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6話 ウサ耳美少女Youtuberの索敵と、ARの王様の変態反動制御

FPSの用語が多い回になっております。ルビなどを振ってわかりやすくしたつもりですけれど、もし何かわからないことがあればお気軽に感想欄にお書きください。








 バサリと音がした。

 パラシュートが地面をする音だ。

 俺たちは、半径1キロほど廃屋が立ち並ぶ、中央市街地に着地する。


「手前の家三軒(さんけん)、漁るぞ」


 着地したのもつかの間、俺たちはそれぞれの家に入って物資を漁る。

 こういった建物にある銃や物資を手に入れて、装備を整え、戦闘に備えるのはバトルロワイアル系FPSであるRLRの大きな特徴だろう。

 俺は机の上にあったSMG(サブマシンガン)UMP9を拾って装備する。得意武器を初手に拾えたのはかなりのアドバンテージだ。


「武器はどうだ? 戦れるか?」


 ボイチャを使って連携を図る。

 敵の足音を聞くために、音量は大きくしてある。だから隣同士でゲームをしていても、連携を取るためのボイチャは必須なのだ。


SG(ショットガン)あったんでどうにかなります」

DMR(マークスマンライフル)AR(アサルトライフル)、上出来ね」

SR(スナイパーライフル)SG(ショットガン)、ついでに6スコ、ARが欲しい」


 各々手短に報告を済ませる。

 まだ銃声は聞こえないけれど、この中央市街地に5パーティ、約20人ほどがいるのだ。なるべく早く物資を揃えて体制を整えなければ、いくらエイムや立ち回りが上手くたって簡単に殺される。


「了解、じゃあ奈月とジルがARとSR交換で、んでもって奈月は俺のカバー、ベル子とジルで二人組(ツーマンセル)、東回りで一軒一軒索敵してくれ」

「了解です」

In the spi(姫の頼みとあらば)rit of the princess」


 各々の手に入れた武器を報告し、交換。

 使用武器の報告は必須だ。

 物資を拾う際に、味方が使う弾薬や、銃につけるアタッチメントを補填することができるからだ。

 武器に専用のアタッチメントをつければ、銃口の跳ね上がりを抑制したり、装填数が増えたり、性能は飛躍的に上昇する。

 銃口の跳ね上がりを現実に近づけたRLRでは、銃を相手に当てるだけでも相当な練習が必要だ。よって、反動制御(リコイルコントロール)反動制御器(アタッチメント)の手段は生命線といえる。


「ねぇ」

「マジ?」

「ん」

「サンキュー」

「あれ」

「了解」

「ん」


 奈月からSMG(サブマシンガン)の拡張マガジンを受け取り、俺はSR(スナイパーライフル)の補正器を渡す。

 長年やってきたやりとりなので、ボイチャというはじめての要素があってもスムーズに交換を済ませることができた。


「ちょっと待ってください」


 ベル子が(いぶか)しげな声をあげる。


「ん? どうしたベル子、敵か?」

「いや敵じゃなくて……なんですかその熟年夫婦みたいな連携は?」

「なんですか……って言われても、いつも通りだけど。なぁ?」

「ん」


 奈月に同意を求めると、頬を朱色に染めて、眉間にしわを寄せながら、短くそう答える。そんなに俺と夫婦って言われるの嫌なんですかね……。


「いやいやおかしいですから、念話でも会得してるんですか、気持ち悪い」

「Assault rifle attachment tikaku ni attayo!」

「ジルさんはとりあえず英語風に喋るのをやめて日本語で喋ってくださいね。あとそこの夫婦も私たちに理解できる言語で会話するように、情報伝達に齟齬(そご)が発生します」

「ま……! まだ夫婦じゃないから……!」


 ベル子の思わぬツッコミ属性にギャップ萌を感じつつ、俺たちはある程度の物資を揃えることに成功していた。


「おい」

「ん」

「ねぇ」

「おう」


「いやだからそれやめろって、連携とれねーから」

「……ベル子、敬語キャラ忘れてるぞ」

「……こほん、失礼しました」


 とまぁ、そんなこんなですったもんだしていると、南の方から銃声が聞こえてきた。

 たぶん銃種はARとSGだろうか。


「南方から銃声、距離は800、銃種はM416とAKMとS686です。たぶん、奥の赤いマンションにいるかと」

「……相変わらずとんでもない耳の良さだな」

「コレが私の生命線なので」

「デタラメ言ってるんじゃないでしょうね」

「嘘だと思うなら奥の赤いマンションの三階の窓をスコープでのぞいて見てください」


 自慢げにウサギ耳ヘッドホンと大きいお胸を揺らすベル子。

 ベル子が涼しげにやってのけた、銃の発砲音の大きさ、数、そして種類を見極める能力はチートと言ってもいいほど有用なプレイヤースキルだ。

 RLRでは、武器の発砲音や響き方などを限界まで現実と近づけている為、屋内での発砲音と、屋外での発砲音は響き方に違いが出る。らしい。

 強いプレイヤーなら足音を聞いて敵の位置を把握したり、発砲音で銃種を判別したりするのは当たり前だけど、ベル子ほど距離やら建物やら数やらを正確に言い当てるのは至難の業と言ってもいい。

