

 全国高校生eスポーツ選手権『RLR』部門優勝。

 その肩書きに、おそらく敵チームは反応したのだ。

 FPSというジャンルの中でもハードコア中のハードコア、RLR。

 そのプロゲーマーとなれば、血気盛んな人たちが多いのかもしれない。


「タロイモくん! どうするんですか!?」

「……もう降下地点は変えられない。みんなで最南端の区画に降りるぞ。なるべく一人にならないよう物資を漁って、戦うしかない」

「フゥン、キングに喧嘩を売ったことを後悔させてやる」

「勝てば問題ないわ。ポイントがやってきたと思えばいいのよ」


 脳筋コンビはすでにやる気になっている。

 ここでオーダーが臆するわけにはいかない。


「アサルトライフルを拾ったらジルと奈月に回す。とにかく削られないことだけ意識してくれ。俺たちは誰か一人でも欠ければ終わりだ」


 相手は正真正銘のプロゲーマー。

 おそらく、数的不利を覆せるほどのパワーは俺たちにはない。


 体を前転させて、降下の衝撃を緩和。

 パラシュートが地面を擦る。


「出鼻を挫かれるわけにはいかない。この戦闘(ファイト)勝ちに行くぞ」

「あたりまえよ」

「クイーンに捧げる供物にしてやろう」

「わ、私は音を聞くだけにしておいてあげます……!」


 敵の強さは未知数。


 それに想定外の状況。


 それでも俺は。


「行くぞ」


 不思議と負ける気はしなかった。




 

 


長くなりすぎたので少し区切ります。

次話はシンタローにとって、かなり大きな話になるとおもいます。


あと!!!!

むちゃくちゃえっちでラブでコメな新作を書いたのでよかったらどうぞ!

https://ncode.syosetu.com/n9380gb/


新作もFPSも更新頻度どんどん上げていきますので評価! ブクマ! 感想! よろしくお願いします…!(土下座)

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