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31話 試合開始








 簡易的な控え室、用意されたテーブルに座る俺たち四人。


 もうすぐaグループの試合がはじまる。


 今回、公式大会に参加しているチーム数は100チーム。そこから25チームずつ、a、b、c、dグループに分けられている。


 勝敗を決めるのはポイント。

 ポイントの配当は以下の通りだ。


1位 500 

2位 410

3位 345

4位 295

5位 250

6位 210

7位 175

8位 145

9位 120

10位 100

11位 80

12位 65

13位 50

14位 40

15位 30

16位 20

17位 15

18位 10

19位 5

20位 0


キル 20(1キルにつき)



 グループで4ラウンド戦い、ポイントの多い上位6チームが本戦に臨むことができる。余った本戦ひと枠は上位6チームから漏れていて、かつ、キルポイントがもっとも多いチームが復活して本戦に臨める。


 一日目はそのグループ予選、まずはここを突破しなければ、俺たちはcグループに属しているVoVと戦うことすらできないのだ。


「じゃ、ポジション発表するぞ」


 ジルの会社から提供してもらったタブレットをたぷたぷとつつきながら、俺はaグループ予選を戦い抜くポジションを発表する。


「アタッカー、Zirknik(ジル)

「御意」


 最前線(アタッカー)

 撃ち合いで、キルをとることがメインの仕事になる。

 各チームでエイムや一対一のスキルが高い選手が任される。時には体を張って、他チームのヘイトを買ったり、デス覚悟で不利な戦況に飛び込んだりと、非常にタフなポジションだ。

 野球で言うところのピッチャーや4番。RLRの花形的ポジションなので、有名なプロゲーマーやストリーマーはだいたいこのポジションを任されていることが多い。

 ちなみに、赤髪のgrime_Eもアタッカーだ。チームによっては4人中3人がアタッカーだったりするところもある。

 現に、GGG Proなんかは4人全員アタッカーだ。



「タレット、2N(奈月)

「……了解」


 砲台(タレット)

 主に長距離攻撃がメインの仕事になる。

 アタッカーが撃ち合えないような距離や、建物にこもってのにらみ合いが続く時に攻撃し、戦況を変えるのがこのポジションの役割。アタッカーが突る時のサポートなども担う。

 チームに優秀なタレットがいるだけで他チームからすれば相当な脅威だ。建物から不用意に頭を出せば抜かれるし、ダウンから蘇生させるタイミングは、アタッカーが撃ち合える距離まで接近する重要な時間稼ぎになる。キルスティール(他チームが気絶させた敵を、横取りする行為)もできれば、大会を勝ち上がる為に重要なキルポイントを稼ぐこともできる。


「スカウト、BellK(ベル子)

「任せてください!」


 斥候(スカウト)

 チームから少し離れた場所で、主に情報収集がメインの仕事になる。

 危険を冒してチームに有意義な情報を与え、尚且つ生存することが求められる。

 離れた場所から生きて戻ってくる能力などが求められるため、索敵能力、車やバイクの操作技術、状況判断など、立ち回りが上手いプレイヤーがこのポジションにつくことが多い。

 敵の斥候と、匍匐の状態ではち合わせたり、アタッカーと一対一になったりすることも珍しくないので、簡単にはやられないずる賢さと、すぐに引ける抜け目のなさが必要だ。


「んで、俺は、バックアップ兼オーダー。よろしく」


 後衛(バックアップ)

 アタッカーの後に続き、攻撃のサポートをすることがメインの仕事。

 攻撃への参加、全方位からくる不意な奇襲への対応、アタッカーが倒された時に、バックアップが素早く敵を倒すことによって、チーム人数を保つことができる。

 俺たちチームに限って言えば、近距離が苦手な奈月のフォロー、立ち回りの苦手なジルのフォロー、撃ち合いの苦手なベル子のフォロー。それにオーダー。仕事量はかなり多くなるだろう。

 けれど、俺がこのポジションを完璧にこなせば、このチームの火力はとんでもなくあがるのだ。


 そして、司令官(オーダー)

