10話 新しい街『クサツヘルム』に行く
お母さん? お母さんに経験値をあげるわけね。何か凄いパワフルなお母さんしか思いつかないんですけど。
「お母さんに経験値をあげるって事はレベルを上げるって事だろ? それで病気が治るのか?」
ノブスケは歩きながらレティシアに尋ねる。
「分からないけど、神父様にも治せないものだから……もうそうするしかなくて……だから私は冒険者になったの」
まあー。ステータスが上がれば病気の抵抗力も増さないとも限らないけど……もっと効率よく経験値を稼げる方法はあると思うけどね。自分のレベル上げてから強敵を倒してーとか。
だけど少しでも経験値を渡したいっていう気持ちも分からなくもない。
「後は西へずっと行った所にある街『クサツヘルム』に行けば病気にも効く薬があるって聞くけど、私一人じゃとてもたどり着けない」
「そうか、色々大変だと思うけど、頑張れよ! じゃ」
ノブスケのローブ掴んで引き留めるレティシア。
「おい、離せもう俺に用はないだろ?」
「まだ、パーティ組む話はついてないし! 私『クサツヘルム』に行きたい! 一緒に来て!」
「断る! 俺はこれから街を一周して紙鳥さんから距離を取り、ギルドで次狙う魔王幹部を調べるんだ」
「『クサツヘルム』の近くの城にも魔王幹部はいるらしいよ? もうそいつでいいじゃん!」
ノブスケに抱き着き引き留めようとするレティシアだけど、ノブスケはそのまま歩き続けてる。紙鳥さん来ちゃうからね……
「ぐううううう。わかっっった!! 『クサツヘルム』? に行けばいいんだろ? どうせこの辺りにはもう魔王幹部はいないんだ!」
「やった! 魔王幹部を単独で討ち取ったノブスケが居れば百人力だね!」
いやぁぁ? 一人力だと思うよ?
「じゃあいつ行く? 色々準備しなきゃだしね」
「準備? もう行くぞ! 思い立ったが吉日だ」
「ええええ!? ちょっ待ってせめてお母さんに経験値あげてからでいいでしょ?」
ノブスケとレティシアはレティシアのお母さんに会うべくレティシアの家に行く事になったらしい。
「お母さん! 経験値集めて来たよ!」
ベットに寝ているお母さんはやたらと体格がいい事を除けば、レティシアに良く似ていた。
このお母さんレベルいくつなのかしら?
「『女神アナライズ』」
名 ミティシア 状態異常 病気
職業 お母さん
レベル29
HP 4567
力 12043
防御 609
素早さ 109
魔力 2346
運 367
スキル 華麗なる包丁さばき
好きなもの レティシア
趣味 裁縫
ちょ!? 力!! 高っか! バグってるの!?
「いつもすまないねぇ。ゴホゴホ あら? そちらの方は?」
「勇者ノブスケよ。魔王の幹部を倒したすごい人なの! 私この人とパーティ組む事になったから!」
「ノブスケだ。大丈夫か? 具合悪そうだな」
「ええ、ゴホッゴホでも大丈夫よ。レティシアが私のレベルを上げる事を思い付いてからは大分ましになってきてるの」
へぇー少しは効果があるのねー。
「ほら、お母さん。ノブスケがくれた経験値もあるから今回は凄く良くなると思うよ」
お母さんのプレートへ経験値を渡してレティシアはベットの近くにある小さいクリスタルを手に取ってお母さんのレベルをあげさせている。
「ただいまっと。うん? レティシア帰っていたのか? おおぉ!? そ、そいつはなんだ? まだお義父さんとは呼ばせんぞ!!!」
レティシアのお父さんが帰宅したみたい。なんか変なお魚さん持ってる。
「ちっがう! ただの冒険者仲間よ! それより聞いて。私達これからこの街を離れて『クサツヘルム』に行くから。お母さんの薬を手に入れに!」
色んな意味で顔が青ざめてお魚さんを落っことすお父さん。うお! お魚さんピチピチしとる!?
「だ、だめだ! 許さんぞ! 危険すぎる!」
「もう決めたから!」
「レティシア……どうせ冒険者になると言った時と同じで聞かないんでしょ?」
「ごめん……お母さんお父さん。でもノブスケも一緒だから大丈夫よ! きっと! ね?」
「うむ。善処する」
「分かったわ、ゴホゴホッ! 気を付けて行ってらっしゃい……」
「うん。ありがとう。必ずお薬手に入れて戻って来るからね!」
「こ、この栄養満点のサカナッソはどうする? 食べていかないのか?」
「うん。急ぐから帰って来たらまた取ってきて?」
そう言って家を飛び出し西の門から街を出る為、街を歩く。
「さーて! いざ『クサツヘルム』へ!」
「うおおおお! どいてくれぇえええ!」
台車で運ばれているプラチナの鎧を着た冒険者とすれ違った。
「ぐああああ、痛てええ痛てええよ! 俺は……死ぬのか? ちくしょう目が霞んで来やがった……」
「頑張れ! 後少しで教会に着くからな!」
「き、教会!? 降ろしてくれ! 俺に治療代なんて払えない!」
「えーーっと。西の草原から行く事になる訳だけど……大丈夫かな……」
「徒歩で行くならたぶん死ぬな。これ」
魔王幹部を倒した影響か魔物の勢力図が随分変わったらしい。強い魔物がここら辺にも出て来てるらしい。
ここは女神の助言が必要みたいね。んふん! と咳払いして……
「あら! ノブスケさん! クエストにでも行くのですか?」
鎧姿のアリスがノブスケに声をかける。なんか最近邪魔が入るな。
「アリスか。そういえば門兵してるって言ってたな」
「初めまして私はレティシアよ! ちょうどいい門兵さんなら知ってるでしょ? 私達『クサツヘルム』に行きたいの馬車はどこで貸し出してるのかしら?」
「初めまして私はアリスです。って。えええええ!? 『クサツヘルム』行くのですか! 危険ですよ?」
「承知の上だ」
「そ、そうですよね。ノブスケさんなら大丈夫ですよね。馬車ならここの道を真っすぐ行った所に馬車屋がありますよ。そうだ! 馬車代は私が払いますよ! しばらく会えなくなりそうですから少しでもお金返さないと」
「馬車代はいくらだ?」
「1万ルーナからですね。でも『クサツヘルム』に行くなら絶対一番グレードの高い馬車がいいですよ! なので十万ルーナです!」
アリスから十万ルーナを受け取ったノブスケ。
ノブスケは懐からメモ帳とペンを取り出して何やら書いている。ズーム、ズーム。ああ返済金額を書いているのか。まめだな。
「フッ。ありがとう。後七十万ルーナだな」
「ふふふ。しっかり全額返すんですから、死なないでくださいね?」
私の出番ないなーー。馬車あそこーーって言いたかったのに。
ノブスケ達は馬車を借りて西へ向かった。
あ、そうだ! 女神ボイスで門出の歌でも歌ってやろう。
「あーー門出の勇者ーーそれいけーー」
「うるせえええ!!」