表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/20

14話 会議!

 しばらく馬車で街道を進む事一時間。ノブスケ達はようやく『クサツヘルム』の大きな門の前に着いた。


「通行証を呈示してください」

 門の前に居る門兵にそんな事を言われているノブスケはメガネをクイとして隣につけたレティシアを見る。

「つ、通行証? わた、私は持ってないよ。の、ノブスケ早く出しなよ」

 レティシアは気づいたみたい、ノブスケも通行証など持ってない事に。

 この子達、ギルドで通行証発行しないでそのまま来ちゃったんだ。


「どうしたのだ。ああ通行証か。ほれこの顔が通行証だ。早く門を開けよ」

 豪華な馬車の窓を開けて顔を見せるクサツヘルム公。その顔を見て慌てて敬礼して門を開ける門兵さん。

 おお! 顔パス! 流石クサツヘルム公爵閣下!


「よ、ようこそ『クサツヘルム』へ」

 敬礼してノブスケ達の馬車を見送ってそう言う門兵さん。

「フン! わしの街だわい」

 そう小声でぼやいたのをたぶん私だけが聞いた。


 ノブスケ達の通行証持ってない件はなんとかうやむやになり、運よく街に入れたみたい。

 

 街を見回すと、浴衣っぽい服を着た人が沢山歩いている。そっかこの街は温泉街だ! いいなー私も温泉入りたい!

 『クサツヘルム』はそこら中から湯気が漂っていて、たぶん硫黄とかの温泉の匂いがしてるんだろうな。水晶越しからじゃ分からないけど。

 

「護衛はここまでだったな。魔物にも出会わずに護衛になったのか知らないが……」

「ふむ。ご苦労であったが、すまぬがもう少し頼めぬか? 会議が終わるまで護衛を継続して欲しい」

「こっちにも、急ぎの事情があるんだ。こいつの病気の母へ薬を探して届けるっていう用がな」

 親指でレティシアを指して言うノブスケ。


「ほう、お主の母が……ならばこの街に伝わる『万能薬』がお主達が探しているそれだろう。護衛を継続してくれるなら『万能薬』を用意させよう」

「ほ、本当ですか! ノブスケ! 継続しよう!」


「ああ、分かった」


「おお! いい決断であるぞ! 実はその『万能薬』の取引で隣の街と揉めていてな。もしかしたらわしの命も場合によっては狙ってくるかもしれぬ」

「だが、俺達を雇わなくてもここは公爵閣下の街なんだろ? 兵隊はいくらでもいるんじゃないか?」

 


「それについてはこの……私が……」

 ノブスケ達が借りた馬車の荷台から起き上がり、苦しそうに言うセバス。

「先日『ミーナス』付近の古城で起こった大爆発の影響で龍脈の流れが変わったらしく『イザベスク』街の畑のトマソンヌが急成長して大変な超豊作との事で、兵を貸し出し中なのです」


 あ、それコイツだわ。古城で超大爆発起こしたの。まさか龍脈まで変えてしまっていたとはね。

 

「そそ、そう言う事か。なるほどな、納得だ」

 余計な面倒事にならない内に早々に納得してみせるノブスケをレティシアがじーと見てる。


「『イザベスク』への往復で兵を減らしてしまったのもあるがの……」

 しょんぼりと言うクサツヘルム公。街を一歩外に出ればそこは魔物の巣窟なんだな。


「さ! そろそろ会議が始まる。『シロガネの宿屋』に向かうぞい! さあー行け!」

 そう言って馬車の窓をピシャっと閉める殿下、ノブスケは手綱を振り馬車を進めた。



『シロガネの宿屋』はノブスケが泊まった事のある『ミーナス』の宿屋の数十倍はある大きな宿屋だった。流石お偉いさんが会議する場所なだけあるな。ノブスケが操る豪華な馬車の後ろからレティシアが借り物の馬車を操り、少し遅れながらついていく。宿屋の入り口の横にある馬車を待機させておく所へノブスケ達は馬車を止めた。


「もう会議の相手来てるんじゃない? あそこ見て公爵の馬車並に豪華な馬車が止まっているよ?」

 レティシアが指さす所に確かに豪華な馬車が止まっている。という事は遅刻しちゃったって事?