 実際、ベル子が人気Youtuberになったキッカケの動画は、聞き耳スキルの解説動画だった。


 聞き耳、もとい索敵スキルがいかに有用かはすぐに分かるだろう。


 奈月がスコープを覗きながら、ボソリと呟く。


「……本当にいたわ」

「抜いていいぞ」

「ん」


 SR(スナイパーライフル) kar98kの重たい銃声が2回、中央市街地に轟く。


「二人抜いた」


 画面右端のキルログに2名の犠牲者が表示された。

 RLRでは、即死部位に弾が当たればダウンする間も無く即死する。腕や足など、そういったダメージの軽い部位でHPを削りきられた場合は例外で、仲間が近くにいれば、復活させてもらうことができる。


 まぁ簡単に言えば、防御力の高いヘルメットを装備していない状態で、頭に当たれば即死ということだ。


「オーケー、銃声で位置バレしただろうからジルとベル子の方へ寄るぞ」

「了解」


 あの数秒でマンションの小窓から敵二人のヘッドを抜く奈月のエイム力と、ベル子の索敵能力を組み合わせればとんでもないことになるだろうなとは思っていたけれど、まさかここまでとはな。マジでチートを疑われるレベルで強い。


「やるじゃないウサギ女」

「2Nさんの変態スナイプを見せられた後に褒められても嫌味にしか感じないですけどね」

「は?」

「あ?」


 ……もう少し仲良くしてくれたら言う事無いんだけどなぁ……。



* * *



 その後もベル子の索敵スキルを駆使して危なげなくキルを取っていく。

 いつの間にか中央市街地からは一発も銃声は聞こえなくなっていた。


「キル数確認とるぞー」

「6」

「1です」

「5だ」

「俺のキル数も含めて全部で16、キルログ見た感じ、他4人もたぶん中央市街地で死んでる。ほとんどの敵はやったはずだけど、まだどっかに芋っている可能性もあるから気をつけろよ」


 各々返事をして、物資を漁る。

 物資が潤沢な中央市街地を制圧できたのはかなり大きなアドバンテージだ。

 時間と共に収縮する安全地帯も、今のところは中央市街地がど真ん中。順調すぎると言っていいほど、チームは機能していた。


「次の安全地帯収縮まで、中央市街地で待機な」

「ん」

「了解です」

「とりあえず俺はシンタローの(バック)をカバーしに行くぞ」

「いやもう俺の尻を攻めるような敵はいないから、むしろお前が敵だから」

「ったく、ツンデレめ」


 一軒屋の二階で、俺とジルが貞操をかけた(バック)の取り合いをしていると、ベル子が冷ややかな声をあげる。


「次の安全地帯が決まりますよ、マップを見てください」


 RLRというゲームの稀有な特性のひとつ、安全地帯収縮。

 ゲームごとにランダムに設定された安全地帯外はどんどん毒ガスに侵食されていき、時間が経てば経つほど、生存可能区域が狭まるシステムだ。


 この安全地帯、通称 安地の場所を見極めて、有利なポジションを取ることは、最終的な勝利の為にかなり重要な要素になる。


「……残念ながら、安地は外れみたいですね」


 俺たちがいる中央市街地から、かなり北のほうの山上に安地は移動した。

 安地が現在地から遠くなればなるほど、移動距離が増えれば増えるほど、敵と不利な状況で出くわす可能性が高くなる。

 次の収縮が始まれば、俺たちのいる中央市街地は毒ガスに飲まれることになる。ので、危険な山上に向けてハイリスク覚悟で進まなければならないのだ。


「歩いて行って、山上から撃ち下ろされたら面倒だな。車で突っ込むか」

()()()()()

