15話 巨大スライム
モブキャラがモブじゃなくなってしまった! そして女神がモブキャラっぽい……
「ふーーー危なかったな。漏らすかと思った」
やっとトイレから戻って来たノブスケは部屋の緊迫した雰囲気を感じ取ったみたいにメガネを正した。
「なんだ? 会議はまとまったんじゃないのか?」
「会議はまとまったよ? だけどあれを見て……」
レティシアが窓の外を指さす。巨大なスライム? がノブスケにも見えたみたい。
「なんだあれは? どっから現れやがった!?」
「分からない急に……ふと窓の外を見たらあんなのが……それでまた緊急会議よ」
さっきまで会議をしていた長い机に大きな地図を広げて鎧姿の人達があーでもないこーでもないと言ってる。
「報告します! 巨大な魔物はスライムと断定! 魔王幹部の物と思われる城近辺に陣取っているようです!」
「なんだと!? クソ! これでは作戦が実行に移せない! 作戦の練り直しだ!」
オリヴュート卿が頭をくちゃくちゃしてる。
「ただの会議にしては大袈裟な人数だと思っていたが、魔王幹部を討伐するつもりだったのか」
まあ私も大半会議聞いてなかったから知らないけど、そんな事みたいね。その為に『万能薬』が大量必要だとか何とか言ってた気がするし。
「ふん、安心してくれ。オリヴュート卿。我らSSSランクの騎士が二人も居る。そしてそこに居るメガネの男も大層腕が立つと見た! 少々の作戦変更など取るに足らない」
オリヴュート卿の護衛の一人の大男がガハハハと笑ってノブスケの肩を叩く。
へぇーチート持ち以外もSSSランクになれたのね。
「『万能薬』も大量に手配出来た事ですしねぇ。ギルドの救援物資もありますし、敗北などありえませんねぇ」
オリヴュート卿の護衛のもう一人、少し小柄で全身を鎧で包んでいる人、確かプレートアーマーって言うんだっけ? そのプレートアーマーの頭の鎧を外しながら言った。出てきた顔は細目でロン毛の男だった。
「しかしだな……」
うろたえているオリヴュート卿にクサツヘル公爵が言う。
「『万能薬』の製造はもう始めているぞ! それにあれを放っておくわけにはいかん!」
「当初の計画はどんなものなんだ?」
ノブスケはメガネを拭きながら質問する。
「城に挑んだ冒険者の情報では、第一階層に大量のスライムが居るとの事だった。様々状態異常を絡めて攻撃してくると。ならば大量の『万能薬』を各々の兵士に持たせてゴリ押すというものだ。所詮スライム。状態異常さえ封じれば怖くはない」
思ったより雑な作戦……それだけ自分の兵士や騎士達を信頼しているって事かしら?
「なるほど、確かにあれじゃ想定している魔物が違うな」
めっちゃ窓の外でうねうねしている巨大スライム。ちょっとした山くらい大きくなってきてる。
「一番厄介なのは、あの巨大なスライムを討伐しようとした時、魔王幹部がどう動くか分からない事だ。魔王幹部の情報はないのか?」
「ありませんねぇ。スライム愛好家としか……」
スライム愛好家ぁ? 変なの!
「報告します!! 巨大なスライムはこの街『クサツヘルム』へ向けて進行方向を開始したとの事です!」
「な!? なんだと!? いかん! セバス! 住民を避難させるのだ!」
「しかし、私がここを離れるのは……」
「安心しろ。俺達はクサツヘル公爵閣下の護衛だ。会議が終わるまでのな」
ノブスケがメガネクイとあげて言うのにつらてれレティシアも頷く。
「か、感謝します! 公爵閣下を頼みます!」
セバスがお辞儀をしてバタバタ部屋から飛び出していった。
「こうして作戦練っていても埒が明かないなあ! 分かりやすく、もう俺達であのデカブツを叩き斬りに行こうぜ!」
拳自分の手に打ち付けて言う大男。
「そうですねぇ。あの大きさの魔物なら、もはや雑魚な兵士や冒険者などかえって足手まといになりますしねぇ我々SSSランクで止めに行きましょう!」
「そうだな」
そうだな。じゃないでしょ! このFランクのレベル1のあんぽんたんのくせに!
「わ、わたた私も行くわ! このノブスケのパーティだもの!」
レティシアが杖を握りしめて言う。
「ガハハハそうか! じゃあ来い! ただし死ぬなよ!」
「そういえば名乗っていないかったですねぇ。私はオリヴュート卿第一騎士レボルト。こっちのでっかいのが」
「オリヴュート卿第二騎士のジムだ!」
ノブスケ達も簡単に挨拶を済ませる。そっか騎士だったんだねー。
「という訳です。オリヴュート卿。討伐の許可を」
そう言って跪いて許可を求めているレボルトとジム。
「分かった。頼む」
「「は」」
凄く騎士っぽい……。
部屋を出ようとするノブスケ達とオリヴュート卿の騎士二人をクサツヘル公爵閣下が呼び止める。
「これを持っていけ。『万能薬』だまだこれくらいしか準備出来ないが。それとレティシアこれを母君に」
「か、感謝します! ありがとうございます!」
「うむ。皆の者死ぬなよ! 健闘を祈るである!」