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89話 終戦



「落ち着くんだ、kittens(子猫達)


 手を大きく振り、尊大に振る舞うジル。

 あまりに手慣れた動きと無駄にある威厳のせいで、俺には彼の姿が一瞬本物の王様に見えた。


「「…………」」


 そして訪れる静寂。


 突如動き出したガチホモを前に、流石の彼女達も押し黙る。

 超巨大ハリケーンですら生温いと感じるほどの激戦を片手で制す自動小銃の王様。

 こういう時だけは奴の鋼メンタルに感謝せねばなるまい。


「君たちはこの嫁度対決本来の目的を忘れている」

「ほ、本来の目的……?」


 聞き返すベル子。

 先ほど、死人が出るレベルで大激論をかましていた彼女は、なんだかすごそうな風格を漂わせるジルの雰囲気に呑まれつつあった。


「あぁそうだ。この対決本来の目的とは即ち、シンタローと誰が生涯を添いとげるか、それを決める対決だったはずだ」

「そんなの、しってる、だからわたしがしんたろもらう」

「べ、別に私は一生とまでは行かないけど……に、次の休みの荷物持ちくらいには使ってあげてもいいかなって……っ!」

「私は勝ったらタロイモくんを一生働かせ……いや一生幸せにしますよ?」

「ベル子さん? いま働かせようとしたよね? 馬車馬のようにこき使う気まんまんだよね?」

「気のせいですよ」


 口々に物申す彼女達を片手で静め、ジルは続ける。


「……君たちの気持ちや想いは、同じ恋するヒューマン同士重々承知している。しかし、この対決だけでシンタローの一生を左右するような決断をするのは、まだ判断材料が足りないように思うのだ」

「じ、ジル……お前……っ!」


 生き遅れた姉が考案した、ラノベにありがちな嫁度対決。

 そんなこすりにこすられた企画に人生左右されている可哀想な俺の身になって、彼は一考してくれたのだ。

 ガチホモだけど、ジルは本当にいい奴だ。ガチホモだけど。


「そ、そうね……ジル様の言う通りだわ」

「姉ちゃん……生きてたのか……」


 満身創痍といった具合で、俺の姉は部屋の隅からゆっくり起き上がる。

 物理的なダメージは加えられていないはずなのに、体のあちこちは擦り切れてボロボロになっていた。

 ベル子とルーラーの口撃は、三十路手前の未婚の女性にはどうやらこうかばつぐんだったようだ。


「私が見る限り、ベル子ちゃんもルナちゃんもジル様も奈月も、すこし改善点はあるけれど皆高得点だった。この中で優劣をつけるにはまだ情報が足りないわね……ごふっ!」


 かっ血しながら姉はそう言った。


「それはみんな九十点で同点……ということでよろしいですか?」

「ええ、そうなるわね」

「同点ですか……これじゃあタロイモくんの体を四等分にするしか……」

「ベル子さん? 冗談ですよね?」

「半分冗談です」

「半分……?」


 同点という結果を聞いた途端、ルーラーと奈月の表情が険しくなる。

 優劣をつけなければおさまりがつかないFPSゲーマーの性を刺激されたのかもしれない。

 俺の予想通り二人はお互いをにらみつけながら口を開く。


「はぁ? 私がこの白いのと同列? ありえないんですけど」

「2N、ぬーぶ、こっちのせりふ」

「大体あのバカはわたしのメイド服に首ったけだったじゃない。スケベ心丸出しだったじゃない」

「2N、かんちがい、しんたろはわたしをだっこしたとき、おっきしていた」

「はぁ!? そ、そんなの私の時だっておっきしてたし!」

「……ルーラーさん? 奈月さん? 何をおっしゃっているんですか?」

「おっきしていた」

「いや綺麗に言い直せって意味じゃないからね?」

「にほんごむつかしい」

「タロイモくんおっきしてたんですか……きっも」

「お前らは俺をどうしたいんだよ……!」


 ベル子も奈月もルーラーも、言い合いをするたびに俺を攻撃しないと気が済まない病気にでもかかっているのだろうか。

 そろそろギャン泣きしそうなのでやめてほしい。


「とにかく、これ以上精密な採点ができない以上、これ以上の争いは不毛だろう」

「じ……ジル……!」


 いつも空気を散らかしまくるジルクニフが、この場の空気を読み、あまつさえ気を使って事態を収拾させようとしている。

 これは大きな成長。

 さすがは俺の親友。

 最後はしっかり俺の味方でいてくれる。

 

「だから、四人とも同率一位という結果でどうだろう」

「へ……?」


 一瞬、頭が真っ白になる。


 嫌な予感しかしない。


「四人一位で、シンタローを休日に好きにできる権を平等に配布する。これが最善のムーブだと思うんだ」


「おいジルてめぇふ「それいいですね!」


 俺が制止する前に、女性陣から次々と賛同の声が上がる。


「私はタロイモくんを馬車馬のように働かせられれば満足ですし、四人権利をはく奪されるくらいならそっちのほうがいいですよね!」

「ま……まぁ、私はどっちでもいいけど??」

「しんたろ、くびわ」


 満面の笑みを浮かべるジル。


「シンタロー、今度の日曜日は二人っきりでサウナにいこう」


 このガチホモを少しでも信じた俺が馬鹿だったようだ。


「……しゃあねぇなぁ……あんまりお金のかからないことならいいぞ……」



 こうして、長いようで短かった嫁度対決は終わりを迎え、俺はこの四人のヒロイン(うち一人はガチホモ)の為に、貴重な休日を返上し駆けずりまわることになるのであった。

 




長いこと更新を開けてすみませんでした!!!

長かった嫁度対決もこれで終わりです……(本当は四話くらいで終わらせるつもりだった)

よかったら評価ポイントやブクマしてくださるとうれしいです……!


次話からスクリム編です!シンタロー達が本物のプロゲーマーと熱いバトルを繰り広げます……!

書籍作業で少し忙しいですけど更新頑張ります!!!

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― 新着の感想 ―
[一言] サウナといえばマッサージ これは濃厚接触を期待せざるを得ない
[一言] 四等分が半分冗談? ってことは二等分はするのか
[一言] ゲーム回、好きなので待ってます!
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