 チーム全責任を負う司令官。

 意思決定の最高責任者であり、チームの戦績がオーダーの能力によって10にも0にもなると言っていいほど重要なポジションだ。

 状況に応じて作戦立案できる頭の良さや、ハートの強さ、限られた時間で素早い決断を下す事を求められる。

 戦いの中様々な仕事をこなさなければならず、作戦が失敗した場合は批判をモロにくらうポジションである為、チームで最も負担の大きい役割とされる。

 VoVのgrimeなんかは、オーダーがめちゃくちゃ上手い。皇帝の勅命(エンペラーオーダー)とか厨二な二つ名までつけられちゃうくらい的確で完璧で激強な指示をだす。

 VoVが強豪チームである理由のひとつとして、オーダーが上手い選手が多いというのが、真っ先にあげられる。それほどまでにオーダーというポジションは重要なのだ。


 メンバーにポジションを発表し終えると、俺はタブレットを続けてたぷたぷし、何度と繰り返した文言をメンバーに伝える。


「サブオーダーはベル子、二人組で動く場合は、俺と奈月、ベル子とジルでなるべく動くようにする。戦況によってはジルと俺がアタッカー、奈月がバックアップ、ベル子がスカウト兼オーダーになることもあり得る。どんな状況でも冷静に、慌てず行動してくれ」

「任せろ」

「了解」

「わかりました」


 時計に目をやると、時刻は午前10時45分をさしていた。

 試合開始まであと30分。

 俺たちはチームパーカーを羽織り、準備する。


「さすがに緊張するな」


 少し笑いながら、俺が呟くと、奈月がそれに反応する。


「あら、アンタみたいな怪物でも、緊張するのね」

「……お前は俺の事を何だと思ってんだ?」


 こんな時でもグサグサ刺してくるジャックナイフウーマンは不敵に笑って、俺の問いに対して、返答する。


「世界最強の男で、私が一番倒したい相手」


 奈月のセリフに、ベル子やジルも、パーカーを羽織りながら笑みを浮かべた。


sintaro(クイーン)には、俺達がついてる。俺達にも、sintaro(クイーン)がついてる。どこに緊張する要素があるんだ?」

「ジルのいう通りです。みんなで戦えば何も怖くありません。何せこのチームは野生の熊だって退けたんですから」


 頼もしい仲間達の顔に、俺は何故か泣きそうになった。すんでのところでとどまる。


「なぁ、アレやろうぜ、円陣」


 熊を倒す時にやった、みんなで肩を組んで声を掛けるアレを提案する。


「ったく……しょうがないわね」


 奈月は少し恥ずかしそうに、ジルは笑みを浮かべて、ベル子はやれやれと言った雰囲気で、肩を組み始める。


 この試合に到達するまで、本当に色々あった。


 仲の悪すぎる幼馴染が、俺が5年以上ハマっているFPSゲームのフレンドだったり、超人気YouTuberと一緒に、非公式だけど世界記録を更新したり、ガチホモの別荘で、熊に追いかけ回されたり、本当に色々あった。


 頼もしい、最高の仲間達に、視線を送る。


「やれることは全部やった。あとはこのゲームを思いっきり楽しむだけだ」


 一同がコクリと頷いたのを確認して、息を吸う。


「さぁ、しまっていこう」



 4人の掛け声が、控え室にこだまする。

 気持ちが引き締まるのを確認して、俺たちは控え室を後にした。







* * *







 ライトが眩しい。


 天井から吊るされている多面型モニターには、今回参加するチームのロゴが順番に表示されていた。


 通路に待機していた選手達は、音楽が鳴り始めたと同時に、入場を開始する。


 それと同時に、観客席から大きな歓声があがった。


「2Nさんマジでクールビューティッ! 俺のヘッド抜いてぇぇええ!」

「ベル子様かわいいよぉおおお!」

「きゃーーっ! ジル様かっこいいーっっ!!」


 俺たちのチーム(俺を除く)に歓声が集中しているのには理由があった。

 aグループには、運良く海外勢は参加していなかったのだ。


 GGGはbグループ。

 VoVはcグループ。

 heavenはdグループ。


 強豪チームはうまいことバラけていた。ここにgrimeやらrulerがいたなら歓声を根こそぎ持っていかれてただろう。まぁゲームの勝敗には関係ないなら別にいいんだけどね。


 俺に対して全くの無反応を貫く観客達に、若干落ち込みながらも、先頭をそそくさと歩く。

 視界の端に、真っ白な女の子が大きな旗を振って俺の名前を叫んでいるような気がしたけれど、気の所為だろう。気の所為だと思いたい。


 自分たちのデスクについて、ヘッドセットやマウス、キーボードなどの周辺機器の最終チェックを行い、ゲームを起動する。


 気密性の高いヘッドセットをつければ、大音量で流れる実況や音楽もほとんど聞こえなくなった。


 aグループ、第1試合、開始の合図が、天井から吊るされているディスプレイに表示される。



「……よし、行くぞ」



 戦いが、はじまる。






 


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