「クサツヘルム公爵閣下、お待ちしていました。オリヴュート卿はもうお見えですよ」

 『シロガネの宿屋』の人が宿屋の入り口でクサツヘルム公爵を迎えて入れている。

「ふむ。そうか。時間はまだあるはずだが、相変わらず早いな」


 宿屋のホールに鎧姿の兵士がいっぱいいる。ノブスケ達は一瞬たじろいだけど、流石貴族堂々と歩いている。

「ではクサツヘルム公爵閣下こちらに、そちらの方達は……」

「側近のセバスと護衛達だ。会議に同席してもらう」


 宿屋の人に案内されて長い廊下を進み、広い部屋に着いた。奥にはオリヴュート卿と呼ばれていた人だろうか豪華な鎧姿の男が居た。その周りに強そうな大男と小柄な鎧姿の人が二人いる。


「クサツヘルム公、お久しぶりです」

「オリヴュート卿。久しぶりであったな。ここまで来るは大変だったろう?」

「いえいえ、我が精鋭部隊が護衛に当たりつつ、龍脈を辿った故、比較的安全に来れましたよ」


 宿屋のホールにいっぱい居た人達の事か。確かに強そうだったものね。


「では早速ですが、本題に……クサツヘルム公『万能薬』のレシピを是非とも我々に売って頂きたい」

「それは出来かねる。我が街の特産品だ」

「ふむ。ならば……」




「ねぇ、ねぇ。セバス私達って場違いじゃないかしら? 外で待ってていい?」

 レティシアがぐずり出した。

「困ります。護衛なのですから」

「俺もさっきからトイレに行きたいのだが?」

 コイツらまともに仕事しないな。セバスを困らせないであげて。


 机をバンと叩いた音がした。クサツヘルム公だ。

「なにぃ!!? それは無茶だ!」

「『万能薬』があれば、可能です」


 すっごい会議難航してるなー。一方ノブスケサイドは

「こんなに長話するなら先に言っといてくれよ。あーーやばい……漏れるぞ?」

 もじもじとステップを踏み出してるノブスケ。

「が、我慢してください!」

「そ、そうよ! こんな高貴な場所と状況で漏らさないで!」

「ぐ、分かっているが……」


 オリヴュート卿の護衛の人達もざわざわしている。

「なーおい、何だんだアイツ。さっきから俺達を睨んで謎のステップを踏んでやがる。スゲー圧だ」

「フッ。あの者。出来ますねぇ」


 斜め上に解釈されてる。おしっこ行きたいだけよ? あのメガネは。



「分かった貴公には負けたわい。『万能薬』1万個で手を打とう」

「感謝するクサツヘルム公! 必ずや魔王幹部の討伐を成功させて見せる!!」

 固く握手をしているクサツヘルム公とオリヴュート卿。話はまとまったのかな?



「おい……女神……聞こえるか?……」

 ん? ノブスケが小声で私を呼んでる?

 コホンと咳払いして、久しぶりに女神ボイスを出す。

「なんですか? 女神である私に呼びかけるなんてよほどの事ですか? 本来ならこうした呼びかけには応じないのですが……」

「ああ。緊急事態だ。トイレの場所までナビゲーションしてくれ!」

 コイツ!! この私をトイレの女神だとでも思ってるの!!? タライを……ってここではやめとこう。


「お断りします。では頑張って魔王討伐の旅を続けてください」

「おい待て! クソ! もう無理だ」

 ノブスケは扉を勢いよく開けて走っていった。


「えええええぇ!? ノブスケぇぇぇ!?」

 レティシアが不安気な声をあげるてる。

「ん? かの者はどうしたのだ?」

「そ、外が気になると見回りに行きました」

 セバスが慌てて弁明してくれた。


「なんてヤツだ。この俺達が気づかない魔物の気配を一人、感じて飛び出して行きやがった! 俺達も手を貸すか?」

「ふふ、今から追ってももう遅いだろうな。彼が倒しているよ」

 違うけど?、トイレを探しにダッシュしただけだけど。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