「ジル、落ち着け」

「それが良さそうね、車まわすわよ」


 奈月が中央の道路に車をまわして、それに乗り込む。運転はベル子、車からの狙撃が苦手な俺は助手席、チームの最高火力であるジルと奈月が後部座席だ。


「目的地は?」

「山上の白い小屋で」

「了解です」


 見晴らしの良い野山を、80キロで駆け抜ける。

 やはりというべきか、カンカンと音をたてて、車の側面に敵からの狙撃が当たる。


「北東、200m先の木の裏。たぶん、数は2です」

「ジル、頼んだ」

「The Princess's Request」


 なんかよくわからん横文字をウザいくらいのイケボで呟いて、ジルはAR(アサルトライフル)を車外へ構えると、フルオートでぶっ放す。

 3秒もすると、キルログに先ほど攻撃してきた2名が記録された。


「フッ……俺のSintaro(ラプンツェル)に手をだすとは……命知らずな奴らだ」


 ガッタガタ揺れる車内からAKMをフルオートでぶっ放して正確にキルをとれるのは国内でジルくらいだろう。本当に気持ち悪いくらいの反動制御(リコイルコントロール)である。マジで変態。


「流石はARの王様」

「報酬は体で頼む」

「お前は歪みねぇな」

「一途な男と呼んでくれ」


 なんとか毒ガスに飲まれることなく、俺たちは山上の小屋にたどり着いた。

 安地のサークルも小さくなり、ゲームも終盤。そして残り人数は全員で8人。俺たちのチームを引けば、実質敵は4人になる。


「おそらく、道路を挟んで向かい側のマンションに、1パーティいると思われます」

「……了解」


 マンションを目視で確認すると、チラチラとこちらを窺う二つの頭が見えた。

 こちら南側に敵はいないし、マンションがある北側から銃声も聞こえない。

 どうやら最後に残ったチームも、誰一人欠けることなく北側のマンションに立てこもっているらしい。


「どうします? 安地も向こう側のマンションの方に寄ってますし、かなり不利ですけど」


 安地が向こう側に設定された以上。俺たちは遮蔽物(しゃへいぶつ)のない道路を渡って向かい側のマンションに行かなければならない。


「ここは最善手で行くべきね」

「……何か考えがあるみたいですね」


 珍しく奈月が作戦を提案するようだ。


「シンタロー、マンションに(とつ)って皆殺しにしてきなさい」

「お前無茶苦茶言うなよ……」

「あら、現世界最強プレイヤーに見せ場を設けてあげたのよ? 感謝しなさい」


 そういうと、奈月はSRを構えて引き金を引く。

 敵がマンションの側に停めていた車が爆発した。容赦ねぇ……。


「ほら、敵は惹きつけておくから。早くして」

「……了解。(おつ)っても文句言うなよ」

「アンタのキルレが下がるのは願ったり叶ったりね」

「決めた、ぜってー死んでやらねぇからな」


 俺は陽動の為に、進行方向とは別方向に手榴弾を2個ほど投げる。

 少しでも敵の注意が散漫になれば僥倖(ぎょうこう)だ。


「ベル子、ジル、マンションの窓から敵が顔を見せたら速攻フルオートで牽制ね。当たらなくてもいいから敵に索敵させないで。シンタローをなんとしてでも敵マンションに送り込むのよ」

「……タロイモくんとはいえ、流石に4人相手は無理があるんじゃ……せめて私が一緒に」

「アンタ、有名実況者の癖にシンタローのこと何も知らないのね」

「……知ってますよ。現世界最強の芋プレイヤーですよね」

「芋……ね、嫉妬に駆られた雑魚どもがそう呼んでるみたいだけど、私はそうは思わない。芋ってるだけで世界一位になれるほど、RLR(このゲーム)は甘くないわ」


 奈月は何故か自慢げに、高慢に呟く。

 それと同時に俺はマンションに侵入することに成功した。

 あまりハードルを上げるなよ……これで普通に死んだらすっごい気不味い空気になるだろ……。


「ヘッドセットを外しなさい」

「えっ……でもまだゲームは……」

「終わってるわ。シンタローが屋内戦を始めた時点でね。いい機会だわ、見せてもらいなさいよ。現世界最強のプレイングを」


 奈月とベル子はヘッドセットを外して、俺の背後からゲーム画面を覗いている。

 ちなみにジルは、俺がマンションの扉を開けた時点でヘッドセットを外して、俺の肩ごしに画面を見ている。ちょっと顔近くない?


「はぁ……死んでも文句言うなよ」


 俺はヘッドセットの音量を上げて、画面に向き直る。


 ここからは、ブーツのゴムが磨り減る音でさえ、マガジンが床に落ちる音でさえ、聞き逃せない。




 文字通り最終局面が始まる。








おかげさまで日間2位、総合6位にランクインすることができました。これもひとえに読者様のおかげです。ここまできたら欲を出して、総合5位を目指したい…!

良ければ小説の下の方にある評価ボタン、ブクマをポチッとしてくれると、とっても嬉しいです。


どうぞよろしくお願いします。

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